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今日が、残りの人生の最初の1日。

日本で先駆けの有料老人ホーム「エデンの園」。高齢者福祉に対する日本人の意識を変えた50年間の歩み

著者: 社会福祉法人 聖隷福祉事業団

2023年4月現在、1都7県で医療・保健・福祉・介護の事業を中心に213施設を展開している聖隷福祉事業団。私たちが運営する1973年開設の自立型有料老人ホーム「浜名湖エデンの園」は、おかげさまで開設50周年を迎えました。これからも世界一の長寿国となったわが国の高齢者ケアの進むべき方向を探り、さらなる充実を図ってまいります。


私たち聖隷福祉事業団は1930年、創業者長谷川保を含むクリスチャンの若者が、結核に苦しむ人々への献身的な看護をおこなったところから始まり、その後、診療所から病院へ、予防対策から健診や人間ドックへ、患者さんの社会復帰支援から福祉領域へと、徐々に裾野をひろげてきました。


このストーリーでは、キリスト教精神に基づく「隣人愛」を基本理念に掲げ歩み続けてきた聖隷福祉事業団の活動と、高齢者福祉に対する日本人の意識を変えた「エデンの園」50年の軌跡をお届けします。


創業に込められた想い「日本人高齢者が自殺を選ばない社会をつくりたい」


聖隷福祉事業団創業者である長谷川は、敗戦直後から戦争で子どもを亡くし、全財産を失い、飢餓と窮乏の末に「自殺」を選択する高齢者が多いことを憂い、高齢者問題に取り組みはじめました。1946年4月、戦後初めて行われた衆議院議員選挙に敗戦による国民の状況を座視するに忍びず、復興のために立候補し、見事当選を果たします。そこから17年の間、国会議員として国政分野の面で縦横無尽の活躍を続け、奔走します。ことに、日本社会党を代表して生活保護法の制定に全力を注ぎ、各地に老人ホームをつくるため尽力しました。



長谷川 保 (聖隷歴史資料館所蔵)


1958年欧米調査旅行中、日本の高齢者の自殺率が世界一多いことを知らされます。さらに「病気を患ったことに対する苦しみ」が自殺の最大の動機であることを知り、直ちに衆議院で議題にあげます。結果「ねたきり老人の施設」が設置され、老人福祉法が制定されることとなりました。


老人福祉法制定から10年。日本は奇跡的な経済発展を遂げ、国民の生活水準は著しく向上し、高齢者の自殺件数も減少していきました。それでも70歳以上の自殺率は世界1位、老人ホームには空きベッドがある状況でした。この事実に直面した長谷川は、病院と特別養護老人ホームの関連施設として「高齢者世話ホーム」の設立を目指します。高齢者を病気にさせない、病気になってもすぐに治療ができ、万が一寝たきりになってもおむつの世話までするという、世界にも稀な施設を造り出そうとしたのです。


最低限度の保障から個人として尊重される時代へ社会の変革期を目の当たりにする


国民の生活水準が向上していくにつれ、日本の法制や社会福祉事業は整備され、病人は最低限度の医療を、貧しい人々も最低限度の生活を営めるようになってきました。時代の流れと共に長谷川は新たな高齢者福祉の形を模索し始めます。憲法13条「全ての国民は個人として尊重される。生命自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政上で、最大の尊重を必要とする」この条文こそが、新しい福祉の目標であると定めました。


「社会福祉施設について当てはめるのであれば、病院や老人ホームは本人が希望しない限り個室を用いるべきで、給食は複数のメニューから選べなければならない。さらに、病院や医師、看護人の選択も患者が自由に選択できなければならないだろう」と長谷川は考えました。


現在ある施設を改善するためには、診療報酬や事務経費は2倍以上に膨れ上がります。国は費用について容認してくれないだろうと考えた長谷川は「エデンの園」建設にあたって、国からの補助金は敢えてとらないという選択をしました。


それでも「エデンの園」の入居希望者からは、施設の竣工前よりほぼ満員の人数の申し込みをいただきました。社会の変革期を目の当たりにした長谷川は、国民の最低限の生活を保障する「救貧意識」を、自由と幸福の追求の権利を推進し保障する「使命意識」へと意識革命する必要があると訴え始めます。


