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atama plusは「最初の100人を熱狂させるプロダクト」をどうつくった

著者: atama plus株式会社

私たちatama plusは本日、プロダクト開発時のユーザー像として掲げている高校生のペルソナ(※)「藤井真一」と中学生のペルソナ「藤井純二」を外部向けに公開しました。モデルを登用し撮影したイメージ画像や3Dフィギュアを作成し、オフィス内で常に視界に入る場所に設置しています。

本稿では彼らを通じて得た、スタートアップにおけるプロダクト開発の学びをみなさんと共有してみたいと思います。


※ペルソナ:1990年代にアラン・クーパー氏が提言したペルソナ/シナリオ法というユーザー要求分析の手法で、仮想のユーザーをモデル化したもの。



最初に熱狂する100人は誰だ

「プロダクト開発においてペルソナの作成が大事」とはよく言われるものの、大抵は一部のデザイナー陣だけがペルソナを作成するだけで終わってしまい、社内には全然浸透していなかったりします。そんな中、モデル費、衣装費、スタイリスト費、スタジオ費、写真加工費、ポスター作成費、3Dフィギア作成費等と結構なコストをかけてまでなぜペルソナにこだわるのか。話は創業期にまでさかのぼります。


2017年4月、創業したばかりのatama plusのオフィスでは「最初の100人が熱狂するプロダクトを作ろう」というポスターが壁中に貼られていました。圧倒的なプロダクトを作ればビジネスは後からでもついてくる、という信念のもと、“マネタイズ”なんて議論もなくプロダクト作りに専念していました。


ではどんなプロダクトを作るのに専念したのか?スタートアップは局地戦です。大企業に比べれば人も金もリソースが限られます。あれもこれもの機能を作っている余裕はありません。まずは100人でいいから「熱狂する」レベルのプロダクトを作ろうと決めました。


その100人はどんなユーザーか?


atama plusは中高生にプロダクトを提供していますが(創業当初は高校生のみ)、どのくらいの学力の生徒なのか、学習に対するモチベーションはどの程度なのか、どういう環境で学習するのか等、一口に“ユーザー”といっても色々なユーザーがいます。


そこでペルソナの出番です。最初に熱狂させたいユーザーはどんな人なのか、できるだけ具体化し、皆で認識を揃えました。「ユーザーが熱狂するプロダクトを作る」と言っても、人によってイメージする“ユーザー”が異なれば、それぞれのユーザー向けの機能が入った“それなりの”プロダクトにしかなりません。


例えば“学習意欲の低いユーザー”をターゲットにするようなプロダクトは沢山ありますが、それをひとまとめにするのは危険です。人によってそれは「受験直前期に皆が部活も引退して学習に多くの時間を使っている」という集団の中での“学習意欲の低いユーザー”をイメージするかもしれませんし、また別の人は「夏休みに皆が遊びほうけていて、まだ夏休みの宿題には誰も取り組んでいない」ような集団の中での“学習意欲の低いユーザー”をイメージするかもしれません。


誰しも、より多くのユーザー向けのプロダクトを作りたいと考えると思いますが、いきなり「皆が」「熱狂する」プロダクトを作るなんて無理です。「100人が熱狂する圧倒的なプロダクトを作るか」、「皆がまあまあ使いやすいようなそれなりのプロダクトを作るか」、スタートアップの戦い方は前者です。


私たちがターゲットとする生徒をできるだけ具体的に、メンバー全員が共通認識を持ちやすいようにペルソナとして定めました。藤井真一君、高校2年生、最近学校の授業についていけなくなってきたので塾に通い始めたという生徒です。具体的に、居住地、学校名、部活、塾名、志望校、学力、学習姿勢、理解力、学習時間、趣味、よく使うアプリ、インターネット環境、親の職業、年収等を記述しています。


ちなみに最初にモデルとしたのは、著者の教え子(創業期に現場を理解するために半年間塾講師バイトを行なっていた)の高校生のK君です。以降、atama+ユーザーのファクトが集まってきてからは私たちのプロダクトを提供するユーザーの解像度も上がってきたため、徐々にペルソナをupdateしてきています。


