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都内の妊婦さんに2人に1人が登録する、日本交通「陣痛タクシー」サービス。累計配車件数10万件超を実現したその取り組みとは。

著者: 日本交通株式会社

都内最大手のタクシー会社・日本交通株式会社(以下「日本交通」)が提供するサービスに「陣痛タクシー」があります。妊婦さんが陣痛時・通院時に簡単にタクシーを呼ぶことができるもので、2012年に都内初のサービスとしてスタートしました。今では都内の妊婦さんの2人に1人が登録(*1)し、今や出産時に欠かせないサービスとなっています。


このサービスがどのように誕生し、運営されているのか、無線センター副センター長 石原鐘浩、カスタマーサポートデスク 山中直美に話を聞きました。




都内初のサービスとして開始され、10年で10万台を配車。


石原:日本交通は全国約8,500台のハイヤー・タクシーを運行する、タクシー会社最大手です。東京都内で稼働する約5,000台のタクシーで展開するサービスの1つが陣痛タクシーです。事前に妊婦さんのご自宅、出産日、病院などをご登録いただくことで、陣痛時に慌てず、簡単にタクシーが手配できます。

2012年5月13日「母の日」に都内初のサービスとしてスタートし、まもなく丸10年となり既に10万台以上のタクシーが手配されています(*2)。今では子育て世代のお客様ではすっかり定着しています。



山中:陣痛タクシーにご登録いただくと、スムーズにタクシーが手配できます。専用回線に電話をいただくとオペレーターが24時間365日、他のお客様よりも優先してタクシーを探します。ご登録いただいた行き先は乗務員へも共有され、ご乗車時の道案内も不要です。

また日本交通の特徴として、全乗務員が入社時に助産師監修の『妊産婦搬送時の注意事項と対応』講習を受講しています。タクシー5,000台全車対応なので、近くのタクシーが素早くお迎えに行けます。

乗車後もオペレーターが車両の動態(GPS位置情報)を監視して、万が一の際は迅速に代車手配します。



石原:陣痛タクシーのサービスは、日本交通での開始をきっかけに他社にも広がりました。日本交通1社で囲い込むものではなく、業界全体で取り組むべき社会貢献活動に1つだと考えています。



既存の仕組みを再構築して、課題を解決したサービス。


石原:タクシーは以前から妊婦さんの送迎を承っていましたが、陣痛時でもご利用できることを知らない方、「断られるのではないか」と不安に思われている方が多くいらっしゃいました。


一方で、日本交通では2000年から無線配車の顧客登録システムを導入しており、お客様のお迎え場所や行き先を事前登録し、タクシー乗務員へ伝える仕組みが既にありました。


陣痛タクシーは実は新しく生み出されたものというよりも、これら既存のものを組み合わせ、再パッケージして誕生したサービスなのです。そこに分かりやすいネーミングをしたものなのです。なので、システムやオペレーションに大きな変更をすることなく、すぐにサービスをスタートさせることができました。


「陣痛タクシー」というネーミングにより、タクシーのご利用方法が具体的に見えるようになり、認知の向上につながりました。タクシーは20年以上にわたってマーケットが縮小していて、どのようにして生き残るか、活性化が叫ばれています。陣痛タクシーによって移動インフラとしての存在意義を示すことができたと思います。


ちなみに、ネーミングはシンプルに「陣痛タクシー」としましたものの、一部のスタッフには「あまりにストレート過ぎたのではないか?」と心配する声もありました。しかし妊婦さんたちには分かりやすかったようで、結果として、すんなり受け入れていただき、杞憂に終わりました。


山中:陣痛タクシーは素早くタクシーを手配する必要がありますので、一番近くにいる乗務員がいつでも向かえる体制であることが重要になります。なので、特定の車両や乗務員が担当するのではなく、全乗務員で対応することとしました。しかしながら妊婦さんの送迎は以前より行っていたとはいえ、改めてサービスとしてご案内するとなると、乗務員さんの中には「到着遅れをしないだろうか」「何事もなくお送りできるだろうか」と不安になる方が出てきました。そこでサービス開始にあたっては全乗務員が助産師監修の講習を受講することとし、これは今でも入社時研修として継続しています。



石原:講習では出産に関する基礎知識を学ぶほかに、妊婦さんは足元が見えにくい状態なので、乗降時に細心の注意をすること、走行中は悪路による衝撃はもちろん、急ブレーキ・急発進・急ハンドルなどを避けること、時には「大丈夫ですよ」「あと〇分で到着しますよ」などお声掛けして緊張をほぐすことなど、妊婦さんに寄り添った運行を心がけるように教えています。陣痛タクシーと言っても、乗務員は規則として原則お客様に触れることができませんので、何か特別なことを行うわけではなく、あくまでも安全なタクシー運行をするのみです。基本的にはいつも通りの安全な運行を行えばよいことを、しっかり理解してもらっています。


