プラスチック使用量76%減!紆余曲折12年、「消臭元」のチャレンジ
小林製薬株式会社(以下、小林製薬)は4月13日、芳香・消臭剤の「消臭元」ブランドから新製品「消臭元SAVON(サボン)」を発売する。本製品最大の特徴は、大容量リキッドタイプの「消臭元」ブランドとして1995年の発売以来初めて、詰め替えができる仕様になっている点だ。「消臭元」ならではの製品構造の特徴から、詰め替え対応品の開発ハードルは高かったが、10年以上の歳月をかけこの度発売するに至った。
詰め替えがまだ浸透していない市場においてチャレンジングな取り組みとなる本製品。開発に携わった担当者たちに、開発の経緯や工夫点、製品にかける思いについて聞いた。
(左)「消臭元SAVON シャンプーしたて ほのかなブルーソープ」、
(右)「消臭元SAVON 洗濯したて ふんわりフローラルソープ」の本体と詰め替え用
よりエコな製品開発のため、リサイクルセンターにまで足を運んだ
お客さまにとっての“あったらいいな”と、環境配慮の両方をカタチにしたエコな製品をもっと増やしていきたい。この強い想いが、今回の「消臭元SAVON」開発に至った大きな動機になっている。
製品の最大の特徴は、大容量リキッドタイプの「消臭元」ブランドとして初めて、詰め替えができる新仕様を開発したところにある。使用後に毎回捨てていた本体容器を再利用し、消臭フィルターを取り替え新しい液体を入れるだけで使える。その開発にいたる苦労や紆余曲折は後述するとして、本体容器と詰め替え用を購入・併用するだけで、プラスチック使用量を約76%※1減らせるエコ仕様になっているのだ。
※1 本体容器を買い替えて使った際のプラスチック使用量と比較
「消臭元SAVON」開発担当の一人である技術開発部の石山は、石油由来のプラスチック使用量の削減について、「抜本的に取り組む必要があった」と話す。
「SDGsの時代の要請に加え、年に数件程度ですが、お客様から『本体容器を捨てることに罪悪感がある』、という声も上がっていたんです。小林製薬では2021年から、大容量リキッドタイプの『消臭元』全ラインナップで再生プラスチックを使った本体容器に順次切り替えてきましたが、一方、そもそも本体容器を捨てない仕様にするという課題は残っていて、どうにかしなければいけないと長年思っていたんです」。
また、本体容器の材料にポリプロピレンを採用したこともエコ対応として挙げられる。ポリプロピレンは一般的に分別回収や再加工がしやすく、日用雑貨や園芸用品など、様々な用途にリサイクルが可能と言われている素材だ。
「捨てられたゴミが実際にどうやってリサイクルされていくのか、リサイクルセンターに見学しに行ったことがあるんです。お話を聞いて、ポリプロピレンはリサイクルにまわりやすい素材であることが改めて確認できました」。
さらに消臭フィルターと容器部分を分別しやすい仕様にすることで、「消臭元SAVON」はよりリサイクルと相性の良い製品となった。
手を汚さず、直感的に詰め替えられることが大事
詰め替え対応品の必要性は認識しているものの、実際に「消臭元SAVON」はどのような仕様にしたらよいのだろうか――。開発にあたって重きを置いた製品の方向性について、技術開発部の肖(ショウ)はこう話す。
「まず、消臭フィルターを取り替える時にお客さまの手が汚れない仕様にすることは絶対条件だなと。加えて、『説明書きを読まなくても直感的に使える』『エコの観点からできるだけプラスチックを捨てない仕様にする』といった点も外さないよう、さまざまな案を検討しました」。
時には手描きの設計図や段ボールでの試作を繰り返しながら、
イメージを具現化していった
モニター調査と試作を繰り返し、上がってきた声を丁寧に拾いながら、「消臭元SAVON」の仕様を決めていった。
たとえばモニター調査を実施していた時、一人の使用者の消臭フィルターを取り替える様子を見ると、フィルターから遠い部分を持っている様子がうかがえた。聞くと、フィルターに触れたくないので、できるだけ離れたところを持ち、取り替えていたのだという。
開発の現場では、こうした担当者が気づきにくい生の声や視点を大事にしながら検討を進めていった。結果的に消臭フィルターに従来品の1.3倍※2となる幅広タイプのものを採用することとなり、悪臭をよりキャッチしやすい構造という消臭剤としての価値を高めることにもつながった。
※2消臭フィルターを使用している「消臭元」シリーズ比
”マルチ消臭”一番のネックは消臭剤と香料の相性だった
「消臭元SAVON」は芳香・“消臭剤”なので、その消臭機能についてもこだわりがある。体臭や料理臭、トイレ臭など家庭内のさまざまな悪臭に対応した「マルチ消臭処方」を謳っている。
しかし、一口にさまざまな悪臭に対応するといっても、それを実現することは難しい。研究開発の辺(ビョン)によれば、一番のネックは消臭剤と香料の相性だったという。
