ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

16 / 17 ページ




私は肝硬変で死ぬだろう。

そのことだけは、はっきりしている。

だが、だからと言って墓は建てて欲しくない。

私の墓は、私のことばであれば、充分。

 「あらゆる男は、命をもらった死である。

もらった命に名誉を与えること。

それだけが、男にとって宿命と名づけられる」

ウイリアム・サローヤン

ー寺山修司の絶筆「墓場まで何マイル?」







高校2年の3学期の終わり、終了式のあと。


ぼくは教室の前に出て、クラスのみんなに挨拶をした。

「楽しいクラスでした。みんなも元気で」


拍手をもらい、サプライズでクラスみんなからの色紙と小さな花束を、学級委員長の女の子が渡してくれた。

ぼくをダーリンと呼んだ憧れのあの子だった。

とても嬉しかった。

「がんばってね」

クラスの女の子たちに声をかけられた。

ぼくは自分の選択した人生を誇らしいと思った。

こんなに晴れ晴れした気分で高校生活を終えれて、新しい人生を始められて本当によかった。

「完璧な高校中退」だ。






「青い鳥は東京に行っても見つからないかもしれません」

と担任の先生に言われた。


「幸福とは幸福をさがすことである」

ジュール・ルナアルの言葉を心の中で口ずさんだ。






「世の中ホンマにおもしろいな。何が起こるかわからんな」

旅で出会った不良少年の言葉と、旅から帰ってきてみんなから興味を持たれたこと。

その経験は本当に大きな意味があった。

世の中に偶然を。

奇跡をもっと起こしたい。

もっといろんな生き方、いろんな人がいた方が世の中おもしろい。

この感覚に、自分の人生を賭けることにした。












みんなの卒業式


中退してから1年後。

忙しい時間を縫って東京から帰省し、ひさしぶりにT高校の中に入った。

かつての同級生達の卒業式。

ぼくは保護者席に座り、みんなが卒業証書をもらう様子をひっそりと見ていた。

タイムスリップしたみたいな感覚だった。

みんなとは、ずいぶん違う遠いところにいま立っている。


今日も晴れ晴れとした気分だ。


ぼくをダーリンと呼んだ学級委員のあの女の子と、卒業式の翌日、カフェで再会した。

その後、彼女は渡米し、東京とアメリカでメールや手紙のやりとりをずっと続けることになった。







ハル:なんつうか・・・感覚なんだよな。

   お前らだって覚えあっだろ?

   日本にいて感じる独特の不安感・・・


かんな:アタシもあった。自分が何をやりたいのかすらわからずに、

    夢さえもどっかうつろでそらぞらしく思える不安。


ハル:結局よ・・・ゼロを見ることなく百や千から

   始まらされてたんじゃないかな、俺達・・・

   気がついたらいきなり百の場所に立ってんだ。


かんな:うん、しかもその先きっちりレールが敷かれててね・・・

    原点の必要ない応用とアレンジばっかり・・・・


ハル:俺は、どうしてもゼロから始めたかったんだ。

   それが今日やっとつかめた気がする。


ージパング少年15巻(いわしげ孝)







                               ☆


        ☆ 


                   ☆

                            

            ☆

                                ☆

                 ☆


著者の成瀬 望さんに人生相談を申込む

著者の成瀬 望さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。