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50代のための結婚指輪ブランド「Hygge(ヒュッゲ)」。鉱山会社からスタートし、悪戦苦闘の40年を経て誕生した誕生ストーリー。

著者: 株式会社GNH


50代のための結婚指輪ブランド「Hygge(ヒュッゲ)」を発表した株式会社GNHの代表渡部博行は、結婚指輪に40年近く関わっていますが、ジュエリーとは縁がない鉱山会社がスタートだったので、ジュエリーについては全くの素人でした。それが幸いして様々な新しい風を結婚指輪に吹き込むことが出来ましたが、不本意な形で、ネット通販専業の結婚指輪ブランドを起業することになります。このストーリーでは、悪戦苦闘する中で「40代以上限定の結婚指輪」ヒュッゲを開発し、それをこの度「50代のための結婚指輪」にリニューアルするまでの経緯について振り返ります。40年の間に結婚指輪が大きく変化する中で、自分たちにとっての最終形が「50代のための結婚指輪Hygge(ヒュッゲ)」だったのです。


株式会社GNH代表 渡部博行(GNH設立時)


素人ならではの発想で、デザイン性豊かでサイズ直しが可能な新しい結婚指輪を開発。閑古鳥が鳴いていた店舗にたくさんのカップルが来店するようになった。


株式会社GNHの代表渡部博行は、結婚指輪に36年関わっていますが、ジュエリーについては全くの素人でした。1984年に金鉱山も保有する住友金属鉱山に入社した渡部は、1988年27歳の時に貴金属部の新規事業として、ジュエリーブランド「トレセンテ」の立ち上げに参加しました。当時はバブル絶頂期で、素材産業でも異業種への新規事業進出が流行しており、金地金を売るよりもジュエリーを売る方が付加価値が高く儲かるだろうと会社も考えたのでしょう。しかし銀座に大きな店舗を出店したものの、鉱山会社に小売りのノウハウがあるはずもありません。当時は高額のジュエリーが飛ぶように売れていた時代ですが、店舗はまさに閑古鳥が鳴く状況でした。その一方で、当時はジュエリーの悪徳商法(90%値引きの二重価格販売や、若い男性に高額のローンを組ませて販売するデート商法等)が社会問題化していたので、役員から「変な商売をしたら会社をつぶす」というお達しもあり、渡部は進退窮まりました(しかし、それ以来、非常にストイックな商売を続けることになったのは幸いなことでした)。その状況下で、渡部はジュエリーの知識が無くても、比較的取り組みやすい結婚指輪に注力するしか無かったのです。その頃、結婚指輪は万年筆のメーカーが圧倒的なシェアを占めていて、ジュエリーとしての扱いを受けておらず、まったく注目されていない存在でした。当時はまだ、ティファニー、カルティエ、ブルガリ等の海外ブランドも結婚指輪をほとんど扱っていませんでした。その中で渡部は偶然知り会ったジュエリー製作会社、株式会社香輝の黒岩聰と共に、新しい結婚指輪の開発に没頭することになります。渡部がジュエリーの素人であったのが逆に幸いして、結果として結婚指輪に全く新しい風を吹き込むことになるのです。


従来の結婚指輪は、万年筆のペン先を作る技術の応用で、丈夫ではあるものの薄い帯状の形状でデザイン性に乏しく、また購入後のサイズ直しが出来ないため、長く使うことが難しいものでした。渡部と黒岩が開発した結婚指輪は、硬度は劣りますがデザイン性が豊かで、たくさんのダイヤモンドを入れることも可能なものです。購入後のサイズ直しも可能です。この結婚指輪は当時としては革新的で、おしゃれな若いカップルに強く支持されました。WEBサイトや雑誌のゼクシィもない時代でしたが、あるブライダル雑誌に小さな広告を出したところ、閑古鳥の鳴いていた店舗にたくさんのカップルが来店するようになったのです。渡部は黒岩と共にジュエリーの先進国イタリアを何度も訪問し、最新情報の入手に努めました。そして新たに開発した、当時では斬新な立体的フォルムで作られた結婚指輪は、1994年の国際的デザインコンテストに入賞しました。翌年にはそのコピー品が大量にエントリーされたそうですが、そこがスタートとなり日本の結婚指輪デザインは、各社の努力によりその後飛躍的に進化して現在に至ります。


コンテスト入賞の立体的デザイン結婚指輪



2000年代に入ると、大手企業で事業分野の「選択と集中」というキャッチフレーズが流行する中で、住友金属鉱山の子会社だったトレセンテは売却を繰り返されるようになりました。渡部は2007年に退社を余儀なくされ(黒岩はこの年に難病で死去しています)、小さな会社「GNH」を設立しました。店舗を構える資金の余裕は無く、当時としては画期的な、ネット通販専業結婚指輪ブランド「マリッジドマリッジ」を立ち上げました。トレセンテの主要メンバーがGNHに参加してくれたものの、今度はネット通販のノウハウが全くありません。また、その頃はまだ「結婚指輪をネットで買うなんてとんでもない」と考える人も少なくなく、事業の立ち上げには大きな困難を伴いました。それでも銀製の試着用リングを自宅にお送りして選んでいただくという、新たに開発した販売システムが徐々に受け入れられるようになりました。当時はネット通販の競合が少なかったので、幸いなことに翌年には黒字化を達成できました。結婚指輪のネット通販も少しずつ認知が進んでいきました。


