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モノづくりに魅了された16年。AIカフェロボット開発に挑む21歳の起業家・中尾渓人の原点と未来図

著者: 株式会社New Innovations

あらゆる業界を無人化する。

New Innovations(ニューイノベーションズ)は、このビジョンの実現にむけ、AIを活用したロボット開発をしています。第一歩として、需要予測AIを搭載した無人カフェロボット「root C(ルートシー)」を開発。本格導入に向けて動き出しています。

この開発を牽引するのが、代表取締役CEOの中尾渓人です。幼少期にモノづくりの面白さに魅了され、小学生でロボット開発の道へ。中学時代には、自律型ロボットの国際的な研究競技大会「RoboCupJunior(ロボカップジュニア)」の日本代表に選出されます。


なぜ中尾は、モノづくりに心を惹かれたのか? その原点とロボットを通して実現したい未来を紐解きます。


【プロフィール】

株式会社New Innovations 代表取締役CEO 中尾渓人

1999年、和歌山県生まれ。14歳で『RoboCup Junior』世界大会にて入賞。15歳から開始したシステム開発事業で取引先が300を超えたことをきっかけに、高校在学中の2018年に株式会社New Innovationsを設立。「あらゆる業界を無人化する」をビジョンに様々な領域でDXを推進。AIカフェロボット「root C(ルートシー)」の他、OMO(オンラインとオフラインの融合)領域のコンサルティング・技術実証・開発をワンストップで支援している。

始まりは純粋な興味から。気がつけば、いつもモノづくりをしていた

──幼少期から、モノづくりが好きだったそうですね。何かきっかけがあったのでしょうか?


中尾:明確な原体験があったわけではなく、気づいたら夢中になっていました。僕は和歌山県の出身。家の周りには工場が多かったので、廃材や資材を譲っていただいて、色々な物を作っていたんです。そのうち「作ったモノに動きをつけてみたい」と思うようになって、電子工作を始めました。はんだ付けをして、光らせたり動かしたりしていましたね。



──印象に残っている作品はありますか?


中尾:小学校3年生のころに作った電動で動く台車です。近所に歳の近い子が20人ぐらいいたので、「みんなで遊べるようなものが欲しい」と思い、作ってみました。木の板と車輪を集めて釘やノコギリを使って土台を組み上げた後、モーターとバッテリーをつけて電動で動くようにしました。実際に動いた時には、「すごい!」と歓声が上がりましたね。嬉しかったです。


──大きなモノも作っていたんですね。


中尾:大きさは関係なく、「作ってみたい」と思ったモノは、なんでも作っていました。そのうち作るだけではなく家電の分解もするようにもなったんです。


──分解ですか?


中尾:「あの機械はどうやって動いているんだろう?」と、モノの中身が気になるようになったんです(笑)。炊飯器や掃除機やポットなど、小型の白物家電は一通り分解しました。分解して、自分の目で中身を見て、再び組み上げるという作業を通して、モノの構造を理解していきました。今では、大抵のモノがどんな仕組みで動いているのか、大体予想がつきますね(笑)。


小学生の頃の中尾。モノづくりや家電の分解が好きだった。

RoboCupJuniorに出会い、作ったモノの「活用」に目が向く

──分解や電気工作が好きな子どもだったんですね。そこから、なぜロボットに?


中尾:小学校4年生の時に目にした、「RoboCupJunior」のチラシがきっかけでした。「RoboCupJunior」は、19歳以下を対象にした自律型ロボットの国際的な研究競技大会です。サッカー・ダンス・レスキューの3つのジャンルに分かれ、自作のロボットを競わせて勝敗を決めます。


モノづくりは好きだったのですが、ロボットを使った競技には、そこまで強い関心はありませんでした。けれど、母が「せっかくだし挑戦してみたら?」と背中を押してくれたんです。


──中尾さんがモノづくりに没頭しているのを見ていたからでしょうね。


中尾:そうかもしれません。実際にやってみたら、すぐに夢中になりました。開発そのものはもちろんですが、作ったロボットを活用して、試合に勝つための戦略を考えるのが面白くて。これまではロボットを作る過程を楽しんでいたのですが、「その先」があったのだと感動しましたね。


──新たな楽しさを見つけられたんですね。3つのジャンルのうち、どの競技に参加したんですか?


中尾:最初の2年はレスキューに参加したのですが、小学校6年生からはさらなる競技性を求めてサッカーに転向。高性能のロボットを作るのはもちろん、どこに配置するか、どの機能を使って試合に挑むのか、試行錯誤の連続でした。


中尾が出場した「RoboCupJunior」のサッカーリーグは、各チーム2名で2台のロボットを使い、相手ゴールにボールを入れて競う。


──試合で勝つために、どのような練習を重ねたのでしょうか?


中尾:前の年に自分が作ったロボットと対戦をさせて、改良を重ねました。サッカーは、相手のロボットの流れを読むのが難しい。どんな状況になっても、直線的に相手のゴールにボールを入れられるアルゴリズムを組むことが欠かせません。ベストなアルゴリズムを常に模索していきました。


最初は地区予選で敗退してしまったのですが、中学1年生で全国大会へ出場。中学2年生と3年生のころには、世界大会への切符を手にしました。


──世界大会への出場が決まった時は、どう思いましたか?


