カビとの対話(追補版)

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「では、ばい菌やウィルスを防ぐ方法はないんでしょうか?」

「そんなことは無い。

防ぐというより、わしらの食べるものが無ければ良いんじゃがな。

血液をいつもきれいにしておくことじゃな。汚いならきれいにすることじゃな。」

「それにはどうしたら良いんでしょう?」

「な~~に、汚いものを入れない。汚いものを出すことのできる浄化作用を素直に受け入れることかな?。」

「素直に?・・・ 具体的には?」

「そうじゃの~う、自分では入れないと言っても、あんたがたは親から、またその親からけっこう受け継いでいるからなあ。それに今のお前たちの暮らしでは否応無しにどんどん入っているし。」

「除草剤、殺虫剤、いろんな添加物などでしょう?それに公害物質になるような・・」

「さすがにそこまでは分かって来たようじゃな。

だがな、話したようにまだ恐ろしい薬剤には目をつぶっている。」

オレは話しに割り込んで言った。

「ドラッグなどと言われる麻薬類でしょ。いま政府でも盛んに警鐘をならしていますよ」。

「ふん、さきほどのわしの話を聞いておらんかったようじゃな。

麻薬と薬剤と区別している理由はなんじゃ?」

「薬剤って医薬品のことですか?」

「そうじゃよ、いちばんかんじんなものを忘れているのかい?

麻薬も医薬に使われる薬もどこが違うというんじゃ?もとを正せばすべて毒ではないかな。」

「そりゃあ、薬は毒だとはいうけど・・・」

オレの頭は認めたくない気持ちでいっぱいだった。

「それだけ分かっていながら、なぜそこで分からなくなるのか。わしらには不思議でたまらんわい。」

「でも、医薬品の場合は副作用のない程度にきちんと決められた分だけ使っていれば問題にならないはずですが。」

「・・のはず・・か。」

オレを軽蔑したような目で見て、ばい菌は話を続けた。

「いいかね、自然は人間様の都合などは受け入れてないんじゃよ。

どう思って使おうと、それはそれ。毒は毒。ただあるがまま、そのものを受け入れるだけじゃ。

たとえそれが善意で使われようが、悪意で使われようが、そんな事には関係なしで、ただ法則に合った因果関係が起こる。原因は毒でその結果は浄化作用。

そうして、わしらはその掃除のために、そこから“わいて”それを食い尽くす。」

「・・・・・・・」

だから、薬の種類が増えればわしらも種類が増える。強い薬が造られると、わしらも強い菌やウィルスとして登場する。叩けば叩くほど強くなるのがわしらの宿命じゃ。

始めに言っただろう。掃除役のわしらは大自然の申し子のようなものじゃということを。」

「でも、医学の研究の進歩によっていずれは世界の伝染病は克服されると言われています。」

「あんたが何を信じようがわしらには関係ない。ただ自然から与えられた役目を続けるだけじゃ。なにを選ぼうとわしの知ったことじゃないがな。」

「これだけ言っておいて、そんな、無責任な・・どちを信じて良いのやらさっぱり分からないじゃないですか。」

「ホウッホッホッホホホ~、わしらはばい菌じゃからのう。責任などとれないわい。わしらの責任はただあんたらのからだの毒分を食い掃除のお手伝いをすることだけじゃ。

毒になる薬を増やせば、そこにはわしらが現れる。ホッホホ、いたちごっごじゃのう。

わしはもう言いたいことをいったし、満足じゃ。もうなんにも苦しゅうない。気が晴れたわい」

(こいつ!オレのあたまを混乱させることばかり言って・・ナンダ!!)

