ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

15 / 17 ページ

ということは、小中高生の30人以上が毎年進路に悩んで自殺までしている計算になる。

進路の悩みで自殺するほど追い込まれる閉塞感っていったい何だ?


そもそも日本では、毎年3万人も自殺している。

豊かなはずの日本のこの閉塞感はいったい何なんだろう?

檻の中で自殺する飼いならされた犬に、なっていないか?


たとえ、生きていくことがどうしようもなくなっても、ぼくは希望は必ずどこかにあると思う。

と、信じたい。

そんな世の中にしたい。


あの不良少年との一夜のように、人生、何が起こるかわからないし奇跡も起きる。






高校中退したらダメだというぼくの周りの人は、誰も高校中退したことのない人たちだ。

暗記中心の受験勉強は有害だという大人もいるけど、その大人達も立派な大学を出た人たちばっかり。

誰も高校を中退して、自分の経験から受験勉強の意義や学歴社会の真実を語っている人がいない。


だからこそ、ぼくが中退して学歴社会からはみ出して生きる意味があるのではないか。

学歴社会からはみ出し、世の中にひとつの高校中退者の可能性を示す。


ぼくは勉強に挫折して辞めるのではない。

いじめられて辞めるのでもない。

孤独で馴染めないから辞めるのでもない。

勉強も出来るし、友達も多いし、高校生活は最高に楽しい。

世間の常識から見たら、辞める理由はどこにもない。

理由はひとつ。

受験勉強というくだらないことで人生を無駄にする飼いならされた犬になりたくないだけだ。


純粋にそれだけの理由で高校を中退する人が世の中にいるだろうか?

いないし、聞いたこともない。

ぼくにしか出来ないことだ。

これは、ぼくにしか出来ない社会実験だ。

生きてる意味がある、と思う。


閉塞感に穴をあける人が、必要だ。






ぼくに意見する人の話は全員、出来るだけていねいに聞いたつもりだ。

それでも誰もぼくの決意を変えることは出来なかった。

ぼくの考えに賛成してくれる人はほんとうに誰ひとりもいなかった。

全員がぼくの生き方を否定する。

こうなってくるとますます、世の中にぼくが存在する意味があるんだと思えてくる。


毎日毎日、否定の言葉、呪いの言葉を投げかけられるのは正直、ものすごいしんどかった。

だけど、こうなったら何がなんでも高校中退する。

親切に、ぼくを止めてくれる人はありがたいけど、あなたはぼくの人生を妨害する障害物です。

全員、敵。

たおす。

悪いけど。

ジャイアントスイングで思いっきり、プロレスラーみたいにやってやる。






ノイローゼになりそうだったけど、ぼくを説得しにくる「親切な人たち」全員に対して手当たり次第に機関銃のように自分の考えを掃射し続けた。

剣豪、宮本武蔵になった気持ちでばったばったと言葉で「親切な人たち」を斬りつけ返り討ちにし続けた。






朝、早起きして夜明けの淀川の堤防を走る。

夜明けの朝日をみる。

そのひとときが、自分を取り戻す大切な時間だった。






そんなとき、図書館で村上龍の「希望の国のエクソダス」という小説と出会った。

不登校の中学生や高校生がインターネット事業の会社を作り、さんざん儲けて、日本の通貨危機を救い、最後は北海道を日本から独立させ自分達の国をつくる。

というストーリー。

「この国には何でもある。だが希望だけがない」

という有名なセリフの小説。


この小説の公式サイトを作っていたのは東京都武蔵野市の上田学園というフリースクールの学校の学生達だった。


フリースクールというのは、高校でも大学でも専門学校でもなく、学校法人という既存の枠からはみ出した、個人による私塾のような学校。


希望の国のエクソダスのホームページでは、上田学園の学生達が本に出てくるインターネットビジネスの解説を書いたり、全国のフリースクールを取材して記事にまとめていたりしていた。

ものすごくよく出来ていたし、面白かった。


学生は元引きこもりのコンピューターおたくの人や、中学校を自主中退して、北海道のアイヌの村やインドに滞在していた人など、10代校半から20代前半の年齢の生徒達が集まっていた。

自分よりも少しだけ年上ぐらいの人たちが、人気作家村上龍の事務所と一緒に仕事をしている。


ぼくは中退後、上田学園に入学することになり、東京で一人暮らしを始めた。




晴れて高校中退


シスター:退学してから、いったいどうする気なのでーす?

かんな:友達と一緒に南アメリカへ。

シスター:・・・・・・ 一度きりの人生なんですよ、後悔しませんか?

かんな:後悔しません。一度きりだから!

ージパング少年5巻(いわしげ孝)



当時のぼくはこう考えていた。


どんな生き方や人生にも必ず意味がある。

言い方を変えれば、例えどんな生き方をしたとしても、振り返ったときに人間は自分の人生に必ず意味を見いだす。

だから、受験勉強して大学にふつうに行っても、それはそれでよかったときっとぼくは自分の人生を肯定するだろう。

受験勉強を拒否して高校を中退しても同じだ。

その選択がもし何かとてつもない失敗だったとしても、将来振り返ったときに、ぼくはきっと人生においての大きな意味を見つけるだろう。

どっちにしろ、その人生を選んだことには後悔しないはずだ。

結局、どっちでもいいんだ。

すべてのことには意味がある。

あとで必ず意味は見つかる。

だったら、世の中に成瀬望という人間が生きた意味を残せる方の人生を選びたい。

著者の成瀬 望さんに人生相談を申込む

著者の成瀬 望さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。