【音のプロに聞いてみた!②】音楽療法に学ぶこころの守り方
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音のプロに聞いてみた!シリーズ概要
40年以上に渡り商業施設や家電の最新の音を手掛けてきた
サウンド・スペース・コンポーザー井出 祐昭氏に
仕事の裏側や、私たちの傍にある音の問題、
今からでもできる音の工夫について聞いてみました。
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子育てや仕事で忙しかったり、一息つく時間が少なかったり、最近だと家にいるばかりで何だか悶々としてしまったり…そんな人にこそ是非読んで欲しい今回のテーマ、「音楽療法に学ぶこころの守り方」。
音楽で元気になったり、心が軽くなったりした経験は皆さんにもあると思いますが、その奥深さに切り込んでみました。
音楽で癒されるってどんな仕組みなんですか?
ー音楽療法の世界では、「同質の原理(Iso-principle)」というものをベースに治療を行っていきます。これは、自分と同じ心境だと感じる刺激でないと受け付けられない、心も開かない、という原理原則に従い、今の心境に似た音楽を聴いていく方法です。
つまり、自分が鬱の時はより鬱にする、より悲しくなったりするような曲をどんどんかけて行きます。あれ?逆効果のように見えますよね。出来れば明るい方向を向いてほしいですよね。
確かに実際にどんどん気持ちも沈んでいくのですが、あるところから防衛本能のようなものが働いて、V字回復していく瞬間が来ます。
「光は天だけにはなくて、一番低いところにもある」と言ったところでしょうか。悲劇の果てにも必ず光があるという話も聞いたことがあります。
V字回復していくと、自然と晴れ晴れした景色が見えてきて、今まで見るのも嫌だったものが優しく見えてきたり、暗く見えてしまうサングラスを掛けていたんだな、ということがよく分かってきます。
こうして少しずつ気づいていくことが、快復に繋がっていくという仕組みです。
「泣ける」が大事?
ーこの原理原則ですが、実用的に言うとすれば、「泣ける」というところに集約されるなと個人的には考えています。
「泣ける」というのは凄いことです。
例えば、大切な人やペットが亡くなった時でも思いっきり泣けない時があります。
特にお葬式等では近親者の対応や手続き等やることだらけで泣いている暇がない、というのは残念ながらよく聞く話です。
泣かないでいると、物凄く苦しくなります。我慢すると、鬱積した状態が続き、悲しみをより引きずることになります。
泣けるときに心底泣く。これには、「浄化効果」があります。カタルシス効果とも言って、音楽の世界では大切にされている考え方です。
泣くには、どうすればいい?
ー泣くことによる効果は、あまり先延ばししない方がいいです。
熱中症みたいなもので、本格的にそうなってからだと、悲しいものを聴こうとする気にもならない。何が良かったかもわからない。暗中模索で、路頭に迷ってしまいます。それでは遅いので、「やばいな」と思い始めた前半のほうにやっておくと、心が維持できます。
とは言え、いきなり「泣こう」と思っても出来るものではありません。どうすればいいか?
日頃から、自分の中に「ぐっと来て泣ける」というツボを身近に持っておくことがすごく大事です。
泣く理由は、直面しているものそのものじゃなくても、うれし涙でも何でもいいです。笑うツボを抑えるように、泣くツボも抑えておくと自分を守れます。
大切な人のものも分かっておくと、さりげなく逃してあげれるかもしれないですね。
日本では、泣いたら弱いとか、男のくせにとか、大げさに反応されることも多くあると思います。それでも、思いっきり泣くというのは物凄く大事だということを忘れないで頂けたらと思います。必要だからある機能です。
感情の中でも怒るとか笑うとかは出やすいけど、泣くってのは出にくいですよね。人と人が引き離されてしまっているこれからの潜在ストレス時代に、生き抜いていくコツになると思います。
改めて、泣く姿を見せるというのも恥ずかしい所もあるから、自分としては効果が良く分かっているので、お風呂の中でシャワーを浴びている時に思いっきり悲しくなる体でやっちゃってます。
プロフィール
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井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザー Sound Space Composer
有限会社エル・プロデュース代表取締役
井出 音 研究所 所長
ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。イマジネーションを最大限に喚起する次世代の立体音響システム“ELPHONIC”を開発し、医療・健康分野との関連も深めている。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。
http://elproduce.com/
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