3名による事業立上げから、全社一丸となっての黒字化達成まで。理系プロ人材シェアリングサービス「RD LINK」の挑戦
私たちRDサポートは1998年に創業し、⾷・ヘルスケア・バイオ・医薬品・化粧品業界特化型の⼈材サービスを展開している会社です。創業事業である派遣事業や人材紹介事業を主軸とし事業を展開してきましたが、2020年3月に理系プロ人材のシェアリングサービス「RD LINK」をスタートさせました。研究開発分野において馴染みも認知もない新しい人材活用手段であるシェアリングサービスをなぜ新たな事業としてはじめたのか、「RD LINK」の立上げの経緯から、思い、そして私たちが思い描くこれからについて、「RD LINK」を立ち上げた弊社代表取締役 COOの大島よりお話いたします。
(代表取締役 COO 大島康治)
新規事業のきっかけは、メーカー役員からの「プロフェッショナルな人の知見がほしい」というお声
既存事業の派遣事業、人材紹介事業が、特化している⾷・ヘルスケア・バイオ・医薬品・化粧品業界の中で実績も積み、サービス認知もされてきた2019年秋ごろから、私と代表の大澤で次の柱となるべく新規事業構想を練っていました。既存事業が認知されてきた中、この先同じように既存事業を展開しているだけでは大きな伸びがないのではないか、RDサポートは本当に顧客の期待に応えているのか、など、幾つもの葛藤の中で日々事業検討を繰り返していました。
そんな中、ある大手菓子メーカーの役員から「新しいビジネスに挑戦したいが、正社員採用はリスクがあり過ぎて二の足を踏んでいる」という話を、時を同じくして中堅原料メーカーの社長からは「会社としては雇用形態にこだわりなんて無い。とにかくビジネスを推進してくれる人を紹介してくれ!」という相談を受けました。このような顧客の声に対して、当時のRDサポートは的確にお応えできるサービスを持ち合わせておらず、要望、期待に応えきれず悔しさを募らせていました。
しかしここに可能性があるのではないか、RDサポートがリーチすべき「不便・不足・不満」があるのではないかと考え、顧客から多く寄せられる「課題を解決したい」「新規事業を進めたい」そのために「プロフェッショナルな人の知見がほしい」という声をヒントに、アサインからプロジェクトへの参加、成果までをスピード感を持って実現させるため、正社員紹介でも派遣サービスでもなく、研究開発人材=理系プロ人材のシェアリングサービスはどうだろうかと、具体的議論を開始しました。
企業、エキスパート人材、RDサポートが、同じ目線で課題を共有し解決していくという想いを込めた
今回のプロジェクト推進にあたっては「顧客開発モデル」や「リーンスタートアップ」を参考にし、リーンスタートアップのリーンを「素早く少人数で動く」と解釈し、代表取締役 CEOの大澤と私、加えて入社間もない社員1名の計3名でプロジェクトとして始動しました。また顧客開発モデルの中で提唱されている「顧客の声を聞きながらサービスの仮説検証を繰り返す」を念頭におき、既存の取引先の役員や事業責任者の方に「人材活用においての不満や不便」や「理系プロ人材のシェアリングサービス」の可能性についてヒアリングを重ねました。やはりその中では批判的な意見や、知財に対しての不安なども表出してきましたが、それ以上に顧客の声から、人材活用における解決策としてのシェアリングサービスの可能性を確信することができました。
サービスの輪郭が出来上がってくる中で、RDサポートのシェアリングサービスの名称を、『企業、エキスパート人材、RDサポートの3者が輪(LINK)になり経営課題や事業課題を解決していく』という思いを込め「RD LINK」と名付けました。
この「LINK」という単語も、企業や実際にプロジェクトへ入るエキスパート人材へのヒアリングを繰り返していく中で、私たちが目指すRD LINKの在り方は、一方的な契約関係や主従関係ではなく、同じ目線で課題を共有しそれを解決することで世の中にインパクトを与えたい、というものだと認識し、その考えを表現できる「LINK」という単語を選びました。
とにかく商談を繰り返し、顧客の声を聞くことで見えてきたサービスのカタチ
動き出しのスタートは、まずは最小限のプロダクトであるMVP(Minimum Viable Product)を作り上げ、これまで派遣サービスや人材紹介サービスでお世話になっていた企業に「RD LINK」の案内を行いました。とにかく顧客の声を聞いて、仮説検証を繰り返すため、ひと月に40社~50社の商談を繰り返し、商談内容、サービス資料の内容、そもそもの価値提案の核心部分を何度も見直し修正することを繰り返していくうちに、徐々にですがサービスとしてのカタチができてきました。
企業と、エキスパート人材の声が、コロナ禍での事業化の後押しになった