「それに今は大自然の力が増しているからのう。今後はますます活躍しなければならないようじゃ・・・」

「大自然の力が増している?」

「そうじゃ、太陽の力じゃよ。地球上のすべてのものはこの太陽様の影響を受けるんじゃ。

その力の源としての象徴が黒点と言われているが・・。

この太陽の力によって地球上の浄化の力が全般に増すようじゃのう。まあ、悪いことではない、不調和を調和させる大調和の働きじゃからのう。」

ばい菌はますますオレに分からんこと話し出した。

「太陽の黒点が地球上の浄化作用を強めるんですか?」

「そういうことらしいのう。すべての浄化作用が強くなることらしい。」

「病気が増えるんですか?」

「そのなかでも病気はその主なるもののひとつになるじゃろうが。

おまえたちの中にも最近のインフルエンザについて、太陽の黒点の活動とウィルスの活動の活発化を関連づけている学者さんも現れたようじゃが。わしらの活躍も大自然の浄化作用という機能に組み込まれた存在じゃから、これからますます働かされそうじゃな。」

「伝染病と言われるような病気が増えるということですか?」

オレは少し不安げに聞いた。

「まあ、そんなに不安がることはない。浄化は悪いことではない。すべてをきれいにする働きじゃ。

大自然に順応することじゃ。大自然がおまえたち人類を、どうかしようとして滅ぼそうなんてことは考えないことじゃ。

すべてが人類のために必然で必要なことしか起こらないことをようく認識すれば、恐ろしいことなんか何もないはずじゃ。」

ばい菌の古老はオレが不安がる様子を見て、諭すように言う。

(ああ、ばい菌になぐさめらているオレは、いったい・・・)

オレはばい菌に泣きつくように言った。

「信じられないですよ。そんなことは。」

「わしが言ったことがそうであるかどうか、それはあんた自身が物事をよく見つめて行って決めるしかないのう。

だれもそれを強制できないし、そして、だれもあんたの代わりになって決めてはくれないのじゃからのう。

ただ、繰り返すが、わしらは汚れたところに現れ、汚れたものを食い、そして、死んでゆく。

そんな役目を与えられたのだから、わしらの仕事を増えるかどうかはそこの点にしか無いのじゃ。」

古老のばい菌はすこし疲れたような様子で淡々と語っている。

「さ~~て、長くはなしすぎたようじゃな。

わしも仕事をしなくては、あんたも忙しいんじゃろうからな。呼び止めてすまなんだと思う。これをばい菌からあんたを人類代表としてのメッセージとしよう。」

「ええ~~人類代表なんてまっぴらごめんですよ。だれかほかの人に話してくださいよ」

「わしはもう少し汚物を食い尽くしたら死んでゆく運命じゃ。あんたとまた合うことはないであろう。ここで出会ったのも多生の縁というではないか。わしの話したことゆめゆめ忘れるではないぞ。 汚物からわしらがわいて来る。汚物の原因には薬が親玉格で筆頭。

あとはみんなが知っている食毒、そうして多くの人間様が言う人間の想念毒・・これもじゅうぶん認められて来たことの様じゃ。しかし、このような事はだれも知っていることじゃから、わしがわざわざ言う必要もない・・・・よそで聞いておくれ。」

「ちょっと、待って。あんたたちばい菌やウイルスは、最初は“わく”って言いましたが、血液からですか?どんな分子式で構成されてくるんですか?」

オレはさっきから気になっていたことを聞いた。

「分子式?・・・ばい菌にそんなこと分かるか!ほほう、お前さんたちが好きな、『科学的に証明せよ』ってわけかい。」

「そうですよ、まさか何も無いところから“わく”わけないでしょう。」

「実はその何も無いところからわしらは“わく”んじゃよ、ホッホホ・・・」

ばい菌はオレをからかうように笑って言う。

「何も無いところに、すべてが有る。

だから、“無い”けれども、“有る”んじゃのう~。」

「????・・」

「お前さんが、さかだちしたって、そこはつかめないんじゃから、そこは無いとも言える。しかし、有る。

いや、べつにあんたをからかうつもりではないんじゃ。

あんたがたの有限の世界からはつかめない世界じゃから、無の世界と思っているだけのことじゃ。無限をつかめたら、それは有限じゃからのう~。そうして、その無限の世界こそ、実体なのじゃ。逆にあんたがたがつかんでいる有限の世界の方が、夢まぼろしの如し・・・なんてね。