同期の男性の結婚をきっかけに、高年齢層向け結婚指輪の需要に大きなチャンスを見出す


当たり前のようですが、結婚指輪はこれから結婚する若いカップルのために企画デザインされ、製作されています。インターネットがさほど普及していなかった2010年くらいまで、ブライダル市場ではリクルート発行の雑誌「ゼクシィ」が圧倒的な影響力を誇っていたので、多くの結婚指輪ブランドはゼクシィの読者を対象に指輪を製作し、ゼクシィに広告を出していました。ちなみにゼクシィが推奨するダンドリによれば、結婚指輪は結婚式の3か月前に購入するものでした。しかし、渡部の運営するGNHはネット通販専業でスタートしたので、雑誌ゼクシィに広告を出すことは控えました。そのため、結婚はするけれどゼクシィとは縁が無いカップルの存在を意識するようになったのです。例えば、結婚式を挙げないカップルや、ゼクシィが想定する読者層よりも高年齢のカップルです。その頃、渡部は40代半ばでしたが、ある日、住友金属鉱山の同期入社の男性からメールを受け取ります。「この年になって結婚することになったが、今さら若いカップルと一緒の売場で結婚指輪を選ぶのは気恥ずかしいから、お前のところのブランドで選ばせてくれ」。渡部は、これだと膝を打ちました。試着用リングを自宅で選ぶという販売形式は、高年齢のカップル向けの販売方法に適していると確信したのです。当時結婚指輪や婚約指輪を扱うブライダルリング専門店が急増していましたが、デザイン開発や販売スタッフの多くは20代の若い女性で、40代のカップルの気持ちに寄り添うことは難しいだろうとも思えました。渡部は、40代50代のカップルを対象にした結婚指輪ブランドの開発を考えるようになりました。


1995年以前の結婚指輪の大半はサイズ直しが不可能で長期の着用に適さないもの。買い替え需要に応える40・50代向けの新規ブランド立ち上げを決意


また、渡部は全く別の発想で、40代、50代の既婚カップルにも結婚指輪が再度必要になるかもしれないと考えていました。それは「結婚指輪を買い替える」という需要です。ブライダル関連のセールストークの殺し文句に「一生に一度のものだから」がありますが、結婚指輪に関しては2回買うかもしれないと考えたのです。それは、渡部が新風を吹き込んだ1995年以前の結婚指輪の大半が、サイズ直しが不可能かつ長期の着用に適さない指輪だったからです。それならいつの間にか着けなくなってしまうはずで、結婚指輪の買い替え需要があってもおかしくありません。


2000年以前は結婚するカップルの大半が結婚指輪を購入していましたが、もし、その中の2%(50組に1組)でも結婚指輪の買い替え需要があるとしたら、それなりの市場規模になるはずです。年間の婚姻数は2023年には約50万組まで減少してしまいましたが、1980ー2000年には平均して約76万組ありました。結婚指輪の買い替えを考えるきっかけとしては、結婚20周年、25周年(銀婚式)、30周年があるでしょう。一番インパクトのありそうな25周年(銀婚式)だけ考えても76万組×2%×20万円=30億円の年間市場が見込まれるのです。渡部は結婚指輪の買い替え需要にも大きなチャンスがあると考えました。そして40代50代向けの結婚指輪と、買い替え向けの結婚指輪をひとつにまとめた新規ブランドを作ろうと決意しました。


新規事業として認められるにはハードルがあった中、小さく生まれた新しいブランド「Hygge(ヒュッゲ)」。ボリュームのあるデザインを採用した大人のための結婚指輪が誕生

 

渡部がGNHを立ち上げ、ネット通販を開始して3年程経つと、販売システムを模倣した同業の競合数が一気に増加しました。そのため、損益面でも苦戦が続くようになり、新規ブランド開発のための十分な資金がない状況でした。渡部は国の「ものづくり補助金」の活用を考え、申請書類を作成しました。全く新しい市場を開拓するアイデアだったし、渡部はこの頃中小企業診断士の資格も取得していて、書類の作成にもそれなりに自信があったのですが、残念ながら採択されませんでした。不採択の理由を事務局に問い合わせると、「そんな市場があるとは思えない」「新規性がない」といった評価だったのです。さらなる説明を追加して翌年に再度トライしましたが、結果は同じで、ごく小さな予算で新ブランドを設立せざるを得なくなりました。


