ゲーマー野郎が一人アカペラでYouTubeの再生回数100万回、そして本気でグラミー賞をめざすまでの話 PART 5
ついにきた、韓国国民の義務「兵役」
まず、1年留年しまして。
次の年はがんばったんですが(そんなにがんばってないですが)、漫画みたいに2単位足らず、結局2度、留年しました。
2回目の留年が決まったとき、考えてみれば日本では新卒採用の制度があるので、韓国人男性の国民の義務「兵役」を、卒業前にやってしまうのがいいのではないか、と思いました。
元々は卒業してから軍隊に行こうとなんとなく考えていたのですが、休学をして兵役を終え、新卒として就職活動をするほうがいいんじゃないかと。
なので、大学最後の1年を残し、休学して兵役行くことにしました。
兵役に行く前日の写真です。
髪の毛の短さも気になりますが、今見ると、あれですね。
敬礼が全然ダメダメですね。全然分からないと思いますが。
とにかくですね、兵役、行くのが嫌過ぎました。
たかが2年ですが、もう仕方ないので、今後の人生をじっくり考えるために与えられた時間だと考えることにしました。兵役が終わるとすぐに就職活動だし、"なにか"を決めなければいけないと思いました。これからの人生、どうなるんだろう、とか。
どうしたいんだろう、とか。
兵役の2年でやっていたこと
一旦、歌の練習は休んだらダメだと思いました。衰えてしまうと(モテなくなると。いや、モテてないけど)。しかし歌う機会なんてそんなにない。
そこで、毎朝国歌斉唱の時間を使って、超本気で歌っていました。
大きい声を出していたということではなく、バランスの良い声で、ガチで。
(回りの音程がズレていてすごく、気になってたんですけどね。そしてテンポも伴奏より少し早くなったりする、よくあるやつ。あああ!!気になって仕方がなかった。)
あと、戦争の映画とかを観てると、突撃するときに叫びながら走っていくシーンがあるじゃないですか。
非常に士気が高まる要素で、圧力もかけられる大事な要素なので、訓練とまでは言わないですが、毎朝叫ぶ練習もするんです。
「前方に向かって、力強い叫び、発射!!!!」
みたいな。
「わーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
みたいな。
(映画観てるときは「なんで叫んでるんだ。」とか思っていましたが、あれ、叫んで突撃するのと叫ばず突撃するのと、怖さが全然違いますよ。ほんと。効果的。どうでもいいか。)
ここでも僕は、ここしかないと思い、こっそり、
フェイク(音程コントロールテクニック)の練習をしていました。
周りが叫んでいるので聴こえないかなと。僕の前にいた人は聴こえていたかもしれませんが。
また、ゲームセンターにおいてあるような木の箱みたいなカラオケボックスがありました。1曲20円、みたいな。金取るんかい。
僕が歌をやっていたことは先輩兵士に伝えていたので、よく「おい、カラオケ行くぞ!」と誘われて歌っていました。超安い金額なのに、「今日は俺のおごりだ!」なんてやり取りがあったり。
実践練習と思いながら行っていました。
歌うだけじゃなく、聴くほうもやっぱり欲しくなります。
全国で廃棄予定のパソコンを集めてきたかのような、立ち上がるのに20分くらいかるパソコンが置いてある部隊内のパソコンルームがあったので、そこでYouTubeを使って聴いていました。
本当に、YouTubeにはお世話になるばかりです。
このパソコンルームがまた有料で、かつ台数が限られているので、長くはいられませんでしたが、よく利用していました。そのときはこのMichael Jacksonの曲にすごくハマっていました。
ていうか、軍隊は時間がありすぎ。
軍隊で見張りなんかをしていると、ただ2時間立っているだけだったりします。
いや、もちろん見張っているわけですが、考える時間はあり余っていました。
まあ、そのあり余った時間が本当に苦しかったりするわけですが。何もしない時間がむなしく過ぎていく感覚というか。
軍生活というのは、訓練は訓練でしっかりするし、休みもしっかり取ります。サラリーマンのような生活で、朝6時に起き、17時くらいに訓練や業務などの日課がすべて終了。18時から20時半までは自由時間で、シャワーに入ったりテレビを観たり、掃除や軍法の勉強などの時間をこなし22時に寝床に付きます。
夜に見張りがなければそのまま8時間睡眠。見張りはシフト制で、部隊にもよりますが2~3日に一回くらい大体1~2時間くらいのシフトが回ってきます。運の悪いシフトのときは深夜2~4時、といった感じ。その時間は暗闇の中で立っているだけです。
