日本の森林の若返りに貢献! 次世代に豊かな森林資源を残すため、コンテナ苗木生産・管理に奮闘する住友林業の若手社員に迫る!
住友林業は江戸時代の元禄4年(1691年)から「木」を軸に、川上の森林経営から、川中の木材建材製造・流通、川下の「住友林業の家」といった注文住宅、リフォームにくわえ、木質バイオマス発電など、木と住まいに関する事業を幅広く展開してきました。現在は日本の国土の約800分の1にあたる約4.8万ヘクタールの社有林を保有しています。
住友林業の社有林
「持続可能な森林経営」を通じて、脱炭素社会の実現に貢献するため、近年、力を入れて取り組んでいる事業の1つが、「コンテナ苗木」(以下「苗木」)の自社生産、販売事業です。
今回紹介する資源環境事業本部 森林資源部の井田勇也は、本社の管理部門で国内の苗木事業の生産・管理を担当する5年目の社員。伐採期を迎えた日本の森林資源を次世代に残すために、今後ますます需要が高まる苗木生産の現場で奮闘する井田の姿を追いかけました。
井田勇也(岐阜県下呂市の育苗センターにて撮影)
国内森林伐採後の苗木需要に着目、全国で年間190万本の苗木生産体制を確立
日本の国土の約7割は森林です。そのうち人の手によって植えられた人工林は約4割を占めており、戦後に植林された針葉樹の多くは木材として利用するための「伐採適齢期」を迎えています。森林を次の世代に残すためには、成熟した木は伐採して資源として有効活用し、その後は若い苗木を植えることが重要です。
今後は全国的に成熟した木の伐採が進むため、その後に植える苗木の需要も高まっていきます。樹種や場所によるものの、すでに再造林のための苗木が不足している地域もあり、苗木の「安定供給」がより一層重要になってきています。また、日本の苗木生産者は個人や小規模な法人が多く、生産者の高齢化や後継者不足などが問題となっており、どのように「安定供給」を実現するかは、日本の林業全体の重要な課題です。
コンテナ苗木
独自の技術を用いて、通常2~3年かかる発芽から苗木出荷までの期間を約1年に短縮しています。
住友林業はこうした世の中のニーズから苗木需要の高まりを見越して、約10年前から苗木生産を開始しました。2012年の宮崎県日向市を皮切りに、北海道紋別市、2016年に岐阜県下呂市、2017年に高知県本山町、2018年に群馬県みどり市、2019年に福島県南会津町に生産施設を開設し、全国で年間190万本の苗木が生産できる体制になっています。
全国6か所の苗木生産施設で年間約190万本を生産(2022年現在)。
2024年までに年間253万本の供給本数を目指しています。
2023年8月には林野庁の顕彰制度「森林×脱炭素チャレンジ2023」で、当社が林野庁長官賞を受賞。森林の公益的機能を保ちながら、苗木生産から植栽、育林、伐採、再植林を通じて永続的な林業を行う「保続林業」の基本理念のもと、コンテナ苗の生産技術の開発と普及によって、全国各地の再造林を促進している点が評価されました。
※森林×脱炭素チャレンジ2023
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/forest_co2_challenge/2023.html
※受賞企業一覧
https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/230801.html
地域や業界の慣習にも適応しながら、泥臭く地道に販売本数を拡大。
裏側にあった、会社としての使命。
190万本の苗木は、住友林業の社有林で使用することもありますが、社外への販売が大半を占めます。全国的な苗木需要の高まりを見越して参入したものの、事業として成功させるには一筋縄ではいきませんでした。
例えば、苗木は店頭販売や受注生産ではなく、住友林業で年間の供給計画を立て、おもに全国の森林組合などに販売しています。全国には古くから営んでいる苗木生産者の方々がいるため、当然昔からの付き合いを大切にされます。そのため、当初は各地の森林組合に出向いてもなかなか販売には至りませんでした。地元の苗木生産者の方々も当社が新規参入してきたことにより、シェアを奪われるのではないかという想いが少なからずあったと思います。
しかしながら、苗木生産者を始めとする林業従事者が減少している昨今、全国に拡がる供給網と年間を通した安定供給が可能な生産体制を有する当社の役割や存在意義を徐々に理解していただけてきたように感じます。引き続き苗木が不足しているところを補い、安定した供給を行っていくことが当社の使命だと考えています。
業界や現場の課題感も含めて赤裸々に語ってもらいました。