小さく生まれた新しいブランドの名前はHygge(ヒュッゲ)としました。ヒュッゲは北欧の言葉で、「リラックスした快適な時間、空間」という意味で、40代50代の大人のカップルの結婚指輪にはふさわしい名前だと考えたのです。そして、ヒュッゲの結婚指輪の最大の特徴は、自社の従来の結婚指輪と比べて約1.5倍の重量がある豊かなボリュームです。大人のための結婚指輪はどんなものだろうと試作を重ね、スタッフが試着を続けた結果(GNHのスタッフは皆40代50代でした)、年を重ねた大人のくすり指には華奢な指輪では貧弱に見えてしまうことがわかり、豊かなボリュームの指輪を採用しました。また、ボリュームがあるために指輪のデザインはとてもシンプルになり、表面の様々なテクスチャーで、バリエーションを揃え、それぞれに北欧の言葉で名前を付けました。ました。こうして誕生したヒュッゲが、自分たちのためのブランドでもあることをGNHのスタッフ全員が強く意識しました。


(左)従来の結婚指輪(右)ヒュッゲの指輪

ボリュームが異なります


2013年6月にデビュー以来「Hygge(ヒュッゲ)」は小さくても熱心なお客様に支持されるブランドとして支持されている


Hygge(ヒュッゲ)は2013年6月にデビューしました。ブランドのキャッチフレーズは「40代以上限定の結婚指輪」です。プレスリリースを配信したところ、物珍しさからか反応があり、日経MJ等で紹介される等、まずまず順調なスタートを切ることが出来ました。しかし、反響が大きいほどには売上げには結びつかなかったというのが正直なところです。ジュエリーの歴史が浅い日本の場合、大規模なキャンペーンによって新しい市場が作られる例が少なくありません。例えば、「給料の3か月分の婚約指輪」、「結婚10周年のスイートテンダイヤモンド」等です。小さな会社が全く新しい市場を作ろうとしてもなかなか認知されず、売上げに繋がらないのも、やむを得ないことだったのかもしれません。それでも購入したお客様からはとても好評で、ブランドの狙いは間違っていなかったと渡部は安心しました。


ヒュッゲは毎月、一定の売上をあげるようになりましたが、それは当初期待したほど大きなものではありませんでした。それでも、ご購入者からいただくアンケートのコメントは、従来の結婚指輪よりも熱いもので、ヒュッゲが支持されていることがわかりました。こうしてヒュッゲは小さくても熱心なお客様に支持されるブランドとして続いていきました。


ヒュッゲのKuusen(クーセン)_もみの木


10周年を迎え、顧客年齢層の移行に合わせHygge(ヒュッゲ)を「50代に特化した」ブランドにリニューアル


2023年にHygge(ヒュッゲ)は10周年を迎えました。大きなブレイクをすることはありませんでしたが、着実に年を重ね10年が経過しました。その間に渡部は様々な事象を理解することになります。例えば、結婚20周年、25周年(銀婚式)のタイミングでは子供の教育費等の出費が大きいので、記念品に高額の出費は難しい。また、結婚指輪の買い替えにはペアではなくて、女性用だけ1本の需要が多いということです。結婚指輪はペアリングが常識でしたから、これは衝撃的な事実でした。また一方で、ブランドは顧客と共に年をとるという現実があります。第二次ベビーブームの頂点は1974年生まれなので、来年50歳になる人たちです。ヒュッゲのお客様も40代から50代へ移行しているのが顧客アンケートで明らかでしたし、今の40歳にヒュッゲの指輪が適しているのかも、やや疑問に思えました。結婚指輪は世代論的な側面が大きいのです。そのため、渡部はヒュッゲを50代のお客様に特化したブランドにリニューアルすることに決めました。


ヒュッゲのMerkki(メルキ)_しるし


リニューアルと言っても、もはや商品デザインを変更する必要はありません。「50代のための結婚指輪」としてWEBサイトの内容を50代のお客様に寄り添うものに全面的に書き換えることにしました。また、買い替え需要が多いことを考慮して、買い替えのお客様のためのご案内を強化しました。「40代以上限定の結婚指輪」から「50代のための結婚指輪」に集中したことで、ヒュッゲのブランドの特徴はより明確なものになりました。


株式会社GNH代表 渡部博行(現在)


渡部は結婚指輪に関わるようになってから36年が経過し、62歳になりました。最近は結婚指輪コンシェルジェの肩書で活動していますが、残念ながら、自分の子供よりも若い20代半ばのカップルの気持ちを完全に理解している自信はありません。Hygge(ヒュッゲ)は自分が最後に世に送り出した結婚指輪ブランドとして、自分と同年代のお客様のために、これからも「ひっそりとしっかりと」続けていく覚悟です。



50代の結婚指輪Hygge(ヒュッゲ) 

50代のための結婚指輪とは  

50代で結婚指輪を買い替える 

結婚指輪買い替え妻だけ

株式会社GNH https://www.gnh.co.jp/






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