人生のレールを脱線してみたら、こうなった僕の半生記【前編】
内装のこだわりがすごく、壁紙から何からすべてをDIYで改装している。
他にもトイレやシャワーが付いているものもあるが、カビが生えるので取り外す人も多いときく。
最近はレンタルキャンピングカーもある時代なので、是非とも一度は体験してみてほしい。
人生感が変わってしまう覚悟をして…。
翌日はアタルさんと僕のバスで県をまたぎ、
岩手のシークレットポイントでサーフィンを楽しんだ。
アタルさんとは、お盆までの一週間、サーフィンしたり、お互いのキャンピングカーで晩酌をし、仕事のことから恋愛のことまでいろいろな話しをして過ごした。
なんだか兄貴ができた気分だった。
二〇一六年八月のお盆。
晴天に恵まれ、真夏の日差しが肌を焦がす。
指定されたシークレットポイントについた僕の目に、想像以上の景色が広がっていた。
キャンピングカーが五台にその他十台ほどの車が停められ、サイドにはテントスペースやキッチンスペースがある。
中央にはキャンプファイヤースペース。
テント式のトイレスペースまである。
着いてそうそうに、ビールサーバーから生ビールを手渡された。
『稲ちゃん、どんどん飲んでよ~。遠慮したって会費制だからね~』
大坪さんが気さくに言ってくれた。
大坪さんもまた、人との距離感がうまい人だな~と感じた。
初めて参加したグレイスサーフのキャンプは、毎年の恒例行事らしく、お盆や連休を使い、数日間ぶっ通しで行われるという。
大坪さんがファンクラブにも入っているという山下達郎の曲が大型スピーカーから流れ、朝はみんなでサーフィンをし、昼から生ビールを飲みはじめ、夜にはキャンプファイヤーを囲みながらギターを奏でる。
三日間、最高に幸せな時間の中にいた。
思えば、アタルさんに声をかけてもらったのがきっかけで、こんな展開にまでなるとは。
旅のすばらしさ、人との縁を実感した体験だった。
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~Life is a journey~東北編~⑤
伝説のビック・ウェーバー
東北編の最後に、アタルさんから聞いた話をシェアしたいと思う。
キャンピングカーで晩酌しているときのこと、アタルさんが話し始めた。
『俺の先輩でゲンさんって人がいるんだ。この辺りでは有名な伝説のビックウェーバーでさ。』
ゲンさんは、アタルさんよりひと回り年上で、白髪交じりの長髪にヒゲをたくわえ、真っ黒に日焼けした肌だという。
僕は頭の中でハワイアンをイメージしていた。
ゲンさんは若いころ、ビックウェーバーになりたいとお祖母さんに相談したという。
するとお祖母さんは、
『月の呼吸をしりなさい』
そうとだけ答えたそうだ。
僕はアタルさんの話しにのめり込んでいった。
『あるとき仙台新港で大波が現れたんだ。
ギャラリーが集まる中、俺も友達と見に行った。そこにサーフボードを持ったゲンさんが現れて俺に言ったんだ。』
『アタル、中で待ってるぞ。』
『そう言って、大波の中に一人で入っていっちまったんだよ。
俺もサーフボードはあったけど、さすがにこの波では入ろうとは考えてなくてさ。
でもゲンさんに【待ってるぞ】と言われたら行くしかない。
そういう存在なんだわ、ゲンさんは。』
懐かしそうな表情でアタルさんは続けた。
『腹を決めて俺も入っていったよ。
しかしそこは俺の想像以上の場所だった。
波に乗るどころか、なんとか沖に漕ぐので必死でさ。
そしたら遠くの沖のほうから大きな波が入ってくるのが見えた。
やばい!
そう思いながらも必死に漕いでインパクトぎりぎりのところでかわすことができた。
だけど後ろを振り向いたら、ゲンさんがボードを捨てて、潜る瞬間が見えたんだ。
直撃を受けるところだった。
そのとき俺は、もうゲンさんに会えないと思ったよ。』
アタルさんは顔をしかめていた。
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