ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

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飲みながら、このこともきっと一生忘れないだろうなと思った。






午後、神保町の古本屋街に無事に辿り着いた。

寺山修司の古い本を探してまわる。

確かにたくさんあったけど、立ち読みで満足して、結局1冊も買わずに神保町を出た。

もうお金がない。


もう大阪に帰ろう。


高速バスを乗り継げば、ぎりぎり大阪まで帰れそうなお金は残っている。

あした、一番安いバスで出発する。






今夜はたぶん最後の野宿。

また警察に捕まるのは嫌だし、こんどはやっぱり人気のないところを探して眠ることにする。

でもやっぱり東京。

1時間以上歩いても良い場所がない。

結局、大きい家の駐車場に侵入して車のタイヤにくっついて寝た。

見つかったら通報されるなと思いながら。


こんな生活も今日で終わりと思うと感慨深い。






旅、7日目


家主に見つからないように、朝5時に起きて出発する。

東京駅に行くと、夜間バスより昼間のバスの方が安かったので、午前中に出発することにする。

ハイウェイバスで東京駅から名古屋へ。

名古屋から大阪梅田へ。

一気に。


もう3日間、何も食べていない。

所持金は100円も持ってない。

梅田から家の最寄りの十三(じゅうそう)駅までたった2駅、電車に乗るお金もなかった。






ゆっくりと歩いた。

淀川沿いの道。

懐かしい見知った風景がスローモーションのようにゆっくりとぼくのまわりを進む。

のどかな堤防沿いの公園の景色がひろがる。


ついに帰ってきた。

やり遂げた充実感でいっぱいだった。


突然の家出から7日間。

高校を抜け出して非日常への冒険。

明日どうなるかわからない毎日をすごした。


ハローいつもの世界。

ちょっとは変わったかな。






家に帰り着く。

1週間ぶりにおふろでシャワーをあびると、茶色い泥水が流れた。


母親がつくってくれた晩ご飯をお腹いっぱい食べて、ぐっすりと眠った。

ふとんで寝るのも1週間ぶりだ。


すべてが快適な日常に帰ってきた。














旅の翌日


翌朝、ふつうに登校することにした。

いつもの学校、いつもの日常にもどってきたことが新鮮だった。


「成瀬が帰ってきた!」

教室に近づくと、ぼくを見つけたクラスメートが教室の中に向かって呼びかけた。

どうやら、みんなはぼくが旅に出ていたことを知っているようだった。

あとで聞いた話だけど、母親は律儀に毎朝学校に電話をかけてくれていたらしい。

「息子は今日も帰ってこないので、休ませて頂きます」

「わかりました!お大事に!ガチャッ」

そのたびに電話口に出た先生は、風邪が長引いているのかと勝手に勘違いしていたそうだ。


ぼくが旅に出て3日目か4日目にやっと、

「ずいぶんと長い風邪ですね。えっ旅ですか!?」

と事実が判明し、先生も先生でクラスのみんなに

「成瀬は自分探しの旅に出ました」

とわざわざ伝えたから、クラスでもかなり話題になっていたらしい。


沖縄にアロハシャツを買いに行っているという謎のデマも飛び交っていた。






その日は、6時間目がホームルームだった。

6時間目、担任の先生がいきなり、

「成瀬、旅の報告をしてみない?」

と言ったので、自分の席に座ったまま、ぼくは話し始めた。

夢中で話した。

みんなは静かに、ずっと聞いていた。

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