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【スタートアップインタビュー】スタートアップとリコーが生む相乗効果――全国の営業網を活かし販路急拡大へ

著者: 株式会社リコー

TRIBUS 2021で外部審査員特別賞をダブル受賞したスマートショッピング。「モノの流れを超スマートに」をビジョンに掲げ、IoT重量計を使って在庫管理・発注を自動化、さらにリアルタイムな実在庫の見える化で工程カイゼンを進めるDXソリューション「スマートマットクラウド」を開発し、販路を急拡大中のスタートアップだ。そんな勢いのある企業とリコーが連携したら、どんな相乗効果が生まれるのか――。スマートショッピングの創業者で代表取締役の志賀隆之氏、TRIBUS期間中に伴走したカタリストの二人に話を聞いた。

【インタビュイー】

志賀隆之氏 株式会社スマートショッピング 代表取締役

一森一修 TRIBUS 2021カタリスト、リコージャパン株式会社 人事・コーポレート本部コーポレートセンター監査役サポート室

西中裕一朗 TRIBUS 2021カタリスト、株式会社リコー 経営企画部事業開発室


営業でレバレッジを


――TRIBUSに応募したきっかけを教えてください。

志賀 2018年10月に主力商品「スマートマットクラウド」の提供を始めました。特に製造業と医療業界の2つの業界に対してこの商品をどう広めていくかを検討していた時に、TRIBUSアクセラレータープログラム募集開始の話をいただきました。「共創して一緒に事業を作っていきましょう」という主旨が強調されていて、他のアクセラレータープログラムとは違った印象を受けたので、通るか分かりませんでしたが応募させていただきました。

目的は、スマートマットクラウドの販路をどう広げるか。リコーさんはリコージャパンさんを始め、全国津々浦々まで強い営業網を持っていらっしゃいます。そして、製造業や医療業界にも強く、リコーRFID*1ソリューションなどの在庫管理ソリューションを持たれているので、そうした面で協業できないかと発想しました。

*1 RFID:RFタグを利用し、電波や電磁波を使って自動識別・管理する仕組み。https://industry.ricoh.com/rfid


――実際に応募されてどうでしたか。

志賀 当初の発想の通りでした。組織が大きく、全国に営業網を持っていらっしゃる。製造業など業種別のカスタマーへのリーチ力もすごいと実感しております。弊社はスタートアップなので営業も10名ほどの所帯。数百~数千万円の売上なら大丈夫なのですが、数億~数百億円のような売上規模ですと、営業人員をどれだけレバレッジさせていくかを考えなければなりません。その時にリコーさんは一番頼りになる存在になっています。

スマートショッピング代表取締役の志賀隆之氏


――カタリスト(伴走者)のお二人同士は、プログラム参加前から面識があったのですか。また、本業ではどういった仕事をされていますか。

西中 面識はまったくありませんでした。それぞれがカタリストに応募し、TRIBUS2021に参加される予定のスタートアップ企業のリストから一緒に議論したいと思う会社を選んで、たまたまスマートショッピングさんに魅力を感じて共にやることになりました。一森さんとも完全に初めましてで、最初の待ち合わせの時は、お互い会ったことがないのでマッチングアプリのような状態でした(笑)。経歴上もまったく接点がなかったので、結果としては自分の社内のコネクションが広がりました。本業は、カタリストに応募した時には工場の生産管理の仕事をしていましたが、現状はリコー本社の経営企画に異動して全社戦略の立案に携わっており、ご縁があって再びスタートアップの方々と事業推進するような業務も担当しています。

一森 カタリストに応募した当初は、大手企業向け営業の管理グループでM&A事業などを担当していました。ただ、私もその後に異動となり、内部監査室で監査役になりました。


――スマートショッピングさんのどこに魅力を感じたのですか。

一森 ソリューションとしての分かりやすさ。モノの重さを量ってデータを出すという、一見するとすごく単純で分かりやすいからこそ汎用性が高く、弊社の営業さんも見せやすく、話しやすい点が決め手でした。リコーグループとの相性の良さや展開のしやすさを感じ、一緒に仕事をしたいと思いました。

西中 アクセラレータープログラムの実働期間は約3か月なので、生産管理業務に関連する商材や自分が慣れ親しんでいるようなサービスが良いなと思っていました。スマートマットは在庫管理の仕事とフィットしたことに加え、ピッチを見ていた中で純粋に志賀さんのプレゼンテーションが一番面白そうとも感じました。人としての考え方などが合うことも活動の重要な要素になると思ったので、フィーリングも大事にしました。


