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生成AIが個人のはたらき方と人材ビジネスを変革する―パーソルグループの生成AI活用

著者: パーソルホールディングス株式会社

パーソルグループは中期経営計画2026において、事業成長のエンジンとしてテクノロジーを掲げています。テクノロジーによる従業員のはたらく環境のさらなる改善をはじめ、コア事業のサービス価値の向上や新たな価値創造に積極的に取り組むなか、生成AIの活用をグループ全体で推進しています。


今回は、グループ全体の生成AI活用をけん引するパーソルホールディングスの朝比奈に、生成AIの活用状況と将来の展望について聞きました。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。

生成AIの爆発的普及に衝撃を受け、いち早く活用を決断

—パーソルグループの生成AI活用はどのようなことをきっかけに始まったのでしょうか。

ChatGPTの登場をきっかけに、生成AI活用に関する取り組みをスタートしました。私自身、これまで幾度となく訪れた「AIブーム」を目の当たりにしてきましたが、ChatGPTはリリースから瞬く間に利用者が拡大しており、危機感のようなものを覚えたのがはじまりです。機械学習やデータに関する知見がなくてもスマホひとつでだれでも簡単に使え、工夫次第でさまざまな業務に適用できる。実際に体験してみて、一過性のブームでは終わらないと確信しました。


こうしたテクノロジーが世に出た以上、この流れが止まることは考えにくい。それなら想定しうるリスクを洗い出して対策を講じながら、積極的な活用に乗り出した方が健全ではないか。そう考え、すぐに開発部門や法務部門のトップに直接はたらきかける一方、経営陣に生成AIの活用を進めるべきと提案しました。パーソルホールディングスはこれまでグループ各社の調整役を担うことが多くありましたが、今回に関してはパーソルグループをリードして取り組みを進めています。

—生成AIに関する取り組みはどのような体制で行われているのでしょうか?

まず、パーソルグループでは、1.事業変革、​2.業務活用​、3.共通利用​の3つの領域でAI技術の利活用を推進しています。

3.共通利用の領域では、グループ社員向けのプラットフォームやツールの提供、また運用ルールやガイドラインの策定など、基盤となる部分をパーソルホールディングスが責任をもって担当します。ホールディングス内には、パーソルグループ全体の生成AI活用促進を目指す専門組織「Generative AI Hub室」を2023年8月に新設し、スムーズな運用ができるような体制づくりを行っています。


​2.業務活用​の領域については、各社・事業ごとに進めることで生成AIの事業/業務への適用を加速させています。​既に一部既存事業・サービスにおいては、生成AIの導入を開始​しているところもあります。


1.事業変革​の領域については、生成AIによる新規事業の創出といった事業変革につながる取り組みを、ホールディングスの経営陣がその都度判断を行っていく想定です。


その中で私はCIO/CDOのもと、グループ各社の業務をデジタル化する施策の一環として、生成AIの活用を推進、けん引する立場にいます。


—現在、ChatGPTを業務利用しているのでしょうか?

まずは、社員が安全にChatGPTを業務利用できるよう、内製で、パーソルグループ専用環境のGPT「PERSOL Chat Assistant」を構築​し、2023年6月からテクノロジー部門やホールディングスの企画機能を中心に業務利用を開始しました。並行して、ガイドラインやルールづくりを進めながら、半年ほどかけてグループ各社に展開していきました。

パーソルグループのChat Assistant(愛称:CHASSU)は共創を大事にしたいと考え、プロンプトギャラリーという、プロンプトのテンプレートを共有できる機能を有しています。またTeams版や、研修、イベントを通じて生成AIマスターになってもらう「学習マップ」もリリースしています。

加えて、ヘルプデスク業務の効率化につながる、生成AIを活用したオリジナルのチャットボットの展開なども進んでいます。今後は各社の利用実績やノウハウを共有するほか、より簡単に利用できるよう既存システムへの追加なども念頭に活用頻度を上げる取り組みを進めていくつもりです。


パーソルグループは、全社を挙げてテクノロジードリブンの人材サービス企業を目指していることから、関係者のいち早い理解と協力を得ることができました。


万全の対策でサービスへの実装を目指す

—人材ビジネスと生成AIの親和性についてはどう評価されていますか?

親和性はかなり高いと考えています。たとえば求人企業が作成する募集広告の文面、求職者が応募書類を自動作成する場面など、生成AIを利用すれば大幅に簡略化できるプロセスはたくさんあります。また、採用条件や経歴といった基礎的なデータに加え、たくさんの非構造化データが存在していましたが、生成AIを利用することでマッチング精度の向上や、かかる時間を大幅に削減できる可能性があります。さらに生成AIは使えば使うほどログが溜まり、新たなノウハウの蓄積も期待できます。そういう意味で人材ビジネスと生成AIの親和性はかなり高いのではないでしょうか。

—人材ビジネスの高度化には個人情報を含めた機微情報の活用も関わります。セキュリティやガバナンス面についてはどのような対策を?

