名古屋の老舗縁日問屋発「セルフ縁日」プロジェクトがメディアの注目を集めた理由
「セルフ縁日」セット(クラウドファンディングのリターン)
名古屋のPR会社・株式会社一旗と名古屋の老舗縁日問屋・株式会社堀商店が共同で企画した「セルフ縁日」プロジェクト。
新型コロナウイルスの影響で全国の夏祭りや花火大会が相次いで中止になり日本の祭り・縁日文化が危機を迎える中、家庭で手軽に縁日を楽しめる「セルフ縁日」セットをクラウドファンディングを通じて支援者に提供し、祭り・縁日文化を体験してもらうことで、次の世代にこの大切な文化を受け継いでいこう、という企画です。
クラウドファンディング「CAMPFIRE」で2020年7月2日から支援者の募集を開始し、7月31日の締め切りまでわずか1か月のうちに支援者は377人、支援金は3,935,120円に達しました。目標200万円に対し、約2倍の成果です。
参考:CAMPFIRE「今年の夏祭りは家庭で!老舗縁日問屋発「セルフ縁日」プロジェクト!祭りを次の世代へ」
どうしてこのプロジェクトがメディアの注目を集め、多くの人々の共感を得て成功したのか。
その裏には、老舗縁日問屋の想いと、地域のPR会社ならではの戦略がありました。
堀商店のみなさん(中央が社長)
名古屋市にある老舗縁日問屋・堀商店は1950年創業。
3代目となる現社長の祖母が戦後の焼け野原から立ち上がり、名古屋で飴を仕入れ東京で販売、東京でおもちゃを仕入れ名古屋で販売するところから商売をはじめ、以来70年、全国のお祭りや花火大会に必要不可欠な縁日関連商品を名古屋の店舗やオンラインショップで幅広く取り扱う問屋です。
創業70年目の今年、新型コロナウイルスの影響で全国の夏祭りや花火大会が相次いで中止になり、堀商店を含め多くの祭り・縁日関係者が苦境に立たされています。
企画の発端は「社会的背景」と「祭りは日本の大切な文化」という想い
「セルフ縁日」プロジェクトのコンセプトを企画したのは名古屋市にあるPR会社・株式会社一旗。NHK出身の代表が2019年に設立した会社です。
堀商店の社長の跡取り、堀新太郎氏と一旗の代表、東山武明が出会ったのは友人を介しての「Zoom飲み会」でした。
商社から家業に戻ってきたという堀新太郎氏から、新型コロナウイルスの影響で祭り・縁日関係者が苦境に陥っていること、それはすなわち「祭り・縁日文化」の危機であることを知らされ、一緒に何かできないかと考えました。
株式会社一旗 代表取締役 東山武明
堀新太郎氏の「日本の祭り・縁日文化を盛り上げていきたい」という想いに応えたい。
「ステイホーム」の空気感が世間を覆う中で、家庭で手軽に楽しめる縁日セットをクラウドファンディングを通じて提供すれば「ステイホーム」と「祭り・縁日の楽しさ」を両立できる。
さらに、売上が減少している一企業の救済ではなく「祭り・縁日文化」をみんなで守っていこうというコンセプトであれば社会的背景に合致し、メディアも含めて多くの人々の共感を得られると考えました。
「あんず飴」はマイナー?地域による文化の違いも
一旗から堀商店に企画を提案し「ぜひ一緒にやろう」ということに。
どんな商品が入っていれば「祭り・縁日ってやっぱり楽しいよね」と思ってもらえるか、アイデアを出し合いながら作り上げていきました。
例えば、出店と言えば「焼きそば」「たこ焼き」「お好み焼き」。だがしかし、「カップ焼きそば」を入れるのはどうか。
であれば駄菓子で代用しようということで「やきそば屋さん太郎」「テキサスコーン たこやき」「テキサスコーン お好み焼」を入れました。
また、一旗の代表の出身は東京ですが、関東の出店では定番の「ソースせんべい」「あんず飴」は関東以外ではマイナーな存在だと判明。地域による文化の違いも浮き彫りに。
クラウドファンディングで全国に支援を呼びかけるのであれば入れた方が、ということで「復刻版ソースせんべい」「ねっておいしいメリーねりあめ」も入れました。