大事なのは、最初の目標設定


――アクセラ期間の3か月は、どういうステップで進んでいったのですか。

志賀 最初にゴールを設定しました。1つは一緒にプロダクトを作る、もう1つは営業にテーマを絞りました。その2つを何とか形にしたいなと思いましたが、プロダクトの方は弊社商品とのクロスセルがあまりフィットせずに、残念ながらうまくいきませんでした。一方で、営業の方は複数の営業拠点でニーズがあると確認でき、話が進んでいきました。リコージャパンの方を対象にプレヒアリングや勉強会をさせていただいた時に、「これは売れそうだ」などのフィードバックがあり、TRIBUSの最終成果としても発表しました。ターゲットは、製造業の中小企業がメインでした。「リコーと取り組んだら、何かが生まれるかもしれない」みたいな漠然とした目標設定にしてしまうと自己満足で終わってしまいそうでしたので、しっかりとリコージャパンさんの営業の方に動いていただくことをゴールの1つとして設定できたことは、今になって振り返ると良かったと思います。

西中 ありがたいことに2021年10月28日のピッチを見て関心を持ってくれた方が社内に結構いました。カタリスト側から動かなくても山ほど問い合わせが来る時期があったほどで、その絞り込みも大変でしたね。API連携や社内の間接材購買システムとの連携など、問い合わせの内容も多岐に渡りました。

TRIBUS 2021カタリストの西中さん


一森 どこの組織が何をしているか、ロジックツリーのような形で相関図を作りました。この部署ならTRIBUS終了後に展開が進みそう、反対にここは案件ベースのテスト導入だけで終わってしまいそうなどと明確化して議論の対象となる相手先をどんどんクリアにしていき、具体的なアクションにつなげていきました。

西中 リコージャパンの中には、もともとスマートマットクラウドを知っている社員もいました。スマートショッピングさんに過去に問い合わせをしている方もいたので、リコージャパン社員から受けた問い合わせリストからフィルタリングをかけて、「ここは確度が高いね」みたいなことを洗い出していく作業もしました。

志賀 こうした企業内のあらゆる部署と接点を持つ経験はTRIBUSに参加しなければ得られません。外からの立ち位置ではリコーグループの各組織の詳細な役割などは分かりませんし、現場の方にあそこまで自分事として動いていただけることはなかなかないことですから。


――2021年11月から約3か月の実働を経て、2月17日の成果発表会「Investors Day」となりました。発表当日はどんな心境でしたか。

志賀 リコーの山下社長(*2021年度アクセラプログラム時点)を含めて実際にオーディエンスの方などがいる場だったら話は別かもしれませんが、オンラインでしたのでそこまで緊張しませんでした。プレゼン後、山下社長から「中小企業の製造業などでいけそう。(商品が)分かりやすいね」といった言葉をいただきました。外部審査員特別賞を2つ受賞させていただき、カタリストのお二人のお陰もあって、思った以上の結果を出せたかなと思っています。

西中 発表自体は大きな課題と捉えていませんでした。志賀さんは話すのが得意な方だと思っていたので心配していませんでしたし、アクセラレータープログラム期間に一定の成果を上げることができたという実感がありましたので。私たちカタリストは応援ビデオを作ったりしつつ、落ち着いて当日を迎えました。

一森 事前に調整もしていましたし、大丈夫だろうと。あとは、山下社長を含めた社内外の審査員の方々に響いてくれるかというところでした。

TRIBUS 2021カタリストの一森さん


――ある意味で、思った通りの結果が出た。

西中 さすがにあんなにいっぱい賞をもらえるとは思っていませんでした(笑)

志賀 思わなかったですね(笑)

西中 在庫を“体重計”で量るというスマートマットという商品のアイデアは、単純なようでいて意外と思いつきません。モノが載って、重さが分かって、そのデータが飛んでいく。シンプルですよね。それが分かりやすく、かつニーズにも刺さっているので、有効性の確認ができたのだと思います。


アクセラ期間から約1年、商品化に結実


――成果発表後、どういった商品化につながったのでしょうか。

志賀 成果発表では、全国の営業の方が興味を持っているから売れそうだ、という想定のところまででした。そこから1年ほどが経ち、リコージャパンの展開サービスの中で注力領域の1つである製造業の中小企業向け「スクラムパッケージ」の1商材にスマートマットクラウドを選んでいただきました*2。ちょうど2023年4月から全国展開が始まる予定です。

*2 https://www.ricoh.co.jp/solutions/list/ricoh-inventory-control


商品化に至るまでは、まずは社員の方に知っていただくために、リコージャパンのいくつかの拠点で社員向け勉強会を開きました。その後は、リコージャパンのお客様向けクローズド展示会のようなところに出展して、実際にお客様に営業させていただきながら、営業さんも「これはいけるぞ」みたいに手応えを感じられていったという経緯です。後半の半年には、上市に向けて資料なども整えていきました。

西中 カタリストとしてスクラムパッケージ展開(商材化)の部分に直接は関わっていませんが、リコージャパンの方々が売るとなると、お客さんとの信頼関係などもあり、事前に売れる見込みが立っていないと扱ってもらうのは難しい面があります。実際にアクセラレータープログラム期間中もその点では苦労がありました。アクセラ後にていねいに議論を重ねて、今回のスクラムパッケージ化によりいよいよ販路を広げていくフェーズに入った形ですね。


