僕の名前も忘れ、100万人に1人の難病を患った妻と僕の物語

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著者: ほー りぃ

僕の方をじーっと見ているのである。

「ん?どした?」と聞いても返事はない。



すると警察の方から、

「交番の前で倒れていて、通りすがりの人が交番につれて気てくれました。

 自分の名前がわからないみたいです。」と衝撃の事実を聞く。



そんなことありえない。冗談だろ。

と思いながら、僕の名前を尋ねてみるが首をかしげる。



どうやら本当に冗談じゃないと、僕も分かってきた。

とりあえず身分証明書を提示したりして、

妻を連れてマンションへ帰ることができたが、

妻は「どこに連れて行かれるのだろう?」という顔。




家に戻っても、1時間前まで居た家を「見覚えがない。」と。

「僕と君は結婚していて」と伝えると、

「子供はいるんですか?」と妻が言う。



あれだけ毎日可愛がっていた子供も忘れている。




僕は事態が完全に飲み込めていなかった。

本当にあの夜は夢のような感じがした。





次の日起きて僕は祈るようにして妻に聞いた。

「何か思い出した?」





妻は首を振る。

そして僕に敬語で話す。

「すみません。」




インターネットで症状について調べまくった。

どんな病気でどうすれば治るのか。




解決事例も少ないので、


3日で治るというものもあれば、1年はかかるというものある。

そして、「一生治らない」というのもあった。



たまたま僕は社会福祉の経営をしていて、

僕は知識がなかったが、職員が知識を持った方ばかりであった。

その方の知り合いにあたってもらった。

幸運なことに、心理学を専門としているお医者さんが知り合いにいた。



そして衝撃の事実を宣告された。

「治るのは、早くても1年。それ以上かかることも。

 そしてストレスの原因になったところから離してあげて下さい。

 できれば住む場所も変えてもらって、発症となった場所から離れた方がいい」と。




僕は頭が真っ白になった。


子供の抱き方もわからない。

母乳の与え方もわからない。

おむつの換え方もわからない。

洗濯機の使い方もわからない。

自分の親兄弟もわからない。

僕の親兄弟もわからない。

家のどこに何があるのかもわからない。


僕が全部妻から教えてもらったはずなのに、

それを妻に全部教えている。不思議な感じだった。



それと同時に、

ほとんど僕は妻の介護の状態であった。




僕はたまたま自分でビジネスをしていたので、

スタッフに事情を話して頭を下げて、一週間お休みを貰ったので、

この一週間で何とか記憶がよみがえってほしい!

そう願っていたのだが、なんと一年もかかる。



そして、この介護のような状況が1年続く。

僕はこの1,2日間で疲労困憊になっていたのが、

これから一年も続くと思うと、自分がおかしくなってしまうんじゃないかと

とてもとても不安になった。




それでも僕は、

自分に都合の良い「3日で治った」というネットの情報だけを信じ込み、

この一週間で治ると信じきって、妻に接しようと心に決めた。

というよりも、自分の精神状態を保つには、そう思うしか無かった。

本当に現実を受け入れると気がおかしくなって

自分が自分じゃなくなってしまう感じがした。





そしてこの数日間は、本当に生きた心地がしなかった。




こんな風にしてしまった妻に申し訳ない。子供にも。

何とか記憶がよみがえって欲しい。

これからの人生をどうしていこう。

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