(訓練の合間、休憩の様子。左側で乾パンを口に入れ、手をグーってしているのが僕です。)
本当に、なにもしない時間がたくさん与えられたので、人生設計をすることにしました。
もちろん変更はあると思うけど、ある程度の人生設計というか。
もうそのときには音楽がむちゃくちゃ好きになってしまっていたので、音楽のプロとしてやっていくのか、就職して趣味で音楽をやっていくのか、それとも音楽はやめるのか、決めようと思いました。
一応選択肢には挙げたものの、音楽をやめる理由は無かったのですぐに除外。
「いや、別にやめなくていいでしょ(笑)」って。
なんとなく選択肢に入っていたのはマンガや映画の影響でしょうかね。
「音楽はもう、卒業だ」とか言うのがちょっとかっこいい、みたいな。
男のバカ加減っていつになったら無くなるんですかね。
サークルでがんばっていろんな大きなイベントに出ていたとはいえ、プロになれるほどの実力もなかったので、趣味で続けるしかない、と、消去法で決めてしまいました。
本当は、もうアカペラはやめようと思っていました
もしくは趣味でやるか。
僕はアカペラを主にやっていましたが、"音楽"ではなく、どうしても「大道芸」にみえてしまうという認識がありました。
大道芸ではない"音楽"として聴いてもらうため、多種多様な音楽を学び分析していると、アカペラで"音楽"を作るのは本当に大変だなと感じたのです。アカペラに音楽としての限界を感じていました。
PART 4の記事で紹介した、「Take 6」というグループ。
このグループはアカペラグループでアメリカの音楽賞、「グラミー賞」を10回も受賞していますが、この人たちの曲を楽譜に書いてみると、本当に緻密でよく考えられた、素晴らしい音楽的要素が詰まっています。
もちろん世界最高峰のアカペラグループというのもありますが、「Take 6」だけじゃなく、スウェーデンの「The Real Group」であったり、カナダの「The Blenders」であったり、数々の素晴らしいアカペラグループの曲を楽譜に書いてみると、やっぱり素晴らしいものが詰まっているし、様々な音楽理論を基によく考えられている。
でもそんな編曲は、僕にはできないと思いました。
やけに音大コンプレックスを持ち続けていたというか。
「音大も行っていないのに無理だ」と思いました。
かつ、"大道芸"が"音楽"になるかどうかを決めるもっとも大事な要素は"リズム"だと思っていたので、本物のリズム楽器、ドラムやベースには勝てないと感じていたのです。
ただ、アカペラを大学で5年もやってきて、それをまったく活かさず、普通のボーカルとして活動することには疑問がありました。
アカペラグループのほうが楽しく活動できるし、趣味としてはそっちの方が楽しいし良いんじゃないかと。
でもメンバーのみんなが就職すると住む場所や生活時間もバラバラになり、それもなかなか難しくなる。
でも何らかの形で、音楽がしたかった。
その時、2つの言葉に出会いました。
一つは、昔知人との会話で出てきたある言葉。
同じようなテーマ、未来について話していたのですが、
「まあそれだったらあと残されてるのは、本気の趣味だねー」という言葉。
"本気の趣味"。
それをするには、どうしたらいいんだろうと考えました。
もう一つは、僕が大好きな、「GACKT」さんの言葉。
「ともかく動こう。動いてみた人しか分からない。君はいつ気づくかな?」という、言葉。
それを思い出したとき、立て続けに浮かんだのが、「人生は一度きり」とか「少年よ、大志を抱け」とか、よくある数々の名言たちでした。
ただこういう言葉って、分かっていても結局実践できなかったり、受け入れられなかったりしますよね。
でも、この「GACKT」さんの言葉のあとに、ふと、
「あ、淡々と、全部やったらいいのか」
と思った瞬間がありました。
これが気づくということなのか、と。
で、言葉をそのまま受け取り、夢を大きく持ってみようと思いました。
そしたら、
グラミー賞を獲ることにしていました。
僕は自分に都合の良いことだけ信じる人なので、「口に出していたらそれが現実になる」という類の言葉が気に入っている僕は、まずグラミー賞を獲るということをやけに口にするようにしていきました。
無理矢理にでも。
まあ、グラミー賞を目標に掲げれば、人生を終えるまで叶えられるか分からないくらい大きい夢だし、ずっと音楽を続ける動機にもなるのかなと思いました。モチベーションも保てるかなと。
ここから、動き出します。
ただ、兵役が全然終わりません。
なんて長い2年なんだ。
著者のよう いんひょくさんに人生相談を申込む