「お腹の子は、無脳児でした。」~葛藤と感動に包まれた5日間の記録~

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次話: 「お腹の子は、無脳児でした。」最終話 ~妊娠498日の約束~

「うん。いるよ。」


すると、消極的な性格のそうたろうが、

空に向かって目一杯、大きな声で叫んだ。





「赤ちゃーーーーーん ! !



すぐ戻ってきてよーーーー ! !」




その純粋さに、

私はもう、たまらず号泣した。


気づいたら、部屋に戻ってきたそうたろうを、

「ありがとうね。」と抱きしめていた。


そうたろうは、

「はな、なんで泣いてるの?」

と不思議そうに聞いてきた。


赤ちゃんを楽しみにしていた

そうたろうを思うと、

ごめんね。

という思いでいっぱいだった。


そして、家族の想いを伝えてくれてありがとう。

もう、そうたろうもちゃんと、お兄ちゃんだったんだね。

それが、本当に嬉しかった。


加藤さんのアドバイスをもらっていてよかった。

自分もそのファンタジーに少し救われた部分があった。


本当に、本当に忘れものを取りに行っただけで、

またいつか戻ってきてくれるかなと、

素直に思えた。


夜、はんちゃんとたくさん話した。

今思うと恥ずかしいくらい、

ネガティブな考えしかなくて。

それを全部吐き出した。


はんちゃんはいつも、

「俺はそうは思わない。」

「そんな事ないと思うよ。」

と、私の考えを変えてくれる。

それがすごく救われる。


加藤さんは会わないことを肯定してくれたけど、

ほんとに会わなくていいのかな?

という思いは消えず。


ネットですごく検索した。


中期中絶して、赤ちゃんに会わなかったけど、

それでよかったという話を読みたくて。


でも、全然ない。


会ってよかった。

会ったらかわいかった。

そんな話ならいくらでも出てくるのに。


会った時に、少しでも

「怖い」「気持ち悪い」

と思ってしまったら、

親として立ち直れない気がして、

怖い。


まだ生きている子を、

薬で無理やり外に出すのは、

すごく残酷なことじゃないのか?

苦しいのかな?とか考えて、

闇の中へ落ちていく気分になる。


先月の検診の時には、

足を犬かきみたいに

元気に動かしてる姿をエコーで見て、

かわいくてかわいくて笑った。


どんな思いで私は出産に挑めばいいのか?

何度も考えても答えが全然なくて。


全ての想いをはんちゃんに話した。


「事実を受け入れて、前に進むしかない。

ごめんね、ごめんねじゃ本人も浮かばれないし、

赤ちゃんも、ごめんなさいって思っちゃうよ。

本人が聞きたいのは、ごめんねより、

ありがとうじゃないの?

俺は会ったらありがとうって言いたいし、

よく頑張ったな、またな。

って言ってあげたい。」


と言われて、心に何かグサッと刺さって泣いた。

何をグズグズ考えてたんだろうと情けなくなった。


家族になろうと来てくれて、ありがとう。

頑張って生きてくれてありがとう。

それだけでいいんだ。

と少し気持ちが軽くなった。



夫の7月9日

妻を支える夫から「一人の男」に


3日目。今日は会社に出社。

今週は最初で最後の通常出勤になる。


しかし、会社に向かう車に乗り込んだとたん、

ガクッとシフトチェンジをしたような錯覚が起きた。


まさにシフトが替わったのだろう。

久しぶりに一人になって、

妻を支える夫から

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