介護に美容のチカラで健康を、高齢者に笑顔を。日本介護美容セラピスト協会、今伝えたいこと。
一般社団法人日本介護美容セラピスト協会は、高齢者の日常生活の自立度の向上を目的に、2014年に設立しました。代表理事である谷都美子が、化粧品会社の美容部長の経験から、高齢者にメーキャップやマッサージトリートメントの施術を行うビューティタッチセラピストを養成する事業を開始し、1,938名のセラピストを輩出。(2020年9月16日現在)高齢者施設や、地域での活動など、さまざまな介護美容活動をしています。谷は1990年代から、ボランティアの施設訪問にて「化粧療法」を開始。1996年以降はさまざまな大学と共同で学会発表を行うなど、高齢者や認知症患者に対する研究と現場に寄り添った活動をしてきました。30年近く、化粧療法に携わってきた谷に、介護美容の今について聞きました。
谷都美子 プロフィール
日本介護美容セラピスト協会 代表理事
株式会社ナリス化粧品 美容担当部長
武庫川女子大学 薬学部 健康生命薬科学科 客員教授
ビューティタッチセラピーとは?
そもそも、「ビューティタッチセラピー」とは?
谷)メーキャップやマッサージなどの肌に触れるケアを通して、「心」と「脳」「体」「肌」の健康を推進する美容療法です。ですので、育成している「ビューティタッチセラピスト」は、言わば「心と体の美容療法士」。心と体の両方に専門知識を持って寄り添うセラピストです。
ビューティタッチセラピスト、認定者は6年で続々と増えているとのこと。どんな方が受講して、どのような活動をされていますか?
谷)若い方だと10代の方から、高齢の方だと認定当時87歳、現在92歳の女性まで幅広い世代の方、最近は男性のセラピストも増えてきました。今は全国に17名の男性セラピストが活躍していますが、全体では圧倒的に女性が多く、2020年9月16日までに1,938名の方を認定しています。
既に介護士や看護師の資格をお持ちで、ご自身の所属する職場で導入したいという方や、美容に関わるエステティシャンなどが、高齢お客様に対応できるようにと取得したり、ご自身のご家族にしてあげたいと受講される方が多いですね。また、地域包括ケアの一環として自治体と連携し、在宅の高齢者にケアをしておられる方も多いです。また当協会の介護美容の取組は、メーキャップなどの美容だけでなく、運動を取り入れたり、マッサージトリートメントによって脳の認知機能にも良い影響がありますので、そもそも健康に良いという認識が広まってきました。セラピーを受けられる方も、女性だけでなく男性からの要望も多いです。
(ビューティタッチセラピスト 牧野香織・名古屋市)
(レッスン形式のイベントの様子)
介護の世界こそ、正しいエビデンスを
様々な学会発表をしていますが、今までにどんな成果がありましたか?
谷)介護美容は、高齢化社会になったことで生まれた、必要な新しい分野です。1990年代、比較的早い段階から、この分野に携わってきた責任からも、経験や勘だけで判断することはできないと考えています。
今までに、セラピーによるリハビリの効果検証や、マッサージトリートメントによる脳の賦活効果の検証など、様々な研究を行ってきました。私たちだけでできない研究も多くの大学や病院の協力を得て、多くの知見を得ることができています。特に認知症の方は、うまく感情を言葉にできない方もおられますので、聞き取りだけでなく、脳波測定を行ってきました。こうした研究は、介護される方だけでなく、介護をするセラピストのためでもあります。きちんとしたエビデンスを持って習得したスキルや知識は、セラピストの自信にもつながりますし、介護のやりがいにも繋がります。介護美容は、美容的な意味合いだけでなく、そもそも健康に良いということを、責任を持ってしっかりとお伝えしていくためにも、このような研究は継続して実施し、正しい知識や理論を伝えていきたいです。
(ハンドマッサージの脳波検証の様子)
(フットマッサージの脳波検証の様子)
今こそ、高齢者との関りを
コロナ状況下、介護美容のニーズの変化はありますか?
谷)こういう状況ですから、なかなか今までと同じように活動をすることは難しいです。ただし、高齢者が人と会わない、会話をしない、動かない、状況が長く続くことは、体力や気力を失っていき、認知症患者の認知の進行を進めてしまうことになりかねません。高齢者との直接の触れ合いは、ご家族や施設の方針によって様々です。こういう状況だからこそ、セラピーをしてほしいというご本人の声や、ご家族の声、また施設の声も多いです。また、施設でのイベントでは、1対1のセラピーだけでなく、ご自身でできるセルフハンドマッサージを複数の人数で集まり、レッスン形式で取り入れるなど、今できることを始めています。
(ビューティタッチセラピスト 小川真由子・大阪市)
(ビューティタッチセラピスト 富田昌之・愛知県海部郡 於:デイサービスセントラル)
実は、ハンドマッサージは、東日本大震災の後、被災者の心を癒すためにも行いました。ハンドマッサージは触れるということだけでなく、会話をすることが、相手の心を癒す効果があります。新しく始めた「温かセルフハンドマッサージ」は、レッスン形式で、自分で自分の手をマッサージする技術ですが、手指の動きがスムーズになるという機能訓練の一環としても好評です。 レッスン形式で、参加者同士が二人一組になり、手を取って触れ合うことで血流アップと冷え予防になりますが、何よりも思わず笑顔がこぼれます。そういった現場にいますと、こういう時だからこそ、会話や笑顔、コミュニケーションを絶やしてはいけないと思います。
(防災イベントでのハンドマッサージの様子)
(セルフハンドマッサージのレッスン)
高齢者は、今まで遭ったことのないコロナ禍の中で、計り知れない不安を抱えておられると思います。触れることは、もちろん基本的に最も大切なことですが、オリジナルのアロマオイルを使ったケアや、生花を使ったフラワーセラピーなどもレッスンとして取り入れていますが、五感に関わることをすべて使い、心や身体を癒す方法を提示していきたいですね。
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