周囲の反対を押し切りつくった「高齢者が生きがいをもって安心して生活できる場所」時代を30年先取る長谷川の事業構想


「エデンの園」の開設は、今までの「聖隷」の方針とは異なるものだったため、医師や周囲の人たちからも、相当の反対を受けました。当時「エデンの園」は裕福な方の生活をサポートする施設、と位置付けをされていたため、豊かな人のためになんでそんなことまでするのか、という声があがったのです。それでも長谷川は周囲の反対の声につぶされることはありませんでした。「豊かな人でも、どういう人でも人間としてどのように最後までイキイキと生きられるか」というのが「エデンの園」設立の重要なテーマだったからです。長谷川は経済的豊かさとはまた別物の豊かさについて説き、反対意見を説得してまわりました。


数々の反対意見を押し切り、紆余曲折あった末に1973年聖隷三方原病院の隣接地に高齢者世話ホーム「浜名湖エデンの園」が完成しました。


開設時の浜名湖エデンの園(聖隷歴史資料館所蔵)

浜名湖エデンの園 玄関:右から2番目が長谷川 保(聖隷歴史資料館所蔵)


「エデンの園」開設後も、長谷川は自由と幸福の追求の権利を推進し保障する「使命意識」のもと奮闘を続けます。


「長谷川の仕事を振り返ると、どれも始める時代が30年くらい早いんです。周りから受け入れられ、社会に浸透するまで30年くらい時間が掛かっているような気がします。ホスピスをつくると言い出した時も病院の中はみんな大反対でした。それが今では聖隷の看板施設になり、全国各地にホスピスが誕生しています。ドクターヘリもその必要性を理解されるまでずいぶん時間が掛かりましたけど、今では当たり前のように日本中を飛び回っていますからね。」と長谷川の娘、節子は後に懐かしく当時を振り返っています。


1981年 聖隷三方原病院に日本で初めての独立型のホスピスが建てられた(聖隷歴史資料館所蔵)

ドクターヘリ開業時テープカット

聖隷関係者とドクターヘリ運航会社(中日本航空株式会社)スタッフ

日本人の意識を変え、高齢者の生き方を変えてきた「エデンの園」

「エデンの園」開設50年を迎えた今では、高齢者を粗末にせずに「最後まで人格を大切にしながら生きてもらう」という考え方が定着してきました。私たちは高齢者や障がい者がイキイキと暮らすことができる社会こそ本当の豊かさの象徴だと考えています。「エデンの園」を開設したことは、当時の日本人の意識を変える上で、とても大きな役割を果たしました。長谷川は、より多くの方に最後まで楽しく暮らせる場所を提供できるよう、全国100箇所にエデンの園をつくりたいと口癖のように話していました。


100箇所とはいきませんが、浜名湖エデンの園を皮切りに、宝塚エデンの園松山エデンの園油壺エデンの園横浜エデンの園藤沢エデンの園一番館藤沢エデンの園二番館、を開設。2007年7月に日本郵政公社の民営化に伴い特殊法人簡易保険郵便年金福祉事業団から移譲を受け浦安エデンの園、また、日本生命保険相互会社の創業100周年と社会福祉法人聖隷福祉事業団の創業60年を記念して、1989年7月に設立された公益財団法人ニッセイ聖隷健康福祉財団が運営する奈良ニッセイエデンの園松戸ニッセイエデンの園を開設。1996年6月には東京都住宅供給公社よりの委託を受け、明日見らいふ南大沢の運営を開始。1都6県で長谷川の意思が受け継がれています。


これからも「エデンの園」は高齢期の様々な変化に対応する環境を提供していきます


1973年に1号館を開設し、1976年に2号館、その後現在に至る6号館まで、増築や耐震対策等を行ってきた浜名湖エデンの園が開設46年を迎えた2017年5月。ご入居者のさらなる安全と安心のため、旧耐震基準で造られた鉄筋コンクリート造の建物では日本最大規模となる1・2号館の建替工事を行いました。まずは4号館の一部を解体・増築し、1・2号館のご入居者には増築部含め施設内の空室に移り、完成まで過ごしていただきました。工事中の期間は、毎日のように大きな音や工事車両の出入り等でこれまでのような生活が難しくなりましたが、その間、外出企画を始めそれまでよりも行事を増やし、少しでもご入居が楽しく過ごせるような工夫をしました。この建て替えはご入居者のご協力なくしては成しえないものでした。