山中:助産師監修の講習受講は、乗務員に新サービスの存在を認識させ、運行時の心配や緊張を和らげることにもなりました。さらにはご利用の妊婦さんの安心にもつながりました。


石原:加えて、タクシー注文を受けて配車指示を出すオペレーター側でもお客様や乗務員さんの不安を払拭するための取り組みがなされました。タクシーを手配した後も、GPSで当該車両の動きを監視し続けることがそれにあたり、事故やトラブルの際に迅速にサポートできる体制を作りました。



過去には車内出産も。お客様も乗務員も喜びにつながる。


山中:おかげさまでサービス開始から好評で、毎月コンスタントに約1,000件の配車があります。特に2020年に緊急事態宣言が発出された時には、一般のタクシー需要が7割減となった中でも、陣痛タクシーはコロナ前と変わらないご利用件数が続き、安心して移動できるエッセンシャルサービスと認識いただけました。

2021年には空気清浄機、空気清浄度モニター等を搭載した「ニューノーマルタクシー」車両へと進化し、さらなる安心を追求しています。




石原:日本交通には2011年スタートした、お子様向け送迎サービス「キッズタクシー」がありますが、陣痛タクシーご利用のお客様から産後の退院時、お宮参りでのお申し込みが増え、想定外の相乗効果が生まれました。


2013年には東京消防庁より救急車の適正利用に関する感謝状をいただきました。陣痛時に救急車を呼ぶのではなくタクシーを利用することで、救急車を必要とする人たちを助けることにつながったとのことです。2017年には、女性の活躍を支えるサービスとして「第10回 ペアレンティングアワード コト部門」「第2回 女性のあした大賞 サービス部門 大賞」をいただきました。


お客様から直接お礼の手紙をいただく機会も増えました。乗務員にとっては非常に緊張する業務なのですが、車庫に帰れば誰かの役に立ったことへの喜びに変わります。仕事へのモチベーションとなり、プライドも醸成されてきたのも、副次的な効果だと思います。



山中:年に数回は、タクシー車内での出産の報告があります。多くの場合は同乗されているご家族の方が車内から病院へ連絡し、病院到着後すぐに医師へ引き継ぎ出産に臨みます。


過去に、病院到着後に先生が出てくるまでの間に、お客様が車内で出産されたことがありました。その時の女性乗務員は機転を利かせ、寒いだろうと赤ちゃんを直ぐにバスタオルで包み、抱きかかえて先生を待ちました。制服は汚れてしまいましたが、本人は気にすることなく「感激しました!汚れたシャツは感動のまま記念に残したい」と自分事のように喜んでいました。私たちは様々なドラマをお客様からいただいています。



タクシーの本質は「人」。心豊かな社会づくりにタクシーが貢献したい。



石原:タクシーは、単なる移動サービスではないと感じます。タクシーは人と人が出会う場、大切な人と出会う手段であり、そこに生まれる人の温かさがあるように思います。

自動車の自動運転技術の開発が進み、将来的にはタクシー乗務員は必要なくなるのではないかと言われています。しかし、私たちは決してそんなことはないと考えています。AIでは創り出すことのできない、人によるホスピタリティは、これからもっと求められるはずです。そこにタクシーの真価があるのだと考えています。これららも陣痛タクシーを大切にしていくことで、地域社会から信頼される移動インフラへと成長を続けていきます。



*1 東京都福祉保険局 市区町村別データによる2018年東京23区・武蔵野市・三鷹市の出生数 80,106人に対して、2018年1月~12月の登録者数 44,714人


*2 プレスリリース参照 

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■日本交通株式会社について

創業94年(1928年創業)、グループ売上高で日本最大のハイヤー・タクシー会社です。約7,000台のタクシー(業務提携会社を含む)と約1,600台のハイヤー・運行管理請負車両、10,000名以上の乗務員が、東京・大阪を中心とした各地の公共交通を支えています。独自の社内資格・キャリアパス制度による人材育成を通じて、「拾うではなく、選ばれるタクシー」として、Japan Hospitality とともに顧客満足を追求しています。さらに日本初となるスマートフォン配車アプリや、都内初となる妊婦送迎の「陣痛タクシー」、キッズ・観光・サポートの専門サービス「EDS(エキスパート・ドライバー・サービス)®」、「タクシーデリバリー」サービスなど、Mobilityに+αの価値を提供しています。


■「陣痛タクシー」サイト https://www.nihon-kotsu.co.jp/taxi/use/jintsu.html

■「キッズタクシー」サイト https://www.nikkotaxi.jp/kids

■日本交通のタクシーについて https://www.nihon-kotsu-taxi.jp/

■日本交通のコロナ対策について https://www.nihon-kotsu-taxi.jp/covid/

 




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