ありがたいことに2020年初頭から商談を開始し半年余りで4社との契約にいたりました。これまで派遣サービスや人材紹介サービスでRDサポートを利用していただいた企業からのニーズを捉えることができ、新規事業のスタートとしては上々だったと思います。
リーンスタートアップの考え方としては、ビジネスとしての可能性が見えるまでは採用も抑えできる限り少人数で、広告宣伝費やシステム投資も抑え、身軽にいつでもピボットできる状態で、というのが定石です。
どのタイミングで組織化するべきか、その正解はありませんが、2020年春、私たちはここで組織化することを決断しました。
ちょうどこの時は、世の中が「コロナ禍」というまったくの未知の世界に突入した時期でもあります。コロナが拡大するにつれ企業の採用意欲は著しく低下し、また求職者の転職への不安は高まるばかりでした。既存事業の派遣事業や人材紹介事業の市場縮小が懸念される中、事業転換の猶予も迫ってきていました。事業化をするか否か、いつすべきなのか、迷い考える中、何よりも企業やエキスパート人材の声が私たちの背中を押してくれました。
企業からは「正社員採用は難しいが、業務委託だったら検討可能。より早く現状課題を解決しないとこのコロナ禍を乗り越えられない」「今のうちに新規事業にチャレンジしないと、生き残れない」などの声がありました。エキスパート人材からは「1社に定年まで勤めることに更に不安が募る」「自らキャリア開発しないと60代以降厳しい」「予測不能な事態のなかで自ら意思を持ってキャリア構築したい」という声がありました。このような市場の声を聞く中で理系プロ人材のシェアリングサービスの大きな可能性を感じ、事業として拡大をするという大きな舵をきったのです。
1社から複数プロジェクトを契約。サービスの認知拡大に取り組む中で感じた手応え
事業化するにあたり、2020年6月に他事業部から人員を確保し、LINK事業部として始動しました。始動1年目は、「既存の働き方を変える」「日本のR&Dを進化させる」というビジョンのもと、ただただ我武者羅に顧客へのアプローチを続ける、そんな1年だったと記憶しています。
サービスローンチから2年目の2021年は、10数社との契約が締結でき、月間売上も数百万となりました。まだまだ赤字事業でしたが、一定の型はできつつある状態まできました。
一方で、イノベーター理論でいうところの「イノベーター」にしか活用してもらっておらず、アーリーアダプターにまでたどり着けていないという課題感がありました。どうやってサービス拡大するのか、どうしたらキャズム(深い溝)を超えられるのかを日々考え実践する2年目となり、新規事業の大変さ・怖さ・面白さが渾然一体となっていました。
そこで2年目からはサービス認知のための広告など、あらゆる手法にチャレンジすることにしました。シェアリングサービスや複業・副業はまだ認知が浅いため、サービスを知ってもらう前の啓蒙活動に近いかたちでの広告戦略とし、WEB広告、SNS、専門誌への出稿、金融機関や自治体を通じての認知などに取り組み、少しずつでも着実にリーチできていなかったところへ「RD LINK」を発信できるようになってきた手応えを感じていました。
この頃には、同時に1社から複数のプロジェクトを契約していただけるケースも出てきました。大手菓子メーカーや上場医薬品メーカーで、異なる事業部のそれぞれのプロジェクトでRD LINKを活用したいというものです。RD LINKを利用いただいたプロジェクトの責任者が、別の部署のプロジェクト責任者にRD LINKを紹介してくださったことがきっかけでした。これはサービスとしての価値を認めてもらったという証左と考えていいと思いました。理由は様々で「正社員の採用段階ではないフェーズでも活用できる」「事業部予算内で収まる」「より早く的確に課題解決できる」などがありましたが、いずれにしてもサービスとしての提供価値の方向性が間違っていないことを確信した出来事でした。
全事業部が一丸となったからこそできた事業転換。4年続けた先の黒字達成
2022年、サービスローンチ3年目となりビジネスとしての成長が鈍化してきていると感じた時期です。他社の人材シェアリングサービスも出てきており、人材シェアリングは市場としては拡大していましたが、RD LINKとしての売上は横ばい傾向でした。
私が考えるに新規事業において難しいフェーズは「0→1」ではなく「1→10」「10→100」だと考えています。ローンチは勢いでなんとかなることもありますが、ターゲット顧客に価値を感じていただき、継続した売上を立たせることが非常に難しい。どこのスタートアップも大手企業の新規事業も頭を悩ますフェーズなのではないかと思いますし、まさにRD LINKもこのフェーズに差しかかっていました。