ちなみに、関東では「あんず飴」で人気の味は真っ赤な「すもも漬け」ですが、堀商店の近隣の駄菓子問屋に聞いたところ「関東のお客さん以外は買わないので置いていない」とのことで「すもも漬け」は断念しました。
こうして議論や実験を重ねながら、ヨーヨー風船釣り、スーパーボールすくい、射的、輪投げ、カタヌキ、お面、光るうちわ、光るボトル、花火、駄菓子セットなど、10種類以上の祭り・縁日屋台が体験できる「セルフ縁日」セットが完成。
スーパーボールすくいには光るおもちゃも
当初は「おうちで縁日」という名称を検討していましたが、準備期間に「ステイホーム」の空気感が変化したことを踏まえ、必ずしも家庭内だけではなく保育園や幼稚園など小さなコミュニティでも楽しんでほしいとの想いも込めて「セルフ縁日」という名称でリリースすることに。
2020年7月2日からクラウドファンディング「CAMPFIRE」で支援者の募集を開始しました。
「セルフ縁日」セット 9980円(税込)
「メディアがメディアを呼ぶ」流れ
新型コロナウイルスの影響があらゆる業界におよぶ中、日本の祭り・縁日文化を守ってきた老舗縁日問屋の挑戦という文脈、さらに商社から戻ってきた跡取り息子の戦略という文脈がメディアの関心を引き寄せ、まさに「メディアがメディアを呼ぶ」流れに。
「NHKニュース おはよう日本」、日本テレビ「news every.」、NHK名古屋「まるっと!」、メ〜テレ「アップ!」、東海テレビ「ニュースOne」、中京テレビ「前略、大とくさん」、朝日新聞、中日新聞、日経MJ、中部経済新聞、その他ウェブメディアにも多数取り上げられました。
特にテレビでは堀商店の店舗や近隣の幼稚園児を招いた「セルフ縁日」体験会にも取材が入り、特集として放送。
これらのうち「NHKニュース おはよう日本」、東海テレビ「ニュースOne」、中京テレビ「前略、大とくさん」はクラウドファンディング募集終了後に放送されたため「どうすれば手に入るのか」という問い合わせが店舗に殺到。
あまりにも反響が大きかったため、商品の内容を一部変えて2020年9月に堀商店から「おうちで縁日」セットとして販売されることになりました。
「セルフ縁日」プロジェクトはクラウドファンディングの成功だけでなく、堀商店の本業にも良い結果をもたらすことができました。
参考:堀商店
地域のPR会社だからこそ地域に寄り添う
祭りや花火大会に必要不可欠な縁日関連商品を扱う老舗縁日問屋・堀商店のポテンシャルの高さと、地域のPR会社だからこその地域に寄り添った戦略の組み合わせが、成功の要因だったと分析しています。
新型コロナウイルスの影響で、今年中止になった祭りや花火大会がいつ再開できるか見通しが立ちません。
そういった意味では、クラウドファンディングは成功しましたが「祭り・縁日文化」の維持はむしろ道半ばです。
今回の企画によって、世界に誇る日本の大切な文化である「祭り・縁日文化」の危機をたくさんの人々に知っていただき、その文化を守っていくにはどうすれば良いかを考える機会になれば幸いです。
株式会社一旗では、東海地方を中心とする中小企業の課題に寄り添い、初期費用を抑えたレベニューシェア方式や小規模事業者持続化補助金を活用した新商品の企画開発支援やブランディング、クラウドファンディングの企画開発支援を行っています。
また、独立行政法人中小企業基盤整備機構の実務支援アドバイザーとして中小企業のPRの支援も行っています。
興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。
参考:株式会社一旗
堀商店のみなさんと一旗代表東山武明(左)、広報佐々木由起子(右)
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