中尾:目の前の試合に夢中で、実感が湧かなかったんです。様々なメディアから「今のお気持ちを聞かせてください」と言われたのですが、答えに困ってしまって(笑)。3日ほど経って、ようやく喜びが込み上げてきました。

世界の舞台が、自分の中の「価値基準」を広げてくれた

──世界大会はいかがでしたか?


中尾:日本人は発想しないようなロボットがたくさんありました。もっとも印象的だったのは、試合中にまったく動かず、キック力だけが並外れていたロボットです。


──サッカーで使われるロボットなのに、動かないんですか?


中尾:はい。サッカーの競技用ロボットは、刻々と変わる状況に対応するために、機動性や俊敏性に優れていなければいけません。僕たちはその前提のもと開発を進めていたのですが、彼らは「キック力を高めて、ボールをゴールに入れ続ければ勝てる」と考えたみたいで……。こんな発想もあるのか、面白いなと(笑)。


2014年の世界大会にて。世界の舞台に触れた経験は、中尾の価値観に大きな影響を与えた。


──確かに、ボールをゴールに入れれば得点が入るので、必ずしも俊敏である必要はありませんよね。


中尾:そのロボットを見たときは驚いたのですが、「前提を疑う」「自分の常識にとらわれない」といった意味では、今も非常に役立っていますね。


僕が起業に挑戦できたのも、この時の学びがあったからです。そもそも、「RoboCupJunior」で開発していたのは、高さ22cm×直径22cmのロボット。今開発している『root C』は、その10倍以上の大きさです。


「小さなロボットしか開発したことがなく、資金もない僕が本当に社会で使われるようなロボットを開発できるのだろうか」といった不安はもちろんありました。けれど、「普通は考えないような選択肢をあえて取ってみよう」と思えたのは、世界大会での経験があったからです。


自分が作ったモノを社会に届け、検証と改善を繰り返す

──今は、AIを搭載したカフェロボット『root C』を開発されています。どんな点に面白みを感じますか?


中尾:ゼロからイチを生み出せる点と、検証を重ねながらロボットを磨きこんでいける点です。僕たちは、資金もリソースも限られているスタートアップなので、常に「今のフェーズでもっとも優先させるべきこと」を判断しながら開発にあたっています。


『root C』は、ユーザーがアプリを使ってコーヒーを注文すると、指定した時間に合わせてコーヒーを淹れるロボット。例えば、コーヒーを提供するスピードを優先させると、パフォーマンスの安定性が低下してしまう場合があります。その時に「ユーザーの満足度を上げるにはどの機能を優先させるべきなのか」を社内でディスカッションし、時には実証実験で確かめていきます。新しいアイデアを検証して磨き込んでいく作業が多く、とてもワクワクするんです。


──これまでも実証実験は行ってきたのですか?


中尾:2019年には大阪の「なんばスカイオ」で、2020年には東京の「新東京ビル」で実証実験を行いました。特に1回目の実証実験では、多くの反省点が見つかりました。


この時は、機械に直接タッチパネルをつけて注文するという自動販売機のような仕組みにしていたんです。もともと、アプリから注文ができる仕組みを構想してはいたのですが、時間もなく資金もない状態。まずは本体の開発を優先させました。


ところが、いざ1杯300円で提供してみたところ、「味は美味しかったけれど値段が高い」というフィードバックが来てしまって。次の実証実験では、最低でもアプリを開発して、事前注文ができる仕組みを整えようと決めました。結果、同じ値段でも「コスパがいい」と感じる人が増えたんです。


──アプリひとつで、反応が大きく変わったのですね。


中尾:そうですね。アプリがあることで叶う、「事前に注文をして、シームレスにコーヒーを受け取れる体験」をユーザーは求めているのだと気づきました。今はこのモデルに磨きをかけて、本格導入を進めている段階です。


ロボットを通して、あらゆる業界を無人化する

──今後は、どのようなロードマップを描いているのでしょうか。


中尾:『root C』の磨き込みは続けつつも、最終的には他のロボットの開発も進めていきたいです。僕はAIカフェロボットを作りたいのではなく、この技術を横展開させて、飲食や医療、物流など様々な現場で発生する作業をロボットが担う世界を作りたい。


僕たちが開発したロボットによって仕事を奪われてしまうと危惧する人もいるかもしれません。けれど、インターネットが誕生して新たな仕事が生まれたように、ロボットの普及によって新しい価値が生まれる可能性もあるんです。僕は、そのきっかけを生み出していきたい。


──新たな価値の創造につながっているのですね。子どもの頃から今までを振り返ってみて、中尾さんが作った「モノ」の影響範囲が広がっているのを感じます。


中尾:そうかもしれません。「自分の興味のあるモノを作り続けている」という点では、子どものころからずっと変わっていないんです。ただ、その「モノ」をいかに活用するか。見据える先がどんどん広がっている感覚はあります。


僕たちの生み出すロボットによって、どんな影響がもたらされるのか。まだまだ未知数だからこそ、最高にワクワクしますね。


──ありがとうございました!


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Twitter :https://twitter.com/KeitoNakao

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【会社概要】

あらゆる業界を無人化する。

会社名 :株式会社New Innovations

代表取締役:中尾 渓人

資本金 :1億7,300万円(準備金含む)

設立 :2018年1月

事業内容 :AIカフェロボット「root C(ルートシー)」の提供、OMO事業(コンサルティング、ハードウェア製造、ソフトウェア構築)

本店 :東京都江東区福住2-5-4 IXINAL門前仲町4F

URL :https://newinov.com/




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