ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。
もう十分、高校生活は満喫した。
そして3学期はまったく学校に行かず、試験だけ受けに行った。
ぼくの高校は2年間で3年間分のカリキュラムを終わらせてしまう進学校だ。
だから、ぼくも2年生の3学期までに3年間分の単位を全部取得した。
正直に言うと物理だけ1単位落としたけど。
あまりにも暗記問題が多くてバカらしくなって、白紙でテストを出して0点を何度も取ったからだ。
(先生は悪くないよ)
この先、3年生は復習、受験勉強のみに集中する。
でもぼくは受験勉強はやりたくない。
受験勉強というスポーツは、やれば出来ることは証明できた。
一度経験すれば十分だ。
「受験勉強に意味なんてない」という考えは高校受験後も変わらなかった。
受験勉強のために1年間も貴重な人生を無駄遣いしたくない。
ノーサンキュー。
自主卒業だ。
☆
家でひたすら本を読み、ネットでいろいろな進路の情報を集める。
ぼくにとって無意味で苦痛な受験勉強を回避して生きていく方法を探る。
高校を中退しても生きていける道を探す。
大学はおもしろいところもありそうだ。
高校の単位をほぼ全て持っているから、行く気になれば大検にお金を払えば、高校中退していてもすぐに受験資格は得られる。
AO入試という面接や作文だけで入れる大学もある。
なんならいますぐ大学に入りたい。
飛び級できる大学はないか?
ない。
17歳という年齢では入学できない。
1年間、興味のない受験勉強に人生を棒に振っても、入りたいほどの学校はあるか?
または、就職するか?
どんな仕事がやりたい?
わからない。
だけど、いまが本気で考えるとき。
本気で人生と向き合って考えろ。
☆
「高校やめたらホームレスになるか死ぬで」
ぼくが高校を中退することについては、両親どころか、じいちゃん、ばあちゃん、いとこ、親戚、先生、すべての人が反対だった。
誰も理解者がいなかった。
ぼくを応援してくれていた先生
「大学に入れば、とにかく自由になんでもできるから、1年間のしんぼうやんか」
じいちゃん
「平和ぼけしてるからそんなこと言うんや。いっぺん、戦争行ってこい!」
ばあちゃん
「孫の自慢ばなしになるのが恥ずかしくて、病院にも行かれへん」
いとこ
「ホームレスになる覚悟は出来てるか?親不孝もん」
仲のいい友達
「高校やめたら死ぬぞ」
母はストレスで体調が悪くなって仕事を休んだ。
「こんな毎日やったら病気になって死んでまうわ。あんたのせいや」
父はある日、ぼくが高校に行かない理由を話していると
「聞こえへん聞こえへん聞こえへん!」
と両手の人差し指で両耳を塞いだ。
父は昔、死にたくなるぐらい落ち込んだとき、自分が天下の京都大学を卒業していることをプライドに、自分は大丈夫だと思って持ち直したそうだ。
だからぼくにも学歴ぐらい持っておいた方がいいというアドバイスをくれた。
笑ってしまう。
☆
どうせ死ぬなら徹底的に生きるし、この命を有効活用する方法を考える。
高校中退した結果、死んでしまったって望むところだ。
ほとんど誰もやったことのない人生を生きて死んだのだから、なんで死んだか、自分なりに分析して後世に残すと貴重な記録になる。
ぼくの人生は誰かの役にたち、その人の中で魂は生き続けるはずだ。
意味のない人生を死んだように送るくらいなら、本当に死ぬかもしれないリスクを冒しても、満足できる意味のある生き方をしてみたい。
いろんな生き方があって、いろんな人がいる方が世の中おもしろいだろう。
☆
「将来の選択肢が縮まる」
「就職できない」
「お嫁さんも来ないで」
「親不孝者」
「わがまま」
「世の中なめてる」
「甘い」
「ホームレスになる」
「死ぬで」
「後悔しろ」
学歴社会の構造から人格の否定まで、ありとあらゆる角度から責められた。
毎日毎日、否定された。
みんな悪いひとではない。
ぼくのことを想って言ってくれていることもわかっている。
どちらかと言えば、確実にやさしい親切な人だろう。
だけど、ぼくは意味のない勉強に従う飼い犬のようなクラスメートたち、学歴社会というレールを敷かれ受験勉強で感性の最も豊かな10代をゴミ箱に捨てている日本の未来を担う若者達を、おせっかいにも無視することが出来ない。
受験をしないだけで、大学に行かないだけでホームレスになったり死んでしまうほど、この国は閉塞感に包まれた国なのか。
それをぼくが身をもって確かめる。
もしこの閉塞感が現実だったら、その閉塞感を吹き飛ばす方法を身をもって世の中に提示したい。
「子供の自殺、10人に1人が進路問題」という記事をこの間新聞で読んだ。
日本の小中高生の自殺者数は年間300人くらいだそうだ。
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