森林組合や森林管理者の方とのファーストコンタクトでは、たとえ取り引きに繋がらなくても、「何かあったら声をかけてください」と伝えています。苗木は生き物なので、植栽直前に枯れてしまったり、様々な理由で急に不足することもありますが、そういった時は全国にネットワークをもつ住友林業の出番です。全国6か所の住友林業の育苗センターから販売することもあれば、ときには買い手となる森林組合の方と全国のなじみのある苗木生産者の仲介役を担うこともあります。こうした「持ちつ持たれつ」の関係を地道に築くことで、ようやく様々な方に頼っていただけるようになってきました。
各育苗センターの皆さんとの信頼関係構築で、事業を軌道にのせる
今後も出荷本数の拡大を目指していますが、簡単ではありません。悪天候が続くと屋外の苗木の成長に影響が出たり、売りどきを逃してしまえば、よい品質の苗木を無駄にしてしまいます。安定的な生産・管理を行うためには、全国の拠点で働く皆さんの協力がどうしても必要です。苗木は生きものなので、当然、暑い日も寒い日も、土日も祝日も管理が必要となりますが、こうした環境でも一生懸命働いてくださる現場の方々にはいつも感謝の念が堪えません。
毎日顔を合わせることは難しいですが、なるべく現地に出向き、一緒に作業をしたり、お昼ご飯を食べたり、時には仕事終わりにお酒を飲みながらコミュニケ―ションをとるようにしています。場所によっては親子ほど年の離れた方もいますが、素直に意見交換ができる関係づくりに努めています。
苗木の管理方法などについて岐阜育苗センターのスタッフと意見交換。
現場の意見に耳を傾け、本社に伝えるのも重要な仕事です。
各育苗センターの皆さんの頑張りもあり、少しづつ状況は改善していますが、苗木生産を採算性のある事業として軌道にのせるにはまだまだ課題が多いのが現実です。発芽から苗木出荷までを短縮できるコンテナ苗木をいち早く導入して生産プロセスを効率化したり、専用の発芽施設や育苗台がレール上を自由に移動できるムービングベンチを取り入れて、作業の効率化・省力化を進めています。
ムービングベンチで作業を効率化
当社の育苗センターでは高齢の方や女性も多く働いているため、作業の効率化・省力化は皆さんの働きかたや労働環境の改善にも直結します。林業従事者の減少や苗木生産者の高齢化が進んでいる昨今、今後の林業の発展を考えると、若年層にも魅力のある職場・業界にしていく必要があると感じています。働き手の労働環境や生活を守ることも、安定した苗木の生産体制につながると思っています。
コンテナへの植え替え作業の風景
課題が山積みの日本の林業、だからこそのやりがい
学生時代は林学を学び、木にまつわる仕事がしたいと想い入社し、1年目で宮崎県日向市の社有林管理の担当になりました。実際に林業の世界に身を置き、人手不足や作業の機械化が海外に比べて遅れている点など、多くの問題点や課題があることを肌で感じています。一方で、苗木生産を通じて持続可能な森林経営の一端を担えていることに誇りを持っています。今後は苗木生産事業が豊富な人財を呼び込める魅力ある産業になるよう、より安定した収益を生み出し、森林資源の価値を高めていけるよう努めていきたいと思います。
プロフィール>
2019年、住友林業株式会社新卒入社。資源環境事業本部 森林資源部 日向森林事業所に配属。2021年に森林資源部 国内森林グループに異動し、苗木生産・管理を担当。
住友林業の森林経営>
住友林業は日本の国土の約800分の1にあたる約4.8万ヘクタールの社有林を所有しており、祖業の地である愛媛県新居浜市をはじめ、北海道、本州、九州にも広がっています。詳細はこちら:https://sfc.jp/treecycle/domestic_forest/
関連ニュースリリース>
2017年3月:岐阜樹木育苗センター竣工~2023年度に年産100万本目指す~
https://sfc.jp/information/news/2017/2017-03-29.html
2017年5月:当社初の高知県での育苗施設 ~本山樹木育苗センター竣工~
https://sfc.jp/information/news/2017/2017-05-24.html
2018年4月:わたらせ樹木育苗センター ~群馬県みどり市に開設~
https://sfc.jp/information/news/2018/2018-04-19.html
2020年1月:南会津に樹木育苗センター開設 ~コンテナ苗、年産30万本~
https://sfc.jp/information/news/2020/2020-01-24.html
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