ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

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この世界は、参加するに値する意義のある世界か?

自分の人生は、生きるに値する人生か?

本を読めば読むほど、自分が残念で、ここではないどこかへ行きたいという思いが募った。


だけど、現実には本を読むのと勉強をする以外に、ぼくは何も思いつかなかった。






中学3年生。

義務教育の終わり。

14歳〜15歳のすべての日本人がいっせいに、おそらく生まれて初めて自分の人生と向き合う。

そして大多数の人が普通科の高校へ進学する。


3年生の1学期、ぼくは違和感を感じていた。


なぜ、いままで先生の質問に手を上げなかったクラスメイト達がいっせいに突然、全員手をあげるようになったのか。

なぜ、突然みんな宿題をキチンと出し、キチンとノートを取るようになったのか?

答えはシンプルで、そうしないと内申書の成績が悪くなって、希望の進路に行ける可能性が低くなるからだ。

みんながコロリと先生に態度を変えるのが、ぼくはとても気持ち悪いと思った。


今まで、勉強しない、授業をきかない、勉強なんて自分には必要ない、といった反抗的態度を取っていた彼らはどこへ行ったんだろう。

進路があるから、受験があるから。

「とりあえず」勉強することにしたというもっともらしい彼らの意見が、何かの言い訳にしか聞こえなかった。


ぼくから見たら、みんなが飼いならされた犬で、投げられたエサを必死で取りに走っているように見えた。


なぜ、「とりあえず」勉強しないといけないのか?

みんな、どういう人生を歩みたいのか?

どういった進路を考えていて、それには受験勉強が本当に必要なのか?

「とりあえず」勉強する以外に進路はないのか?

「とりあえず」クラスメイト全員が打ち込まなきゃいけないほど、勉強や学校の結果が大きく人生を左右するのか?

「とりあえず」勉強するという選択は、自分の進路を真剣に考えることを延期しているだけではないか?

先生も親もクラスメートもみんな一斉に思考停止してないか?

みんなと同じように「とりあえず」の同調圧力に流されてしまうのは、ぼくは悔しい。

ぼくは飼いならされた犬の様には、なりたくない。


だったらぼくは、みんなと逆に「とりあえず」勉強しないし、「とりあえず」宿題も出さないし、「とりあえず」授業中に手もあげないことにした。

ノートも取らないことにした。

当然、成績は下がった。


「成瀬!なんで黒板写してへんねん」

ある日、数学の先生に言われた。

黒板を隅から隅まで写して提出するなんて、アホらしいし無意味だと思ったからやらなかった。

「ここに入ってんねん」

ぼくは自分の頭を指差して言った。

どつかれたけど、自分でウケた。






初恋から物語がはじまった


夏休み前、僕は突然恋に落ちた。

近くの席の女の子。


それまで良いな可愛いなと思う女の子は何人かいたけれども、今回は全く違う「好き」だった。

初めて出来た話のあう女友達で、人間としても尊敬できて、優しくて、彼女の持つ凛とした雰囲気が好きで、憧れに近い「好き」だった。

最初は何も思っていなかったのに、いつのまにか大好きになっていた。

その女の子、Aさんとすると、Aさんが苦手な数学の問題を一緒に解いたり、授業のわからないところを話したりすることが、ぼくにはかけがえのない楽しい時間だった。


Aさんは真面目に一生懸命、志望校を目指して勉強している。

その努力の姿はきらきらと眩しかった。


「おたがい、勉強がんばろーね♬」

なんて無邪気に言われると、思わず「うん!」と言ってしまう。

爽やかな風が胸の中を通り抜けて、自分も一緒に勉強したくなった。


恋の魔法にかかった。


なにはともあれ、目標に向かって努力することは美しい。

Aさんと一緒にがんばってみたい。

全国の中学生がいっせいに取り組む受験勉強という名のスポーツゲームにぼくも参加してみよう。

「勉強する意味なんて、勉強したらわかるわ。やらずに批判するのはよくない」

という親の言葉にも一理ある。

ぼくも「とりあえず」、飼いならされた犬になってみよう。

なかば強引に納得した。


受験先は、愛するAさんが受験する予定のT高校だ。

普通科なので、「とりあえず」進路の決定も先延ばしにできる。






受験勉強はスポーツだ。


今回の受験勉強をスポーツだと割り切ると、いろんな疑問が解決した。

スポーツだから、ルールに則ってがんばるだけだ。

なぜそんなルールなのかとか、がんばって何が得られるかとか、そんなことを考えてもしかたがない。

ゲームのルールがそうなのだから。

ノートもキチンととるし、質問もたくさんして積極的な姿勢を先生にPRするし、宿題も完璧にこなす。

テストは丸暗記してでも正答する。

受験というスポーツを目一杯がんばって楽しむ。

そう割り切ってしまえばシンプルだ。






当時1学期のぼくの成績では、Aさんの志望するT高校よりも4ランクほど下の高校にしか入れないと先生に言われていたけど、夏休みから一気に巻き返した。

1学期の内申点が悪すぎるけど、それを補えるほど好調子な2学期、3学期の内申点。

T高校よりも1ランク上、中学校で最も成績のいい数人の生徒しか合格できないK高校すら上位合格できる高い実力。

やれば面白いほど成績が伸びた。


親は喜ぶし、じいちゃんばあちゃんも大喜びで、もちろんぼく自身も手応えと充実感を感じていた。






だけど、ぼくの恋はまったくうまくいかなかった。

告白して振られて、友達でいようなんて言われても、平常心でそれまで通りAさんと接することなんてとても出来ないほど、Aさんが好きだった。

好きだという気持ちを伝えずにはいられなかったし、伝えたからどうなりたいとか、どうしたいとかは何もわからなかったけど、Aさんが好きだというぼくの感動をとにかく本人に知ってもらいたいと思った。

その結果、Aさんとぼくは気まずくなり、よそよそしくて、まったく会話もできない関係になってしまった。

どうしたらいいかわからない。


それでも、片想いでも好きでいられる異性がいるだけで嬉しかった。

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