生きると決めた日、それを忘れた日々、思い出した今日。総集編

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著者: 佳貴 渡邊

証明してみせる。

そして必ず俺は蘇ってみせる。

親父の分まで生きて世界を驚かせてやる。

音楽の力を、人の心の力を知らしめて、1人で苦しんでいる人を失くしてやる。


そう強く思った。



それが生きると決めた日になっていた。


ほどなくして長く続けていた仕事を辞め、二十万を切るわずかな資金で旅に出た。


世界は広く、どうしようもないものと、愛おしいものと、混沌して入り混じっていた。



⑥忘れた日々、思い出した今日。


本州を回って帰ってからも、何度も現実にまた打ちのめされた。

それでも音楽をやめなかった。

勉強もやめなかった。


あらゆる仕事に手を出した。

もっと大きくなりたかった。

無力ばかりが目についた。

日々に追われて次第に忘れ、薄れていく自分に怯えた。

焦るせいで、人に騙されることもあったし、それがきっかけで大きな負債も抱えた。


でも諦めはしなかった。

何度も忘れたし、わからなくなったけど、本当にやりたい事がはっきりしていたからだと思う。


その後ついてもいろいろな話がある。


仕事の話やアメリカに行った話、先生のアシスタントをした話。短い恋の話や、友だちとの話。自分が人に教えごとをし始めた時の話


何もなかったように感じた日々は、あの頃の俺から全て地続きなのだと、今は感じられる。



思い返せば、その全てについて語れるくらい、俺は生きていた。


苦しい事が多すぎた。


コロナの一件のせいで、トリプルワークまでして貯めた15万は消え、その後の収入はマイナス10万が3ヶ月も続いた。

俺が教える方のレッスン予約も消えたし、

引越しの計画も潰れ、ライブは五本も潰れ、漕ぎ出すはずだった企画も消え。

俺は今ずっと絶望していた。



あの女性に言われた言葉を思い出した


「忘れなてはならない」


あぁ、まだ死んでなかった。





思い出したよ。


⑦夢の話


俺は音楽、とりわけ歌が大好きだ。


声には人の全てが表現される。


俺たちは声無しには生きられない。


単なる音声データではなく、言葉。

そしてその言葉の帯びている色、込められた想い。とてつもない情報量がそこにはある。



声を極めることは、伝える事を極めることに近しい。


言葉を大事にすることは心を大事にすることに近しい。


音楽を楽しむことは感情に触れることに近しい。


ならば、

「歌は人として必要な事を全て内包しているツールで、伝える手段の究極系なのではないか?」

というのが俺の考えだ。


俺は歌いたいし、たくさんの人が歌えるようにしてあげたい。

みんな自分の可能性に気づいてくれよ。



それが俺の夢なんだ。


もっとたくさんの人を孤独から解放したい。


絶望から希望に変えてやりたい。

かつての先生と俺のような出来事を多くの人に体験してもらいたい。



それが俺の夢なんだ。




それが叶えば、


父はきっと一番喜ぶ、そう信じている。


そう願って俺は今、また言葉を紡いでいる。



読んでくれた人が、いつか俺の声を聞いてくれることを願って、話を終えます。


ありがとう。

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