2018年10月より1・2号館を解体、新1・2号館の建設工事を開始しました 。工期約3年半をかけ、2020年5月に完成しました。


左:1・2号館建て替え前 右:2018年12月26日

左:2019年4月25日 右:2019年9月17日

左:2020年2月21日 右:2020年4月23日


現在の浜名湖エデンの園 玄関


建て替えられた建物は、建築基準法で定められた耐震性能の1.5倍の強度があり安心なだけでなく、食堂・大浴場・玄関ロビーなど、ほぼすべての共用部分を一新し、さらに魅力あるホームに生まれ変わりました。また、厨房機器非常電源、外断熱、無線式緊急通報ボタンなどの機能を備え、ご入居者がより快適に生活いただくことを目指しています。


※ 詳しい建て替えの様子は、浜名湖エデンの園ホームページをご参照ください。


これからの100年もご入居者が安全で安心した生活を送ることができるよう、宝塚エデンの園を始めその他の施設でも建て替えを検討していきます。


長谷川保が、高齢者の自殺を憂い高齢者の生きる場所を創らなければならないとした思い、そして幸福を追求する権利として自由な選択できる暮らしを提供しなければならないという思いは、もちろん現代のエデンの園を運営する職員の中に根付いています。その長谷川保の思いを時代に先駆け実践していくことを職員は常に意識しています。先駆けとしてより質の高いサービスを提供するためにエデンの園が目指すべき方向を明確に示そうとしたものが、エデンの園が構築するトータルヘルスケア。

その3つの柱となっているのが、Health(健康管理)、Medical(医療支援)、Care(介護)です。ご入居者には自宅と変わらない生活を送る「自立」期から、必要な生活支援を利用しながら過ごす「合間」の時期、日常的に介護サービスが必要な「要支援・要介護」期を経て、「終末」期まで、Peaceful(心の平安)を提供していきます。





聖隷福祉事業団理事・高齢者公益事業部長 平川 健二


開設当時から今も変わらず高齢者ホームに求められているのは「安心と安全」。それは、食事や居室、共用部分に関して、ご入居者自身の生活環境をあまり変えたくないという要望も含みます。「エデンの園」はマンションのような個室型で、住民同士のふれあいの場や、食堂、浴場、クラブ室といった日常生活に必要な施設や機能の全てを網羅し、さらに健康を損ねても治療や介護を受けながら、終の棲家で安心して余生を全うできる自立型有料老人ホームを実現してきました。


日常的に各種手続きや不在時の居室管理に応じるスタッフが常駐しており、詐欺や迷惑電話の盾にもなってくれます。さらに、介護にかかわる職員体制がご入居者2人に対して1人という密度の濃さも安心材料の1つでしょう。          


相談しやすい体制で不安を解消「最期に近くに居てほしい隣人になれるよう努めています。」


開設当初は「働く老人ホーム」として、ご入居者に受付をしてもらったり、おむつをたたんでもらったり、施設内の庭園の整備清掃や、自由な軽労働をするのを原則として、生きがいを感じながら生活をしてもらっていました。それは、長谷川が『エデンの園をみんなに』で示したように「人間は生きがいのある生活をしなければならない、してもらわなければならない」と考えていたからです。


今では昔のような入居者参加型の施設ではなくなりましたが、サービスが拡充され、より快適に暮らせる環境になって来たと思っております。「浜名湖エデンの園」を開設した50年前と、現在は社会的な背景が全く違いますが、働いている職員と入居されている方、今生きている方々と共にこれからの「エデンの園」を作っていきたいと思っております。時代にあわせて変わり、進化していくのが「エデンの園」の理想なのです。



法 人 名 社会福祉法人 聖隷福祉事業団(せいれいふくしじぎょうだん)

所 在 地 静岡県浜松市中区元城町218番地26(法人登記)

H  P https://www.seirei.or.jp/hq/

法人概要 https://www.seirei.or.jp/hq/corporations/outline/index.html

エデンの園 https://www.seirei.or.jp/eden/

エデンの園50周年記念特設サイト https://www.seirei.or.jp/eden/50th/




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