40年以上愛され続ける大吟醸。兵庫の老舗酒蔵「龍力」が手がける吟醸酒『 米のささやき』誕生の物語
株式会社本田商店は1921年(大正10年)創業。兵庫県姫路市の酒蔵『龍力』として、「米の酒は米の味」を基本理念に100年以上日本酒造りを続けています。
龍力を代表する日本酒『大吟醸 米のささやき』は40年以上愛され続けております。このストーリーでは、吟醸酒『 米のささやき』誕生の背景と私たちが日本酒造りに込める想いを五代目・本田龍祐がお伝えします。
『大吟醸 米のささやき』の始まり
日本酒蔵『龍力』は、大吟醸をメインに醸す蔵です。今では吟醸蔵と呼ばれることが多くなりましたが、その始まりは『大吟醸 米のささやき』です。今から約50年前の1970年代、お酒は温めて飲むのが一般的でした。
今では考えられませんが、当時、冷やして飲む“吟醸酒”は、一部の蔵でしか造られておらず、酒造関係者以外は飲むことのできない特別なお酒でした。『吟醸酒』という言葉すら一般には馴染みのない言葉で、当時の吟醸酒は、商品としてではなく、その年の日本酒の出来を鑑定する、あくまでも鑑評会出品用のお酒だったのです。
当時の龍力は、灘の大手の下請けとしてお酒を醸しておりました。
その為、酒蔵といっても自分たちの蔵で売るお酒は僅かしか造っていない状態。その頃、東京農業大学の醸造科で学んでいた四代目・本田眞一郎は、大学で出会った吟醸酒に衝撃を受けました。
「こんなに美味しいお酒が存在するのか。このお酒を多くの方に飲んでいただきたい。冷やして美味しい日本酒を知ってほしい」と、手探りの吟醸酒造りが始まりました。
“冷やして美味しい”吟醸酒造り
地方の地酒蔵は、ほとんどが大手の下請けとしてお酒を造っていた時代。
多くのお酒が、一般の食用米で造られており、高価で貴重な山田錦(酒造好的米)は希望しても、手に入れることすらできませんでした。
それでも何度も交渉を重ね、なんとか大吟醸用に手に入れた山田錦は、他の米とは違い、粒が大きく、心白があった。精米から始まり、酒母・こうじ造りの発酵まで、一般米とは違う、ポテンシャルの高さに「良い酒ができる」というワクワクとした高揚感を覚えました。
しかし、杜氏にとっても初めての吟醸酒造りですから、最初から順調にいったわけではなく、文献などを参考にしながら試行錯誤を繰り返しました。そして1979年、ついに念願の『大吟醸 米のささやき』発売を開始。しかし、『大吟醸』という言葉自体が一般的に認知されていないなか、当時、特級酒の一升瓶が2,000円ほどだった時代、720mlで2,500円という超高価格の『米のささやき』は全く売れませんでした。
米のささやき“口コミ”で広がる
発売当初、全く売れなかった『米のささやき』ですが、“冷やして美味しい大吟醸”は、流行に敏感な東京で評価していただけるようになりました。そこから口コミにより少しづつ地元でも評判をよび、飲食店をはじめ、徐々に広まり始めました。
この評判は農家にも及び、酒米の王様とも称される貴重な山田錦も、十分な量が手に入るようになったのです。
1981年には、三代目・本田武義が日本吟醸酒協会を立ち上げ、初代理事長として吟醸酒の普及に努めました。
そして1985年、全国新酒鑑評会にて、姫路酒造組合初となる"金賞"をいただきました。
酒蔵といえば木造が主流だった時代、冷蔵などの温度調節が可能な鉄筋コンクリート造りの蔵を建て、自社で米を磨くための最新の精米所も併設。
吟醸酒には欠かせない低温発酵と、外部委託では叶うことのない、時間と手間を惜しまない丁寧な精米が可能となりました。こうして龍力は、大吟醸に特化する為の設備に徹底的に投資し、一気に吟醸酒造りを加速させていきました。
吟醸酒の登場は、“日本酒は温めて飲むもの”という、当時の当たり前を少しずつ変化させ、“日本酒を冷やして飲む”という文化を定着させました。この変化のきっかけとなったお酒のひとつ『大吟醸 米のささやき』は、おかげさまで今なお龍力を代表する日本酒として愛されています。
“米の酒は米の味”良い酒は良い米から
酒米には様々な品種がありますが、大吟醸を造るのに一番適したお米は「山田錦」といわれています。今では日本各地で生産される山田錦ですが、別格とされるのが兵庫県産です。兵庫県は山田錦の発祥の地であり、全国の生産量の6割を超える大生産地。中でも酒米にとって理想の栽培条件を全て兼ね備えた最高の産地“特A地区”が存在します。
酒米にとって素晴らしい条件が揃う“特A地区”の中でも、より土壌条件の良い篤農家を探し求め、全国初となる専属栽培契約を行い、特別な山田錦をつくっていただいています。蔵で使用する全てのお米に出荷証明書があり、生産者の顔が見えます。
最高の素材は“覚悟”
『大吟醸 米のささやき』は発売当初より高品質の山田錦を使い続けています。
「どんな技術があっても、素材以上の味わいは出ない」。素材には徹底してこだわる。
