「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会を目指す金融サービステック企業の『モニクル』。約13億円を調達したシリーズBラウンドの裏側に迫る。
株式会社モニクル(以下モニクル)は、金融サービステック企業として、くらしとお金の社会課題解決に向けたサービスやITプロダクトを提供しています。モニクルは、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」を運営する株式会社モニクルリサーチ(旧:株式会社ナビゲータープラットフォーム)と、はたらく世代向けの資産運用サービス「マネイロ」を運営する株式会社モニクルフィナンシャル(旧:株式会社OneMile Partners)の2社を率いる持株会社であり、グループの司令塔としても機能しています。
モニクルは、今年9月にシリーズBラウンドで総額約13億円を調達したことを発表しました。今後は調達した資金を活用し、より一層顧客の多様なニーズに対応できるサービスを拡充し、「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会を目指していく方針です。
今回は、モニクル代表取締役CEOの原田慎司が、シリーズBの資金調達の裏側や今後の展望について語ります。
※2024年2月6日付で、株式会社OneMile Partnersは株式会社モニクルフィナンシャルに変更いたしました。また、2024年9月4日付で、株式会社ナビゲータープラットフォームは株式会社モニクルリサーチに社名変更いたしました。
くらしとお金の新たな価値を創造するモニクル
モニクルは、「自由な発想で、くらしとお金の新しい価値を創造する」ことを目指して、2021年10月に創業しました。モニクルは2013年に設立したモニクルリサーチと、2018年に設立したモニクルフィナンシャルの2社を率いるグループの持株会社であり、グループの司令塔として機能するとともに、ITプロダクト開発などを行う会社です。主に、2社のプロダクト開発を進めるエンジニアやデザイナーなどのクリエイティブ職の社員や管理部門やコーポレート部門の社員が、モニクルに所属しています。
モニクルリサーチでは、2015年からくらしとお金の経済メディア「LIMO」の運営をスタートしました。「LIMO」の記事は、主要ポータルサイトやニュースキュレーションアプリに配信されており、20〜50代の働く世代、特に女性から多くの支持を得ています。今年5月の月間UU(ユニークユーザー)数は1,200万人を超え、国内最大級の経済メディアへと成長を遂げています。
また、2018年に設立したモニクルフィナンシャルは、はたらく世代向けに資産運用サービス「マネイロ」を運営しています。「マネイロ」では、必要な将来資金がわかるWeb診断ツールやファイナンシャルアドバイザー(FA)とのオンライン相談、テーマ別オンラインセミナーを提供しています。利用者は資産運用の基本的な方法を学んだり、FAに直接オンラインで相談することができます。2021年6月には、累計サービス体験者(Web診断ツール、オンライン相談、オンラインセミナーを利用してくださったお客様の累計数)は1万人を超え、2023年10月には10万人を突破しました。ありがたいことに、多くのお客様にご利用いただいています。
サービス向上のための人材採用などを目的としたシリーズB資金調達
最初にシリーズBラウンドに至るまでの資金調達の経緯について、振り返りたいと思います。シードラウンドの資金調達は、2019年8月末に実施していましたが、今思い返すと、当時はまだまだ会社の規模も小さくて、当時事業として軌道に乗っていたのは、「LIMO」だけでした。
そんな中、モニクルフィナンシャルでは、デジタルとリアルを融合したサービス提供を掲げており、ベンチャーキャピタルや事業会社に出資していただくことにしました。これが、シードラウンドでの資金調達です。
具体的には、Coral Capital、マネックスベンチャーズ株式会社、株式会社電通国際情報サービス(ISID)などを株主として迎えました。出資してくださったのは、我々のことを元から知ってくださっていた投資家の方が中心でした。
シードラウンドで出資していただいた資金は、モニクルフィナンシャルの店舗開店資金やFA(ファイナンシャルアドバイザー)や採用関連費用などに使わせていただいたので、2020年はじめにはなくなりかけていました。そこで、2020年からシリーズAの資金調達を始めました。
ただ、そこでコロナ禍に突入してしまい、シリーズAは思った以上に苦戦しました。そんな中でも、私たちの事業の将来性を信じ続けてくださった投資家が集まってくださり、2020年8月にジャフコ グループ株式会社(以下ジャフコ)をリードインベスターとし、新たにみずほキャピタル株式会社(以下みずほキャピタル)を株主に迎えるとともに、シードラウンドで出資いただいていたCoral Capitalにも追加出資いただき、約5億円の資金を調達することができました。
冷え込む市場環境の中、評価された「プロダクトマーケットフィット」
今回のシリーズBの資金調達は、2023年1月に本格着手したのですが、実は始めてすぐにシリコンバレーバンクが経営破綻してしまったんです。すると、どんどん新興市場の株価が下がっていき、投資家さんたちの顔色が次第に悪くなっていくのがわかりました。そんな中、新しく投資する会社に対する視線は、当然厳しくなります。そうしたムードが支配的な時期でした。
そんな中、ありがたいことに目標額以上の資金提供のお申し出をいただくことができました。そうしたお申し出を頂けたのには、いくつか理由があると感じています。
まずは、資産運用がトレンド化する中で、弊社が社会のニーズに合ったサービスを提供できているという評価です。来年2024年には「新しいNISA」の制度も始まるため、社会の関心が集まることが予想できます。
新NISA制度などをきっかけにして、弊社と接点をもってもらえて、さまざまなライフサイクルにあわせた提案ができると、ビジネスとしての拡張性もあると判断していただけたと思っています。社会の状況にフィットし、ユーザー数が加速的に伸び、ユニットエコノミクスもしっかりと成立している。「プロダクトマーケットフィット」ができているということだと感じました。
