「自然と向き合う山仕事企業」がネットでの情報発信に力を入れる理由
「山に登って働きます。」今年の1月に創業した株式会社山屋(以下「山屋」)のサイトをみるとまず最初にこの言葉がでてきます。山屋の主な仕事は山の調査や作業、運搬などの山仕事全般。自然と向き合い、山に登るのが仕事です。しかし、「365日山に登って働きたい」と願う山屋の代表・秋本真宏さんは自然に向き合うだけでなくインターネット上での発信をとても大切にしています。SNSで山の写真を投稿したり、会社設立をPR TIMESにて発信したり。なぜ自然と向き合う山仕事の会社がネットでの情報発信に力を入れているのか。インタビューすると、ネットでの情報発信には会社設立にまつわる願いが込められていることがわかりました。
山屋公式HP:https://yamaya-corporation.com/
(株式会社山屋 代表 秋本真宏さん)
■「とにかく山で働きたい」サラリーマンを辞め山仕事探し
ー秋本さんはよく「365日山に登って働きたい」とおっしゃっていますが、昔から山が好きだったのですか?
はい。通っていた静岡の小学校が自然の中にあって。カブトムシとかサワガニを捕まえながら通学していました。学校の授業でも理科が特に好きで。それは中学や高専のときもずっと変わりませんでした。
ー変わらないですね!最初から山屋のような山に登る仕事をしようと思っていたのですか?
違うんです。最初は化学者になろうとしていました。高専では実験室にこもって試験管振ったりして。
ー化学者!意外でした。なぜ山に登ることに興味を持ったのですか?
友達のお父さんから登山に誘われたのが、「山」に惹かれたきっかけです。初めての登山で長野のアルプスに行ったら、一気に夢中になりました。山には好奇心がくすぐられる、もっと知りたいと思えるものが集まっている。しかも自然のことは全く分からないから、無限に学べて楽しめる予感がして、登山のあとすぐ山に囲まれた長野に移住することを決めました。そして20歳のときに山について学べる信州大学に編入しました。
ー移住!すごい行動力ですね。
登山に誘ってくれた友達のお父さんのおかげです(笑) 実験室にこもるよりも、自分は自然の中に飛び込むフィールドワークが好きなのだと気が付きました。
ー大学卒業してからもずっと山に登っていたのですか?
大学を出てからは1年半ほどサラリーマンとして平日に仕事をしながら休日に山に登っていました。山が好きな人の多くはそのように山を楽しんでいると思います。でも、僕は人生をもっと山で埋め尽くしたかった。365日、山の中にいたかったんです。そのためには山に登ることを仕事にしたほうが良いと思い、会社を辞めました。
■「知られざる山仕事」が日本を支えている
ー最初は休日だけ登山だったのですね!会社を辞めてからはどうしていたのですか?
「山で働こう」と決心はついていたのですが、山で働く道筋は思い付きませんでした。僕はそれまで山仕事といえば、山岳ガイドや林業や山小屋しか思い浮かばなくて。日本ってほとんどの土地が山なのに、山仕事を3つしか知らないことに疑問を持ったんです。
そこで丸々一年、山で働く人に出会うために山を歩きました。そこで出会った人に仕事の話を聞いて回ったのです。
(調査時の様子)
ーなるほど。山での働き方を模索していたのですね。
はい。そこで、「知られざる山仕事」がたくさんあることに気が付きました。日本は山だらけで山で働いている人もたくさんいるのに、「山仕事」として知られていない職業がたくさんあったのです。
ー「知られざる山仕事」はどのようなものがあったのですか?
人目には触れていないけど、皆さんの生活を支えているものです。災害の復旧、発電施設や電波塔の建設、生物の調査、水道の工事など、多岐にわたります。会社の人たちも「山仕事をしている」という実感はなくても山の業務を担当していたりするんです。
ー仕事を辞めてそういった人たちの話を聞いていたのですね。
はい。山で働いて人目に触れず日本を支えている人たちの話を聞いたり、手伝わせてもらった体験を経て、山で自分がどのように働くか具体的に考え始めました。
■365日山で働きたいと考え始めた会社
ー山での働き方を具体的に考えた後はどのようなことをしていたのですか?
フリーランスとして5年間、山で働きました。山で出会った人や、働いている先輩に声をかけてもらったりして。様々な業務に関わる機会をいただけて生活ができるようになり、ほとんど一年中、山で働けました。仕事も趣味も山という感じでした。
ー素敵ですね!なぜフリーランスでなく会社を立ち上げようと思ったのですか?
