転職大魔王伝「オレ、アメリカのお寿司屋さんでアルバイト。」3
オレ、ビッグビジネス掴む。
翌日から生徒は日増しに増えていき、MAXで7人に膨れ上がりました。
トムがオレが割ったA4サイズ小指幅の板を、A1サイズ手首幅の檜をブチ抜いたっくらいに膨らませて街中に吹聴したためでした。(結構、計算通り)
1と3の懸念事項はクリアできたのですが、意外と2が手強く、膝の古傷を理由に人気の踵落としや旋風脚はお見せしませんでした。
仕事をしているのかしていないのか、生徒の親父どもは毎日のように空手スクールを見学にきました。
練習のレパートリーが無いので、最後のほうは何故か座禅を組ませて棒でぺちぺちやったりもしました。それは寿司屋のカウンターより長い1時間でした。
肝心の収入のほうですが、空手スクールのチップの額が寿司屋のギャラに肉薄しており、予定の日数働かなくても目標額に届くのでは?と思えるペースになっていました。
そんなある日、生徒の親父の一人が授業中のオレに話しかけてきました。
シショーモットマイサンニカラテヲオシエテプリーズと言いながら、ジョージ(仮)はもはやチップとは言えない金額をオレのポケットにねじ込んできました。
オレの当初の目標額に達した(というか遥か超えた)のはこの瞬間で、この街を去ったのはそれから2日後でした。
オレ、たぶん伝説になった。
オレが街を離れると告げた時「この日がくるんじゃないかと思っていたよ。」といってオーナーは抱きしめてくれました。
「君は、この街を変えた。」と言いました。
オーナー、ごめん。
20年以上経った今も、この言葉の意味がさっぱりわからない。
トムはなぜかギャー泣きしていて、結局見送ってくれませんでした。
あいつ結構いいヤツだったな。貢献度も高かったし。
常連の一人だったじいさんは、
「ワシが知っている限り、おまえさんはこの街に住んだ初めての日本人じゃ。おまえさんのことはワシが伝え続けるとしよう。」
と言ってハグしてきました。
あの力の弱さではたぶん数人にしか伝え切れてないだろうなと推測。
生徒たちには再度「空手は人に使うな」と釘を刺し、ジョージ(仮)にはさすがに幾らか返金をし、迎えにきてくれたゲイの車で街を出ました。
ゲイは言いました。
アメリカ人は、ホントに映画を見過ぎだなと思いました。
さっきGoogleで検索してみたら、今のアナポリスはあの頃よりも交通網も整備され、大きな美術館もでき、観光地としても有名な開けた街になったようです。
ただ、Googleストリートビューでさんざん見回ったのですが、あの寿司屋もオレの銅像らしきものも見つかりませんでした。
おっかしいなぁ。
まとめ
●業務内容
寿司屋厨房スタッフ兼空手教室講師
●就労期間
約2週間
寿司屋:1日7時間
空手:1日1時間
●給与(時給)
総額:約650$ ※当時レート約65,000円
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寿司屋:400$ ※当時レート約40,000円
(時給:約4.7$ 当時レート 約470円)
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空手:250$ ※当時レート約25,000円
(時給:約36$ 当時レート 約3,600円)
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