「お腹の子は、無脳児でした。」~葛藤と感動に包まれた5日間の記録~

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次話: 「お腹の子は、無脳児でした。」最終話 ~妊娠498日の約束~


加藤さんが来た。

今日の流れの説明を受ける。


さっそく加藤さんに、

「やっぱり赤ちゃんに会いたいです。」

と言ってみた。


「そりゃ会いたいよね。だってお母さんだもん!」

と快く言ってくれた。


加藤さんは、

「私たちは仕事で見慣れてるけど、

普通の人は初めて見るでしょ。

だから、まずはお父さんが会って、

お母さんに会わせるかの判断は任せます。」

とのこと。


「会う。」


はんちゃんに伝えた。



夫の7月11日

「妖精に会った。」9:00



午前9時、陣痛室へ。

「懐かしいな」と思う。


5年前、そうたろうを出産する時には、

拷問部屋かと思った場所だ。


狭い部屋に閉じ込められて、

何時間も妻の「断末魔の叫び」を聞き続けた場所。


夕食が出てきた時には

「冗談じゃない」とまで思ったものだ。


あれから5年。

あの時ほど身もだえることもないけど、

違う意味で「拷問部屋」というのは変わらない。


もうすぐ赤ちゃんに会う。


改めてそう思った時に、

もう一度、練習をした。


実を言えば、はなちゃんの言う

「赤ちゃんに会うのが怖い」というのは、

わからなくもなかった。


でも、誤解されたくないのは、

お化けや怪物をみるような怖さではない。


赤ちゃんに会った瞬間、

ほんの一瞬、ほんの一瞬でも

「気持ち悪い」と思うかもしれない

「自分が怖い」のだ。


頭の中に、宇宙人のような、

カエルのようなわが子の画を描いて、

また心の中で覚悟を決めた。


大丈夫だ。

どんな姿の子だって、受け入れられる。



入室から4時間。「本番」のお呼びがかかった。



「分娩室に移動します。」



バンドのライブ前に、

控室からステージへ向かう時の気持ちに似ている。


「臨戦態勢」

「あとはやるだけ」


「ふう」

と大きく息を吐いて、

胸を張って、分娩室に入る。


5年前は「落ち着かない客人」だった自分も、

ずいぶんと逞しく

その時を待った。



いきむはなちゃん。


がんばれ。


あと少しだ。


あと少しで終わるんだ。



これで楽になれるんだ。



夫の7月11日

「妖精に会った。」13:09



「11cm、65g。」


13時09分。「彼」は産まれた。


「まずはお父さん、会ってください。」

とカーテンで仕切られた隣の部屋へと案内された。


赤ちゃんは、ステンレスのトレイの上に、

ガーゼで覆われていた。


助産師さんが、ゆっくりとめくった。


正直、おどろいた。



覚悟を決めて頭の中に描いていた、

あの宇宙人も、

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