ま、わからんでもよいわい。

そんなことよりも、たいせつな事は言って聞かせたつもりじゃ。

わしらは、人類だれもが見逃して来た“薬毒”が一番好物なのだということをゆめゆめ忘れるでない。

それが、わしらからの人類へのメッセージじゃったな。そして、あんたはんが、そのメッセージを受け取る代表となったわけじゃ。ホッホッホホ~~~」

なにやら、ばい菌の説明はさっぱり分からなく、オレにはその高笑いだけが耳にいつまでも残っているのだった。

「よ~うしと。 それじゃあな。 これでわしも思い残すことはない。サラバじゃ。どれ、食い残したあんたはんの汚物をいただくとするか・・・ アア~、イソガシイ、イソガシイ・・・・」

話を終えた古老の親分と思えるばい菌は、さっさと、向こうでうごめいている仲間の方にゆっくりと歩き始めた。ばい菌のそのうしろ姿はながい話のあとですこし疲れたようにも見えた。

オレが最初に見たときは、ばい菌のやつが黒くて槍を持った悪魔の様なかっこうに見えていたのに、去って行くやつの後ろ姿を見つめていたら、なにかコウゴウシイような姿に見えたのには不思議な気がしたのだった。

オレはそのうしろ姿をみて、思わず、

「待ってください!せめてアナタのお名まえをきかせてください。」

(ばい菌に名まえもなかろうニ)

オレはおもわずばい菌の後を追いかけ、片足をつかんでしまった。

(ん?足がけっこう太いなあ・・)こんなときに変なことを思いながら、オレは足をつかんだまま、なぜか意識がもうろうとして来た。

どれくらいの時間が経ったのだろうか?

「アンタ!!なにしてんの!!」

その声で、オレはもうろうとしていた気分から目が覚めた。

頭を上げて見ると、なぜかオレはうつ伏せになっていて、カアチャンの足をシッカリとつかんでいた。

「なに寝ぼけているのヨ、あんた!

おや?・・・・・そういえばひさしぶりねえ~~」

妙にやさしい声に変わったカアチャンの声に、オレのからだはいっぺんに硬直してしまった。

(まだオレは迷想ちゅうにちがいない!まだオレに迷いがあるからにちがいない。きっとそうだ、そうにちがいない。)

オレは自分に強く言い聞かせていた。

だが、そこからは現実に直面しなければならない大問題で、オレは夢のような妄想のようなばい菌の話をいっぺんに忘れてしまった。

(やはり、あれは夢だったんだろうか・・・)

「ばい菌が話をするなんてことは有りはしないんだ。オレの妄想なんだろう。」

オレは、ときどき思い出しては自分にそう言い聞かせている。

しかし、時には不安になることもある。

「オレが人類代表にされたんでは、たまったモンじゃない。

オレは責任を被らなくてはならない・・・と、とんでもないことだ。

どうしたら、それから逃れられるのだろうか・・・・

ソウダ!!

だれかホカの人にこの責任を渡してしまえば・・・・・・・・人類の代表者は逃れる・・・そうだ! むかし流行った「不幸の手紙」だ!・・・・」

現代版、不幸の手紙・ネット版「カビとの対話」で世間を席巻するのだ

かくして、「カビとの対話」は往年の不幸の手紙のごとく、またたくの間に全国へ拡がっていった。

さて、カビとの対話 

あなたはここまで読んでしまったのかな?

不幸を逃れたかったら、ワタシのように誰かに話すことじゃなあ・・・

あ、久しぶりに微かな声が・・・・

・・・・・なんか、わしはひじょ~~に気が楽になった気分じゃわい・・・

(・・ん?  死んだはずのバイキンの古老の声?)

ご注意 

この対話は、フェックションであり、「神との対話」とかいう書籍とは一切関係ありません。 (誰も思わないかな)

フェックション! う~う、バイ菌がウワサしている・・・


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