「相性が悪いと、香りが変わったり液が変色したり、そもそも消臭効果が半減したりするんです。そこでまず10種類の消臭剤でそれぞれ配合量の検討を行い、安定性のあるパターンを見つけました。そこから、実際にさまざまな香料やその他成分と混ぜながら、相性をひとつひとつ確認していきました。全部で30パターン以上試しています」。
通常は製品化まで約1年のところ、事前検討に約1年、さらに製品化まで約1年かけ、ようやく洗いたての香りでさまざまな悪臭に対応ができる「消臭元SAVON」ができ上がっていったという。
12年という月日が、「看板製品に手を加える」仕事の大きさを物語る
詰め替えている様子。検討と試作を重ね、ようやく満足のいく仕様に至った
そもそも「消臭元」シリーズの詰め替え対応品の開発は、2011年頃から社内でたびたび検討されてきた。しかし、ニーズやコスト、技術的ハードルの高さの問題などから、実現までにはなかなか至らなかった。
大きな動きがあったのは2018年。
技術開発部の井實(いじつ)によれば、当時社内でも「プラスチック使用率の高い『消臭元』をなんとかしないと」、という機運は高まっていたという。また、他社のエコ製品にも刺激を受けていたと話す。
「エコに特化した他社製品を見た時、大きな衝撃を受けたんですね。“中途半端な”エコをしていないというか、環境に優しい上に優れた設計物を出してきた。非常にかっこよくて、ハイレベルな仕事をしているなと」。
そこで、関係部署も交えて議論を重ね、詰め替え対応の「消臭元」開発にあたって大切にしたい“6つの約束事”を決めたという。「デザイン性(使いやすさ)」「効果の持続性」「シャバシャバ(振ると香りが復活する仕様)」「香りの強さを調節可能」「ワイド消臭フィルター」「400mlの大容量」という6項目だ。「消臭元」の詰め替え対応品を作るなら、この全てをしっかり満たした製品を作っていこうと、プロジェクトが走り出した。
「消臭元」の特徴である「シャバシャバ」と「香り調節」
しかし、実現までの道筋はなかなか見えなかった。特に、「消臭元」の大きな特徴である「シャバシャバ」を維持しながら詰め替えもできるようにするには、消臭フィルターの出し入れが難しくなるなど、いくつもの高いハードルが存在し、最終的にこの時も開発を断念せざるを得なかった。
しかし、この時は単に断念したわけではなかった。その後につながる、よりエコな製品を目指す「消臭元」ブランドリニューアル方針の大枠が決まったのだ。それは、「現状、ファンの多い『消臭元』の現行品を詰め替え仕様に切り替えるのは難しい。そこで、現行品は再生プラスチックで環境対応しつつ、『シャバシャバ』といった仕様は変えずに引き続きお客様にご愛用いただく。一方、詰め替え対応品の開発はあきらめない。現行品とは別コンセプトで検討していく」というものだった。
そうして2021年、大容量リキッドタイプの「消臭元」全ラインナップで本体容器を再生プラスチックに切り替えることに成功。そしてこの度、シャバシャバはせずに詰め替え対応を優先した新仕様の「消臭元SAVON」を、現行品と併売という形で世に送り出すことに成功したのだった。
ここに至るまでにかかった月日は実に12年。「消臭元」という看板製品に手を加えるということは、それだけ大きな仕事だったのだ。
井實は2018年当時のことを振り返り、この仕事のやりがいについてこう話す。
「それこそ製品化までには至りませんでしたが、実は、とても楽しかった思い出として残っているんです。『消臭元』をエコ仕様に切り替えるため、メンバーとさまざまな議論をしました。その雰囲気が、なんというか、“歯車が噛み合っている感じ”だったんです。自分一人ではできない仕事をやっている感覚があって、すごく達成感がありました」。
「消臭元SAVON」を先駆けに、詰め替え可能な製品の普及に挑戦
今回は二本柱での展開となったが、将来的には全ての「消臭元」で詰め替えできる仕様に移行させることも検討しているという。ブランドマネージャーの米田はこう話す。
「『消臭元』と一口に言ってもさまざまなラインナップがあり非常に高いハードルではありますが、環境配慮のためにもやがては全ての『消臭元』で詰め替えができるようにしていきたい気持ちがあります。『消臭元SAVON』の発売は、詰め替えがまだまだ浸透していない大容量リキッドタイプの芳香・消臭剤市場においてチャレンジングな試みなので、正直どれくらい受け入れてもらえるかわかりません。しかし、この先につなげていくためにも、『消臭元SAVON』は成功させないといけないと思っています」。
発売までに10年以上の月日をかけ、多くの社員たちによる試行錯誤の末に生まれた「消臭元SAVON」。詰め替え可能な「消臭元」の足がかりとして、市場への浸透を目指していく。
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