龍力で使用する山田錦は100%、兵庫県“特A地区”産です。
実は、“特A地区”の中でも更にランクが分かれており、三等米、二等米、一等米の上に、特等、特上の格付けが存在します。蔵の割り当て分として、一等米も一部入荷しますが、龍力が使用するのは、最も質の高い“特等”、“特上”ランクです。
正直、価格は驚くほど高価です。
アルコールの提供が自粛されたコロナ禍、日本酒の消費も激減し、業績が一気に落ち込み、会社として非常に厳しい状況にありました。しかし、次年度、次々年度の山田錦の収量を確保するため、酒米は変わらず買い続けました。
農業は一度でも休んでしまうと、復活は困難です。
農家を守るためにも、酒米の購入を継続し、最高品質のお米を使い続ける。
これが龍力の覚悟です。
龍力が目指す“吟醸酒”造り
『大吟醸 米のささやき』は、全体的バランスの品がよく、山田錦の味わいをしっかり出すことをコンセプトにしています。そのため、お酒の骨格となる酒母・麹は40%までゆっくり丁寧に磨いています。味わいになる部分のかけ米は精米歩合50%にし、山田錦の味わいをしっかりと感じられるようにしました。
酵母は大吟醸を牽引した「熊本酵母」です。発酵力が強く、香りを出すのに技術が求められるため、現代の大吟醸では使用する蔵は少なくなりました。また、吟醸酒の火付け役となった「きょうかい9号酵母」の元株であり、貴重な「熊本酵母」は扱える蔵も限られています。
40年以上も山田錦で吟醸酒を造り続け、トライ&エラーを繰り返しながら技術を蓄積してきたからこそ、山田錦の魅力を、最大限に活かすことを一番に考えた精米歩合と酵母です。
また、冷やして美味しいお酒を目指すため、飲酒する時に想定される温度帯と同じ5〜10℃の低温で発酵させる吟醸造りを徹底しております。
綺麗でありながらどっしり骨太、食中でも飲み飽きない、後味がスッとキレるお酒に仕上がります。
蔵の改革と『純米大吟醸 米のささやき』の誕生
日本酒は、大吟醸や純米酒など規格に応じて仕込みをする為、それに応じて発酵をコントロールします。しかし、酵母が生き生きと発酵できるように、個性に合わせて発酵を見守る造りを、5年ほど前から実験的に始めておりました。
これまでの酒造りの流れを変えることになりますので、当初は「そんなことをしても意味がない」「発酵は変わらない」と、社内からはアレルギー反応が大きく、なかなか思うようには進めません。
コロナの大流行が起きたのはそんな時でした。
会社の売り上げは一気に半分以下にまで落ち込みました。
世の中が大きく変わる時、これは社内も変革の時であると考え、大きく舵を切りました。
酒造りは早朝からという、酒造りの現場では当たり前となっていた“朝5時から始まる就業時間”を朝の8時からに変えました。元々、電気の無い時代から続いていた酒造りの当たり前を、現代に即した就業時間に変更したのです。そして、発酵を見守る酒造り。
これらの改革はお酒の品質を上げ、国内外のコンテストで評価されるお酒となっていきました。こちらの思い通りに、無理矢理型にはめるのでは無く、個性を輝かせるために環境を整えることは、発酵の微生物にとっても、人にとっても、大切なことなのだと改めて感じます。
山田錦の魅力を最大限に引き出す酒造りに終始したことで、香りの高いものは大吟醸に、旨みがしっかりしたものは純米大吟醸にと、臨機応変な酒造りが可能となり『米のささやき』の新しい仲間として“純米大吟醸”の商品化につながりました。
蔵の方向性を確立させた『米のささやき』
「大吟醸を世に広めたい」という想いからスタートした『米のささやき』。
より“美味しい”を追求する中で、播州に位置する蔵元として、地元、兵庫県産「山田錦」の魅力にとりつかれ、素材の研究、造りの技術改革を進め、発展させてきました。
そうして、このお酒を40年以上造り続けてきたからこそ、
龍力の核である「米の酒は米の味」だから「最高の素材を使う」。
という、蔵の確固たる信念を築くことができました。
これからも、龍力は『米のささやき』とともに、素材に真摯に向き合い、
プライドを持って『大きく吟味して醸す大吟醸』を造り続けます。
全ては「よろこんでもらうよろこび」のために。
―――――――――『米のささやき』受賞歴―――――――――
◎全国新酒鑑評会"金賞受賞"
◎全米日本酒歓評会"金賞受賞”
◎アメリカWorld Wine Championships世界最高金賞"プラチナメダル受賞”
◎イギリスIWC”ゴールドメダル受賞”&”リージョナルトロフィー受賞”
◎ワイングラスで美味しい日本酒アワード プレミアム大吟醸部門”最高金賞受賞"
◎香港Oriental Sake Awards"金賞受賞"&"大吟醸(芳醇)部門チャンピオン"
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