救える命は救いたい。コロナ禍で死産が増加するネパールで奮闘する元看護師・駐在員の想い
特定非営利活動法人ADRA Japanは、世界120か国以上に支部を持つ世界最大規模のNGO、ADRAの日本支部です。医療体制が脆弱なネパールでは、保健医療環境の改善や人材育成、基礎的な衛生意識の啓発活動に取り組んでいる中、新型コロナウイルスの感染拡大が起きました。守れていたはずの命が守れなくなった現実を目の当たりにしたネパール駐在員の大西由香の想いをお伝えします。
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大西 由香:小児科看護師、海外青年協力隊、大学院を経て2018年4月にADRA Japanに入職。海外事業課ネパール事業担当として現地に駐在し、ネパールの中でも子どもの死亡率が高い南西部のバンケ郡で、新生児・小児保健事業に取り組んでいる。
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大西が所属するADRA Japanは、ネパールでは1989年より活動をスタートしました。
近年では、妊産婦や新生児の死亡率を下げるための活動等を継続しており、大西は2019年2月よりネパールに駐在して、子どもの死亡率が特に高い南西部のバンケ郡において保健医療施設の整備や啓発に取り組んでいました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにネパール政府が決断した2020年3月のロックダウンを受け、当時の団体の方針により大西は後ろ髪をひかれる思いで一時帰国。行動規制により自由に動けなくなった事業地でも、活動を一時中断せざるを得ない状況になりました。
ロックダウン宣言時には国内感染者数はまだ2名だったものの、ネパール国内の感染者数は徐々に増え、インド国境に位置する、大西の活動地であるバンケ郡でネパール初の感染爆発が起こりました。
マスクや石鹸、防護服や医療機器など、ありとあらゆるものが不足する状況を受けて大西は、支援を届けるための資金集めを日本で開始。多くの方の賛同を得て、マスクや防護服などの衛生用品、PCR検査キットや検査技師のトレーニングのほか、感染防止策の啓発活動の資金として、計100万円相当の支援を次々に届けていきました。
そしてその後、ネパールでの感染状況が落ち着く中、大西自身も、2021年1月にネパールに戻ることができました。
ところが、小児保健事業の次の展開に向けて準備を進めていた2021年4月、ネパールは第1波をはるかにしのぐスピードで感染者が急増し、高い死亡率を記録している第2波に突入します。
再び厳しい行動規制のもと、病院での退院率の低下、隔離施設は2か月以上も満床状態、保健医療従事者は働き詰めになり自らも新型コロナにかかりながら感染者をケアする状況になりました。
そして大西はネパールの新型コロナ第2波について、「患者が退院しなくなった」という認識をもつようになります。
大西の活動するバンケ郡にあるベリ病院では、第1波のときには入院しても95%が退院していたのに対し、今年の第2波では退院率は70%台に落ち、入院した人の20%以上の人が亡くなるようになったからです。
ネパールは日本と違い、国全体の人口が若いにもかかわらず重症化するケースが増え、大西とともに、新生児・小児保健事業に携わってきた現地の建設業者のメンバーも、まだまだこれからという30代で新型コロナの犠牲となりました。
また新型コロナウイルスの影響が長引くにつれ、改善傾向にあったネパールの死産率(流産や出生時の死亡)が悪化しました。
2015年の段階では出生1000人あたり18人だった死産率は、さまざまな努力により2019年のロックダウン前の時点で1,000人当たり14人まで改善していました。ところがロックダウン中はこの数字が1,000人中21人にまで増えてしまったのです。
新生児の死亡数も1,000人中13人だったのが3倍以上の40人に急増しました。
大西は、ロックダウンの合間にネパールの母子保健分野において大切な役割を果たしてる女性地域ヘルスボランティアへのトレーニングにも取り組み、感染防止に関する知識や、コロナ禍でも妊産婦さんが健診を受けに行きやすいようにマスクや消毒液を渡す方法を伝えたほか、子どもの栄養状態を簡単にチェックできる方法の研修を行いました。
また、まだまだ必要とされる支援活動のための資金を集められるよう、SNSでの発信を
増やしたり、日本人に向けたオンラインイベントに登壇したりするなどしてきました。
今、大西が一番もどかしいと感じていることは、第1波のときよりも状況ははるかに悪化しているにも関わらず、資金が集まりにくくなっていることです。
2021年4月以降に集まっている資金は6月30日現在、約20万円。大西はこの範囲内で、廃校等を利用している隔離施設や自宅療養の場面で重症化の兆候を早く見つけられるパルスオキシメーター(1つ 約2,850円)や、不足している医療用マスク(100枚 約700円)、手袋(1箱 約950円)、消毒剤(1本 約500円~800円)を支援する予定です。
ほかにも、今後大西が必要だと考えている支援は大きく4つあります。
①重症の患者さんを治療する医療環境をよくするためのベッドサイドモニター等の医療資機材の支援
②軽症の患者さんが隔離されている場所への酸素濃縮器等の医療資機材の支援
③自宅療養の患者さんのためのホームケアキット(パルスオキシメーターや非接触体温計、マスク等のセット)の支援
④新型コロナウイルス感染予防対策に関する啓発と、感染に気を付けながら産前産後健診や予防接種にかかれるようマスクの配布と啓発活動
特に4番の活動は、死産を減らしたり、子どもの死亡率を下げたりするために欠かせない支援です。
これまで関係性を作ってきた女性地域ヘルスボランティアのメンバーと協力し、新型コロナウイルスから身を守りながら、ほかの保健医療サービスにかかることの重要性を伝え、守れるはずの命を守りたい。その想いが込められています。
この実現のために、Yahoo!ネット募金や、寄付金控除の対象となるADRA Japanへの直接のご支援のもと、活動を展開していきたいと考えています。救える命は救いたい。第3波も懸念される中、大西の奮闘は続きます。
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