私たちはあくまでも皆さまから情報をお預かりしてサービスを提供する立場です。パーソルグループでは、個人情報はユーザー自身のものであるという認識のもと人材ビジネスを運営しており、生成AIも例外ではありません。皆さまが安心してサービスをご利用いただけるよう、ガバナンスやセキュリティ対策には万全を期し、事業部間でのデータ共有も最低限に留めるなど厳格なルールに基づき運用管理を行っています。また、ユーザーの皆さまが不快に感じるようなデータ活用は厳に慎むため、事前の審査体制も確立しています。求人企業や求職者の皆さまから信頼いただける環境づくりには最大限の力を注いでいます。

—生成AIの発達は「はたらき方」にも大きな影響をもたらすといわれています。朝比奈さんはどう思われますか?

だれもが簡単に生成AIを活用するようになれば、これまでなかなか自動化の恩恵に浴せなかった領域にも効率化の波が広がっていくことが予想されます。定型業務や軽作業を外部にアウトソーシングしなくて済むようになったり、はたらく人たちも単純作業やルーティンワークから解放されるようになったりすれば、より創造性の高い領域ではたらく方が増えるでしょう。もちろんパーソルグループの社員もこの変化と無縁ではありません。現在提供している人材サービスの方法論が変われば、私たち自身のはたらき方も大きく変わるはずです。

—生成AIの発展が起爆剤となり、これまでになかったような新しい職種が生まれるかも知れませんね。

そうですね。AIと共創しながら生み出される(もしくは創出される)新たなサービスや職種が脚光を浴びる可能性は十分あります。これから5年、10年先にどんな状況になっているか予測するのは難しいですが、人材ビジネスもアップデートが必要になるのは間違いないでしょう。私たちが生成AIに着目しいち早く取り組みはじめたのは、どんな未来が訪れようとも対応できる力を蓄えるためでもあるのです。

生成AIを人と人の暖かな交流や夢を実現するために使いたい

—パーソルグループとしてはどのような方向で活用を進めますか?

グループ企業とはいえ、業態やサービス、IT活用レベルは各社さまざまです。生成AIについても、これまで蓄積したデータやノウハウに加え、さまざまなデジタルテクノロジーとの合わせ技で、活用の幅を広げていきたいですね。まずは現場で活用の可能性を追求しながら、複数の大規模言語モデルを強みに応じて使い分けたり、当社ならではのファインチューニングをして効果を高めていく想定です。ホールディングスとしては、専門人材による支援や活用ノウハウの提供を通じて各社のレベルアップを後押ししたいと考えています。

—生成AIの活用において大切にすべきポイントはどこだと思われますか?

いまはまだ社内の業務効率化が活用の中心ですが、事業やサービスにも実装していきます。技術はどんどん進化し、経験してみなければわからないことは少なくありませんから「トライの回数をいかに増やすか」が成否を分けるカギになるのではないでしょうか。皆さまの信頼を損なわず、安心して使っていただける優れたサービスを開発するためにも、いまはとにかくチャレンジする頻度を高めることが大事だと考えています。

—今後の目標を聞かせてください。

生成AIの広がりは、これから人々のはたらき方に大きな変化をもたらすことでしょう。生成AIが業務効率や生産性向上に貢献するのは間違いなさそうですが、生成AIはエクセルやパワーポイントの必要性を今問う人はいないように、数年のうちにコモディティ化するでしょう。


私は生成AIを含むテクノロジーは、人々のWell-beingのために活用すべきだと考えています。コロナ禍に入る前のことです。私は大学生時代にお世話になったホームステイ先の“ママ”と、SNSを通じて25年以上ぶりにつながれたという実体験があります。私の学生時代の連絡手段は文通でしたので、連絡先が分からなくなってしまい交流が途切れていましたが、SNSを通じて再会することができました。

いま指にしている指輪は再会後、“ママ”から譲り受けたものなんです。彼女が身に着けていたものを受けついでいく喜び、また身に着けるたびに感じる“アメリカのママ”を想う気持ち、これはテクノロジーからは生まれません。


テクノロジーは人々の暮らしを便利にします。これまでは実現が難しかったことも、テクノロジーの進化により、効率化、自動化、高度化が図れます。折角の技術ですから最大限活用していき、まずは社員が煩雑な作業や心理的負荷のかかる業務などから解放され、取り組むべきことに集中でき、日々の仕事に喜びや楽しみを感じられている “はたらくWell-being” が実現できている状態を1つでも多く作り出していきたいと思っています。


さらには時間の余裕も生みだし、“アメリカのママ”と私が時間と距離を超えて再び暖かな交流ができたような豊かな時間を、もっと生み出していけるようにしたいと思っています。


※2023年12月時点の情報です。


パーソルホールディングスが運営するWebメディア「TECH DOOR」では、パーソルグループ内で取り組んでいるITプロジェクトを紹介しています。本記事と併せてぜひご覧ください。




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