コロナ禍の社会に広告会社ができることは何か 『観光復興ガイド』誕生秘話
株式会社TBWA HAKUHODOのコンサルティングユニットDisruption Consultingの田貝と申します。私たちは、社内の有志メンバーと株式会社PR TIMES様、一般社団法人FUKKO DESIGN様とともに、コロナ禍で深刻な打撃を受けている観光業界に向けて、ソーシャルボイス分析から見える新たな兆しとその後の打開策をまとめた『新しい時代に対応する観光復興ガイドーSNSから見える企画のタネー』を発表しました。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって社会が大きく揺れ動く中、今までの当たり前を見直したり、自分たち事業や製品の存在意義を考え直した方は多いのではないでしょうか。私も広告業界に従事するひとりとして、この社会において「自分には何ができるか」を考え、仲間と共に生んだひとつの答えが、この観光復興ガイドだと考えています。
今回はこのガイドについて、どのような経緯・プロセスを経て生まれたのか、その背景についてお伝えします。観光復興ガイドをご存知の方でその背景に興味を持っていただいた方はもちろん、私と同じようにこのコロナ禍の社会において「自分には何ができるか」と考える人にとって、私の辿った軌跡が少しでもヒントになれば幸いです。
「自分たちはどこまで社会に貢献できるのか」
2020年5月、このガイドの構想は、TBWA HAKUHODOの社員でありながら地域の復興支援を担う社団法人FUKKO DESIGNの理事を務める木村によって生まれました。
コロナによって壊滅的な被害を受けていた観光業界の事業者や自治体関係者から相談を受けていた木村は困っている観光事業者が活用できる情報提供の必要性を感じ、過去に別の案件で協働していたメンバーを招集します。
集められたのは、SNSの声を分析して世論を把握しブランド戦略を立案する65dB TOKYOのメンバーと、普段は広告クリエイティブの表現を考えているデザイナー、そしてTBWAの持つ『Disruption®︎』という発想法を武器に企業の事業戦略を立案するDisruption Consultingの私でした。
プロジェクトのキックオフで議論されたのは「なぜやるか」ということ。
このコロナショックに際して多くの支援ツールが世の中に出ている中で広告会社である「自分たちがやるべきことは何か」を話し合いました。
この問いに対してエグゼクティブ・クリエティブ・ディレクターの近山から提示された指針は「自分たちがどこまで社会に貢献できるか」を検証してみようということ。
広告会社の自分たちがこれまで得てきた社会の潮流を捉えて変化を促す知見を、今の観光業界に還元する。そして、TBWAが培ってきた新たな市場創造を促す思考法『Disruption®︎』を、観光業界のニューノーマルを生み出すために提供する。その結果、観光業界にどこまで意味ある変化を起こせるのか。それを検証しよう。この意思を統一した私たちは、動きはじめました。
(TBWA HAKUHODOのメンバーたち。筆者は右上の赤い帽子。)
価値観の変わった社会で求められる観光とは何か
キックオフの次に考えたのは困っている事業者の方へ「何を提供すべきか」。
コロナによって人々の観光に対する考えは大きく変わっている。では、どう変わったのか、そしてこれからさらにどう変わっていくのか。
復興アクションを起こす上でまずは世の中の変化を捉える必要を感じた私たちは、65dB TOKYOチームによるSNSの声の分析によって『人々の旅行に対する考え方』と『旅行意欲を高める20の兆し』としてまとめました。
こちらの65dB TOKYOチームがどんなプロセスでこの分析をしたのかについては、ぜひこちらのレポートをご覧ください。
そして、この人々の価値観の変化に対してそれぞれの観光事業者や自治体は何をすべきか。価値観の変わった社会で求められるそれぞれの事業者に合わせた観光のあり方を、コンサルタントの私は考えることにしました。
コロナショックで被害を受けている点では共通している観光事業者も、当然ながら復興のために取るべきアクションはそれぞれの状況によって異なります。
普段は個々のクライアント企業に合わせた提案をしている私は、できる限り多くの観光事業者の方が最適なアクションを取ることができるように、「観光事業者それぞれが自分に合ったアクションを考えるサポート」が必要だと感じました。
では、そのサポートを「どう提供すべきか」。
Disruption Consultingでは、コロナショックに際して最適なアクションを考えるための方法を既に開発していました。TBWAのDisruptionメソッドを元にコロナによって変化した生活者の価値観に合う企業の理念の実現方法を見つける『ビジョン策定フレームワーク』(https://www.disruption-consulting.com/resources/disruption-primer/anti-covid/)なのですが、クライアント企業へのコンサルティングにこのフレームワークを使っていた私は「できる限り多くの人がこの考えを再現できるように」簡易化した『企画の公式』を開発しました。
この公式は時間の無い観光事業者の方ができる限り簡単に自分たちの最適なアクションを考えられるように、本質的な要素を絞り込み3つのステップにまとめました。