ちなみに、ペルソナの名前はメンバーの名前の漢字から一文字ずつ取って命名しました(例えば、藤井真一の「真」は共同創業者の中下「真」から)。



「藤井真一君は熱狂するか?」

次第に社内の議論にも頻繁に登場するようになりました。日々、atama+を活用している現場からは色々な声が上がってきます。「〜の機能が欲しい」「〜に困っている」これらを全部解決したい、しかし私たちのリソースは限られる、ゆくゆくは全部の解決を目指すものの、まずは藤井真一君の熱狂につながるものを作ることを優先しました。スタートアップは局地戦なのです。


こうして極めてシンプルながらも、藤井真一君の真のニーズを追求し、藤井真一君が本当に欲しがる機能だけを作った初期のatama+が生まれ、「最初の100人が熱狂する」ものとなりました。その後生徒数が増えていく中で、社内に掲げるポスターを「最初の1000人が熱狂するプロダクトを作る」に張り替えました。


そして、中学生向けプロダクトをリリースするにあたり、中学生ペルソナの藤井純二君が誕生。中学2年生、藤井真一君の弟です。「えー、この前やったばっかなのにもうテストあんのかー!」と言っているような男の子です。



Valueとつなげて考える

すぐに1000人も超えることとなりましたが、atama plusでは生徒の熱狂というものをずっと大事にしてきています。“勉強”と“熱狂”は遠い概念と思われがちですが、本来、学びは楽しいものと考えており、わからなかったことがわかるようになった時の楽しさを“熱狂”と呼んでいます。勉強をワクワクするもの、自分からやりたいものに変えることを追求するべく、atama plusのValuesの最上位には「Wow students. 生徒が熱狂する学びを。」が掲げられています。


ちなみに、「Wow students. 生徒が熱狂する学びを。」が全ての意思決定時の根幹にあるというのを明確にするために、atama plusの組織図の一番上には生徒がいます。atama plusで何かをやろうと思ったら、誰であれ「〜によって真一君の熱狂を作れる」「〜によって純二君の熱狂を作れる」が説明できないとリソースは投下されません。


スタートアップは様々なバックグランドの人が集まり、様々なチームで一つのMission実現に向かって一丸となって前に進みます。人によって見えている世界は異なるので、全員がサービスを提供するユーザー像を明確にすることが大切だと考えています。


よく「ユーザーファースト」という言葉が使われますが、論じる人の所属や立場、知っている情報の差によって、ユーザー象の形がグニャグニャ変わってしまうと何のためのファーストかよくわからないものになってしまいます。結果として、誰のニーズも満たすことのできない、“それなりの”機能を沢山搭載した、誰にとっても使いにくいプロダクトが市場に生み出されていきます。


atama plusでは“ユーザー”という言葉がほとんど使われません。現在では、真一君、純二君以外にも晴美さん(藤井家の母)、友子さん(大学生講師)、川村さん(塾の教室長)、福原さん(塾の本部管理者)と多様なペルソナが存在しますが、メンバー全員が各ペルソナを深く理解しており(新入社員は入社時にペルソナ研修を受けます)、社内の会話は「友子さんのためにどうしたらよいか?」「川村さんのために何を明らかにすればよいか?」といった感じでペルソナをベースに行われています。


今後も、全員で常にペルソナを意識し続けたいという想いから、この度ペルソナの実写化、3Dフィギア化まで取り組みました。私たちのイメージにあうモデルの選定(素人っぽさが出せるモデルなんてなかなかいない!)から衣装選定までとても大変でした。


実際の撮影風景(撮影協力:CCCフォトライフラボ)


そんなにコストをかけてまで、なぜatama plusはペルソナに投資するのか?社内中にペルソナがいることで、全員が常に「Wow students. 生徒が熱狂する学びを。」を意識し続けていきたいからです。


atama plusはこれからも生徒が熱狂するプロダクトを作り続けていきます。


We will wow students.


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