ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。
わたしは、同世代のすべての若者はすべからく一度は家出をすべし、と考えています。家出してみて「家」の意味、家族のなかの自分・・・(中略)・・・という客観的視野を持つことのできる若者もいるだろうし、「家」をでて、一人になることによって・・・(中略)・・・東京のパチンコ屋の屋根裏でロビンソン・クルーソーのような生活から自分をつくりあげてゆくこともできるでしょう。
やくざになるのも、歌手になるのもスポーツマンになるのも、すべてまずこの「家出」からはじめてみることです。
「東京へ行こうよ、行けば行ったで何とかなるさ」――そう、本当に「行けば行ったで何とかなる」ものなのです。
ー寺山修司「家出のすすめ」より
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とりあえず「勉強」を捨ててみる
「とりあえず」フツーに高校生活を送ってみる。
それはそれでとっても楽しいけど、ぼくはこんなことをしたかったわけではない。
高校の勉強は、中学校よりもさらに暗記中心の勉強になった。
興味持てないし、退屈だった。
勉強しても、新しい思考回路も、見晴らしのいい地平線にふと出会うような学問の感動も得られない。
もはや勉強ではない。
ただの暗記だ。
もっと本質的な「生きる手ごたえ」を、つかみたい。
高校合格以降、ぼくの進路は立ち止まったままだったけど、そろそろはじめようかー。
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ある日、中学校のときの初恋のAさんからもらった手紙やたくさんあった自分の日記を、やぶいて捨てた。
大阪の近所の町や淀川ぞいを散歩しながら、そのへんにあるゴミ箱に捨ててしまった。
「勉強」も捨ててしまおう。
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とりあえずまずは、単位を落とさない程度の本当に最小限度の勉強しかしないことにした。
授業は聞かない。
なぜなら授業を聞くより自分のペースで教科書や問題集を解いて理解していった方が勉強の効率がいいからだ。
例えば50分の授業時間中、20分の自主勉強でその授業内容を理解して終わらせて、計画的にわざと遅刻もするし早退もする。
出席日数を進学の問題にならない程度に出来るだけ減らす。
ぼくは、それまで今までの人生で、遅刻なんてほとんどしたことがなかった。
健康だったので、早退なんて一度もしたことがない。
どうどうと授業を無視したこともない。
はじめはドキドキしたけど、どんどん慣れて平気になっていく。
学校に毎日行って授業を受けるのが当たり前だった日常から逸脱していく。
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授業をさぼって、ぼくはひたすら本を読んでいた。
やっぱり本が好きだし、手軽に世界と思考を広げるには本だった。
本しかなかった。
親にも先生にも、友達に相談しても、誰もぼくの人生の参考にならなかった。
小説、ノンフィクション、エッセイ、詩、ビジネス書、科学の本、実用書、いろんなジャンルの本を気になったものを片っ端から、とにかく読みまくった。
先生からはもちろん注意を受けたが、その場だけ取りつくろってまた本を読んだ。
勉強するのが当然、先生の話を聞くのが当然、宿題して当然という空気の中、それをまったくやらないのは、明らかに反抗だった。
先生にもクラスメートにも迷惑をかけているのは明らかだった。
しばらく続けていると、だんだん居心地が悪くなってきた。
ここは受験勉強をするために集まった人たちの場所。
なのにぼくは受験勉強を全くしたくない。
「勉強」を捨てたのだから、ぼくがここにいる意味は無いんじゃないか?
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「学校」を捨てて、非日常の旅へ
「勉強」だけじゃなく「学校」も捨ててみたい。
高校2年生1学期、沖縄への修学旅行後の中間試験。
面倒くさいなと思いながら、窓の外の青空を眺めていたらふと思った。
「近いうちに、いちど脱出しよう」
☆
ぼくは「旅行」がしたいのではなかった。
学校をサボりたいのでもなかった。
「日常」から脱出したかった。
その日がどうなってしまうのか、明日がどうなっているのか、あさってはどこにいるのか、全く予想不可能な非日常に行ってみたかった。
いつも通り学校に行って、何も変わらない退屈な日常が始まる瞬間に突然、誰にも予測不可能な行動をとる。
毎日学校へ行って、勉強して、進学して、就職していく。
そんな日常、まわりの人たちの常識、自分の中の常識を一回まっさらにして、ゼロから自分の人生を見つめてみたかった。
☆
なんでもない日常のなんでもないある日。
寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。
高校2年生の梅雨の季節ー
☆
旅で見つけたもの
国民的コミック「ドラゴンボール」や「スラムダンク」「バガボンド」などの主人公はみんな、常識の通じない破天荒な性格で、王道から外れた人生を歩んで圧倒的な強さを見せる。
坂本龍馬だって、幕末の志士達だって、当時の常識的な生き方からはまったく型破りな豪傑たちばかりだ。
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