まずは65dB TOKYOが分析した20の兆しから自社にとって重要な①兆しを選ぶ。
次に自社が活用可能な資産を洗い出し兆しに対応するための②資産を選ぶ。
そして、①と②を掛け合わせて対応するための③企画を考える。
これであれば普段企画を考えるのに慣れていない方もスムーズに考えることができるのではないかと思いました。
ひとりでも多くの観光事業者が「行動を起こす」ために
しかし、この企画の公式に沿って考えることを意識しすぎるあまり行動に起こせなければ本末転倒です。
最も重要なのは復興のためのアクションをひとりひとりが起こすこと。
ガイドやイベントでは、この「とにかく行動してほしい」という想いを強く伝えることを心がけました。
「どうしよう」から「やってみよう」へと一歩踏み出す後押しに
2020年6月、キックオフから約1ヶ月を経て全70ページにわたる『観光復興ガイド』はリリースされました。
結果、公開されたガイドに対してSNSでは「どうやって企画に仕立てればいいかが、懇切丁寧に書かれている」、「読み手の行動につなげるお手本のようなガイド」といったお褒めの言葉をいただくことができました。
そして、特に「やった意味があった」と実感した瞬間はこのガイドを使って観光事業者の方が生み出した新しい企画を目にした時でした。
■観光復興ガイドから生まれた企画の一例
【期間限定コース・蘇る昭和30年代の東京コース】オープンエアなバスで歴史の視点から東京観光!(日の丸自動車興業株式会社)
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000046643.html)
【go to キャンペーン対象】『おいしい旅』の旅行会社が新サービス開始:「5つのテーマ」で日本を味わう特別な旅へ(株式会社 Table a Cloth)
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000059922.html)
ガイドを使って企画を考えられたというTable a Clothの岡田様は、「この窮地にできることをあれこれと考えながら『どうしよう』と思っていたけど『やってみよう』に意識が変わった」と感想をいただき、ここまで仲間と考えてきた観光事業者それぞれの復興アクションをサポートすること、そして重要なメッセージとして伝えてきた「考えるだけではなく行動してもらうこと」が実現をしたこと感じました。そして、プロジェクトの当初にメンバーと意思を共にした「自分たちはどこまで社会貢献できるか」について、たったひとりの声ではありますが確かな貢献の実感を得た瞬間でした。
新しい観光はまだはじまったばかり
夏の観光シーズンが終わり、観光事業者の皆様は秋の観光施策を考えられている方も多いと思います。この2020年の秋もコロナは収まる気配を見せず、ウィズコロナの観光を考えないといけないことは明らかです。
今回観光復興ガイドでご紹介した20の兆しは一過性のものではなく、今秋のウィズコロナ観光を考える上でも捉えるべきものだと考えています。
そして、その兆しに対してみなさんがどうアクションすべきかを考える企画の公式は普遍的に活用可能なものです。
一番大事なのはこの窮地に際して観光事業者の方それぞれが行動を起こすことだと考えていますが、その行動を起こす一助として観光復興ガイドを参考にしていただけるのではないかと思っています。今回ご紹介した日の丸自動車興業様や、Table a Cloth様のような新しい観光をつくる企画が、まだまだ出てくるはずだと思っています。
また、今回このプロジェクトをご一緒したPR TIMES様では観光復興ガイドを活用して企画を考えた事業者の方に向けて、無償でプレスリリースの発信が可能なプランを、期間・枠数限定でご用意いただいています。企画を考えたらお客様やメディアに届けるために、ぜひプレスリリースで発信してみてください。
■プラン詳細はこちらからご覧ください
https://tayori.com/form/41800a312861a297f29dc0be1e7904040221c288
そして、みなさんが行動を起こす後押しになればと思い、PR TIMES様とコラボしてガイドの活用法をご紹介するイベントの第2弾を実施することにしました(※第1弾はガイドを公開直後の7月に実施)。イベントでは先ほどご紹介した日の丸自動車興業様、Table a Cloth様にもご登壇いただき、実際にガイドをどう活用して企画を考えられたかをお話いただきます。
『観光復興ガイド』実践編~復興実践者と考える変革アクション~
日程:9月29日(火)17:00 - 18:00(60分)
会場:オンライン開催(Zoom)
ゲスト:
日の丸自動車興業 難波 優介様
Table a Cloth岡田 奈穂子様
タイムテーブル:
16:50 入場開始
17:00- オープニング
17:05 - 17:20 ガイドについてご紹介
17:20 - 17:55 パネルディスカッション『復興アクションの実践』
17:55 クロージング
申込:
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_CUA__HXoTlG4lecYBQlrQQ
既に観光復興ガイドをご存知だった方はもちろん、この機会にガイドに興味を持たれた方もぜひ参加してみてください。
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