次は、業績がしっかりとついてきていることです。特に、再現性がある点を評価していただけたと思っています。投資家の方は、「その実績や結果がまぐれじゃないのか?」ということを、ひたすらチェックします。2022年、2023年ともに、事業計画を上回る進捗を見せており、投資家の皆様には安心していただけたのではないかと思っています。
そして何よりも、サービスの提供をしっかりと内製化して、一気通貫でしているところが、弊社にしかないと感じていただけたと思います。投資家さんにとって参入障壁の高さは、必ず抑えるポイントになってきます。
たとえば、私たちはWebメディアを運営しているので、コンテンツもありますし、「マネイロ」のシステムを自社のエンジニアが内製できる技術力もある。FAの研修・教育・マネジメントも自社でやり切れる。金融サービスに係る集客から成約までのすべてを一気通貫で垂直統合で作り切れるところは、他社が参入する壁が高いと評価いただいたように思います。
金融の専門家とクリエイターがしっかり手を取り合って一つのサービスを作れているということが、他社にはない弊社だけの強みです。ありそうでなかったサービスをゼロから作って、人を集めてマネタイズできているところが一番評価していただけたと思っています。
最終的には、前回に引き続きジャフコをリードインベスターとして、株式会社ロッテベンチャーズ・ジャパン、中国電力株式会社、グローブアドバイザーズベンチャーズLLP、みずほキャピタル等を引受先とした第三者割当増資が完了しました。また、株式会社静岡銀行、株式会社りそな銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社商工組合中央金庫からの借入によって、総額約13億円の資金調達を実施することができました。
何よりもありがたいのは、自分たちのサービスに共感してくださった方々が株主になってくださったことです。投資期間は長いので、投資家の皆様との間にも人間関係をしっかり構築したいという思いがありました。株主に対しては、会社にとって重要な情報も開示しますから、気持ちよくお付き合いができる関係性を築きたいと常々思っています。そういう意味では、本当に素晴らしい投資家の皆様に入っていただけて、非常に嬉しく思っております。
「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会にするための存在でありたい
シリーズBラウンドを経て、取り組んでいきたいことは、まずは、既存サービスの拡充です。取り扱う金融商品の幅を広げることはもちろん検討していますが、お客様とサービスの距離感の多様性も作っていきたいと思っています。
技術の進歩や社会状況の変化によって、対面だけなく、オンラインでのやり取りが可能な現代において、金融領域におけるお客様のニーズも多様化が進んでいると感じます。お客様が求めているサービスが、単純に対面かオンラインかの2択だけではなくなってきていると思うんです。
今、私たちが提供している「マネイロ」のサービスは、相談に来ていただいた方にマンツーマンで手厚く対応しています。ただ一方で、そこまで人との接点を求めていない方もいらっしゃると認識しています。ちょっとだけ話を聞きたい方や、ピンポイントで質問に応えてほしい方など、さまざまな方がおられるんです。
私自身、長く金融業界にいますが、金融商品ってとても複雑で抽象的なものだという固定観念があると感じています。そして、複雑で抽象的なものほど、人が介在する余地があると思うんです。
今の世の中は、「対面証券でアドバイスをうけるか」か「ネット証券で自分でやるか」かの2択しかないので、その中間地帯にこぼれおちてしまっているニーズが多くあると考えています。どれぐらい人が介在するのか、どこまでIT化できるのか、細かく細分化されているマーケットだと思うので、金融商品の幅を広げていくとともに、お客様とのコミュニケーションのあり方について、求められる形を追求していく作業が必要だと考えています。
また、現在のお客様は30~40代のはたらく世代が中心ですが、今後はお客様の親御さんやお子さんの世代などへ、カバー領域を広げていきたいと思っています。「モニクル」の社名は、「money」と「lifecycle」に由来しています。すべてのライフサイクルで弊社がお客様に寄り添いたい、力になりたいという思いを込めているので、対象の拡大にも取り組んでいきたいです。
モニクルとしては、今後「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会の実現に貢献したいと考えています。今の時代、お金を増やすための商品もたくさんあるし、お金に関する情報もたくさんあるし、それを買う場所もたくさんあります。ただ、意思決定をするためのサービスがほとんどないんです。
例えば「A」と「B」の2つしか知らなかったら、その2つからしか決められません。でも「C」を知った瞬間に、ものの見方や考え方がガラッと変わることがあります。私たちは、「C」をお伝えする存在でありたいんです。
意思決定するうえでの軸をどうするか、それぞれの方が何を基準に決定するかを自分で判断できるように、サポートしたいと思っています。資産運用を米国株か世界株かどちらで行うか悩んでいる方が、そもそもそれ以前に本当はもっと守りを固めなくてはいけないというケースも散見されます。全体像を見せてあげられるような存在でありたいと思っています。
モニクルグループには、優秀なクリエイターと他者の気持ちを理解できる社員が多く在籍しています。こうした特性を活かして、お客様の多様なニーズに対応できるサービスをさらに拡充し、「誰もがお金に関する正しい意思決定」ができる社会を目指して、進んでいきたいと考えています。
モニクルのシリーズBの資金調達については、オウンドメディア「モニクルプラス」の特集記事で詳しくお伝えしております。よろしければそちらもご覧ください。
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