僕は山がめちゃくちゃ好きで、人生をかけて山に向き合っていきたいと思っているんです。でも、どうしても個人では山の仕事のスケールに対応できないことがあって。そこで、フリーランスではなく会社として、仲間がいなければできない仕事をやっていきたいと考えたのがきっかけです。個人で出来ることに加えて、柔軟なチームを組んで仕事を請負いつつ、その先で新たな山の仕事を提案していきたいです。
(秋本さんが撮影した山の写真)
ー山の仕事を提案していく!素敵ですね。山屋がいるから助かるという人も多そうな気がします。
はい。でも、会社を作った一番の理由は誰かのためではなく自分が365日山で働きたいからです。フリーランスのときに、僕自身は山で働きたくて仕方ないから山で働いていたのですが、僕がいることに感謝してくれる仕事の発注主さんや「来てくれて嬉しいよ」と言ってくれる仲間がいて。自分がやりたいことをやっているだけなのに人に感謝されるなんて...こんなに良いことはないと思いました。
ー好きなことをやっていたら気がつけば人に感謝されていた...!すごく健康的な働き方ですね。
山のどの仕事に触れても楽しかったし、自分なりにやりがいを感じていたんです。会社を設立して仲間を巻き込んでいけば、仲間の「山が好き」という気持ちや、登山で磨かれた能力を仕事に活かせます。そうなると自分も仲間も活き活きできると思うんです。
ー山に登る仕事を誰に頼んだらよいかわからない人も多そうですもんね。
そうなんです。仕事を発注してくれる方に話を聞くと、「山に登らない人や山が好きじゃない人と仕事をすると危険だし時間がかかる。でも山屋のような山が好きで山に向き合い続けている人と仕事をすると安全だし、情熱を持って働いてくれる」と言ってもらえるんです。
■なぜ自然に向き合う会社がインターネットを活用するのか
ーこれから山屋はどんなことをしていきたいですか?
今、山の課題としては「山の業務に困ったときに相談する窓口がない」というものがあります。僕らのような山で働きたい人と、山の仕事が繋がる下地がほとんどないんです。そうすると、初めて仕事を依頼する人にとっては誰に仕事を依頼すればよいのかわからなくて困ってしまいます。そういった人たちに「とりあえず山屋に頼んだら大丈夫」と思ってもらえるようになっていきたいです。
ー仕事を依頼する人だけでなく、山で働く人にも喜ばれそうですね。
はい。現在はまだ山の業務に課題を抱えている人たちに、山で働く人達の存在が届いていないと考えています。まずは積極的にアピールし、山で働く人達の存在を知ってもらうことが大事だと考えています。そのためにも僕たち山屋は地道に仕事をして実績を作る必要があります。
ー「山で働く人達の存在を知ってもらいたい」大切ですね。会社設立するにあたって周りの反応はどうだったのですか?
山の仲間は応援してくれました。もともと山の業務において、僕自身に特別な能力があるわけではないんです。それでも山でもっと働きたいから、誰かの力をお借りしたい気持ちで会社を設立しました。なのでフリーランスのときのように一人で仕事をするのではなく、チームでたくさん仕事をしていきたいです。僕は会社設立するときとても不安だったのですが、仲間が「お前が会社を設立してくれ」って言ってくれたんです。仲間の存在がとても大きかったです。
ー一緒に働く人のためにも山の仕事を知ってもらいたいのですね。
はい。でも実は今問題が一つ起きていて。
ー問題...!?
山の仲間で「山屋で働きたい」と言ってくれる人が周りにいるのに、その人達とまだ十分に仕事ができていないんです。今はまだ山屋で請け負っている仕事の量よりも、「山屋で働きたい」と言ってくれている人の数の方が多い状態です。
ーなるほど。山のプロたちの仕事をもっと知ってもらいたいですね。
そのためにこうやってPR TIMESを活用したり、SNSでの発信も積極的にしています。
(Twitterアカウント:https://twitter.com/nature1118_life )山で働く人のために、僕らの存在を知ってもらうことが大切なんです。
ー実際に前より存在を知られているのですかね?
会社を設立してから今までの4倍ほどお仕事の依頼も入ってきているんですけどね。でもまだまだ山のプロはたくさんいます。今後は「山屋で働きたい」と言ってくれている人たちそれぞれに合った、柔軟な仕事を提案できるようにしていきたいです。
山は「誰がどの山を持っているのか」とか「自分の山をどうやって管理していくのか」など様々な課題を抱えています。その問題の根源は、人の山に対する関心が薄いことだと思います。
今は登山やキャンプブームで前より山に関心のある人は増えているのですが、長期的に見たときにもっと山に魅力を感じる人を増やさないと解決しない課題がたくさんあります。
ーどうやったら山に関心を持ってもらえるのですかね?
山の仕事が日本で暮らす皆さんの生活に関わっているということを知ってもらいたいです。そのために山屋に出来ることがあるか分かりませんが、まずは会社の存在を多くの人に知ってもらって、日本中の山で「山で働きたい人」が働けるようになったら嬉しいです。
ー山屋の存在によって山で働く人の存在を知ってもらうんですね。
はい。「山に全く関心がなかった」という人にも山屋を知ってもらい、山の魅力を伝えられたら最高ですね。いつかそういう人と一緒に働きたいです。
(秋本さんが撮影した山の写真)
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