――そもそもですが、スマートマットクラウドはどんな経緯で誕生したのでしょうか。

志賀 前職はサイバーエージェントで広告事業をしていて、共同代表の林は前職がアマゾンでECを担当していました。そこで、ECセグメントで広告をマネタイズできるような事業に照準を合わせ、“買い物の未来を作ろう”と最初に考えました。そういった経緯もあり、今の社名になっています。「買い物の未来?」と考え、水やシャンプーなど定期的に補充する「労働に近い買い物の未来とは?」と発展させ、自動で商品を補充してくれるような世界が将来、訪れるのではないかと発想しました。ただ一言で自動補充といっても、実際にはイレギュラーなことが多いので、ソフトウェアだけで完結させることは難しいかもしれないなと。それなら重さを量って、水がなくなりそうになったら自動で届けるみたいなサービスならできそうとなり、その時にちょうど技術検証のための補助金の話も受けていて、作ってみることになりました。作ってみると、実はBtoCよりBtoBの方がニーズが強そうと分かり、先にBtoBのスマートマットクラウドを事業化することになりました。当初の予定とはまったく異なり、考えながら突き進んでいったら行き着いた感じですね。


――商品から得られる消費データの活用にも着目されています。

志賀 消費データはなかなか見えにくいのが実情です。在庫を手動や目検で数えたり、ラインを止めないように多めに在庫を用意したりするなど、モノの流れはブラックボックスの部分がまだまだ多い。そこで、リアルタイムに実在庫を追ってデータでモノの流れを見える化することによって、全体最適化につながる計算ができるようになります。消費データによってきれいで滑らかなモノの流れを作れるようになるので、そうした部分で貢献できればと思っています。


最短で成果の上がるアクセラレータープログラム


――カタリストの経験を通じて、本業に活かせる“気づき”もあったと思います。

西中 スタートアップの皆さんは想像以上にアグレッシブでした。特にスピード感。弊社は組織が大きいので、いろいろなプロセスで時間がかかることが多い。情報共有ツールもSlackを活用したことで、ハイレスポンスかつシームレスなやり取りを経験できたことも大きかったです。リコーグループの内部だけで閉じてしまうと、どうしても思考が固まってしまったり、それがふつうだと思ってしまったりしますので、スマートショッピングさんのように勢いのある会社の方と話すことによって、自分たちの“ふつう”もアップデートされるので、外の方と関わることはかなり重要だと思いました。

一森 ケースによりますが、モノを製品化するスパンは例えば昔は1年ほどだったのに、今回スタートアップさんと関わってみて、数か月の期間でタイムリーに進めていくといったことが当たり前に行われているということを体感できました。また、社外スタートアップの伴走者というこれまでと異なる立場でリコーグループに向き合うことで、例えば「どうやっているのか」「何が分からないのか」など改めてリコージャパンの現場の生の声を聞けたことも、今後の糧になりました。


――最後にTRIBUSに参加したい方へのメッセージを。

一森 カタリストとして参加されるのであれば、自社だけでなくグループ会社まで視野が広がり、人とのつながりも増えます。スタートアップ企業さんは、時間軸が全然違います。それを体感することで、自分たちの仕事にも活かせるはずです。あとはアクセラレータープログラム期間は3か月と短いので、早めにターゲットを決めて進めないと、あっという間に時間が過ぎてしまうと考えていた方が良いと思います。

西中 社内の方はTRIBUSを積極的に活用した方が良いと思います。内向きだけの仕事ですと見えるもの、考えられるものに限界があります。リコーグループとしてのこれからの姿を考えた時に、外の方と一緒に何かをやることは絶対条件になります。共同開発、社外のパートナーの商品を売る、アイデアを取り入れてプロダクトと連携するなど、パターンはいろいろありますが、外を見ないと、世の中でいま何が求められ、何が伸びていて、逆に何が伸びていないかなどが分からなくなってしまいます。外を見る習慣づけのためにも、無理やりでもTRIBUSに参加し、スタートアップの方と関わって一緒に伴走すれば、意識を変えられると思います。たとえ本業が忙しくても、とても良い経験になるはずです。

志賀 いろいろなアクセラレータープログラムに参加させていただいた中でも思うのは、カタリストという制度の独自性です。カタリストさんに一緒に伴走していただけることがすごく特殊ですし、良い制度だと思います。当初の想定よりも高い成果を上げられているのは、この制度によるものが大きかったと感じています。TRIBUSプログラムでは、リコーのあらゆる部門の方とつながることで、多くの仮説を設定できます。言葉を選ばずに言えば、リコーのリソースを活用して自分たちの成果につなげることができます。スタートアップは倒産と隣り合わせなので寄り道している時間などなく、早期に成果を上げなくてはいけませんが、TRIBUSはカタリストさんに伴走いただき最短で成果に向かっていけるアクセラレータープログラムです。仮説ベースでリコーの強みなどを活用して自分たちの成果が出るようであれば、スタートアップはぜひご応募いただいた方が良いと思います。





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