3年目で訪れた、もう一段階ストレッチするための何かが必要なフェーズです。ここではまた新たな手法を、といったことではなく、非常にシンプルに、インサイドセールス、フィールドセールス、キャリアアドバイザー、マーケティング全ての担当者が営業マインドを強く持って、顧客接点を継続して持ち続けることだけに注力、集中してきました。
この3年目まで本当にありとあらゆることにチャレンジしてきましたが、何をどうしたって、顧客と向き合い続けることしかない、そこにしか答えはないのだと確信していましたから、踏ん張りどころでやるべきことは、とてもシンプルでした。そしてシンプルだからこそ、全担当、全メンバーが顧客接点を持ち続ける、そのことに全力で向き合うことができましたし、そのかいあって、売上や受注案件数も横ばいから少しずつですが右肩上がりになり、事業継続の大きな光が見えてきました。
3年目のこの時期がRD LINKを立ち上げてから一番苦しくてもがいていた時期かもしれません。しかし不思議と不安はありませんでした。ちょうどこの時期には新たなメンバーを採用したり、他事業部からマネージャークラスの人材を補強したり、組織の大きさも倍になり「チーム」としての動き方といった組織マネジメントも進めていました。もちろん、メンバーやマネージャーは長く苦しいトンネルの中を走っているような感覚だったかもしれませんが、必ずそのトンネルから出口を探し、全員で出ることができる、その先には光があるという可能性を感じさせてくれるメンバーしかLINK事業部にはいなかったのです。今あの頃を振り返ってみても、全員でよくやったなとメンバーには感謝しかありません。
そして、大手ではない私たちのような規模の会社が、赤字事業を続けていくことは容易なことではありません。RD LINKの躍進はLINK事業部だけではなく、既存事業である派遣事業、人材紹介事業の基盤があってこそであり、またそれらの事業部メンバーのRD LINKへの理解と協力、期待があってこその成果だといえます。まさに会社が、全事業部が一丸となって同じ方向を向けたからこそできたRD LINKの事業転換なのです。
4年目の今年、2023年に入ってからは累計案件数が800件を超え、単月黒字化を達成しました。サービスローンチから4年かかりましたが、これが遅いか早いかは分かりません。弊社はすでに25年事業を継続しており、スタートアップのようにVCからの大型調達などは行わず、地道に限られた資金で新規事業を行うという状況です。「○○億円調達しました!」「数年で上場しました!」などのニュースが多いなか、とにかく自分たちのできる事を継続し、顧客の声に耳を傾けた4年間でした。
ある関西の水産加工会社の社長に「こんなサービスを待っていたんだ。よくぞ連絡してくれた」と言っていただきました。歴史があり強い既存商品もお持ちの企業でしたが、新商品開発に課題を抱えており、社長も行き詰まりを感じていたそうです。RD LINKの活用によって加工技術にブレイクスルーが起き、新しい商品開発に着手されています。このようなお客様が全国に多数いらっしゃると信じて初心を忘れずサービスを磨いている現在です。
新しい専門分野、スキル・キャリア開発の一環、RD LINKの新たな活用の場を広げたい
私たちのサービスビジョン「日本のR&Dを進化させる」を体現できることには、今まで以上に貪欲に挑戦していきたいと思っています。
近年のテクノロジーの進化のスピード、展開力は目を見張るものがあり、新たな専門分野での人材シェアリングサービスの活用が拡大することが見込まれています。その流れの中でバイオテクノロジーやAIの進歩、活用の定着により、これまで考えられなかった領域でのプロジェクトが可能となり、AIを活用した研究開発や生産プロセスの最適化など未知の分野でのシェアリングが進むことが予測されるので、そういった領域でもRD LINKを展開できないかと考えてみたりしています。
また人的資本経営として、どの企業も自社社員のスキルアップやキャリア開発といったことへの投資はより一層力を入れていく時代になります。そこへスキル・キャリア開発の一環としてRD LINKのエキスパート人材の知識や経験を伝える教育プログラムを展開することも面白いかもしれません。
エキスパート人材が活用されていく場が広がることで、大小問わず企業間の連結の場として機能していくことも十分に考えられます。
いずれにしてもこれまでにないイノベーションが起こることが想定され「日本のR&Dを進化させる」ため、私たち自身も進化し続けなくてはなりません。
RD LINKは4年目となった今、事業も黒字化し、ようやく自分たちの足で立てるようになりました。
ここからが本当の勝負だと思っています。
1社でも多く、1件でも多くのプロジェクトの未来が、RD LINKを通じてより良い発展に繋がることを信じ、私たちは走り続けます。
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