【第五話】『限界を探しに…』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
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「強くなれ!」
「絶対に諦めんな!」
修造の言葉が胸に突き刺さる。
胸を突き動かされるというのは、こういうことを言うのだろう。
心臓が急に前に飛び出るような、
背中から胸を撃ち抜かれたような、
そんな感覚がした。
「強くなりたい…」
「弱い自分に勝たなきゃダメだ…」
そう思った。
しかし僕は、いつも最良の選択をして来たつもりだが、
たった一つだけ気になることがある。
それは、何かを辞めた後、
縛られていたものから解放され、気持ちが楽になった時に思う、
「もう少し出来たかもな。」
という感覚だ。
辞めたことへの達成感はあるのだが、
完全燃焼したという感覚は無かった。
僕は、次の選択のためにいつも余力を残していたのだ。
全力を出し尽くして、ダメだった時のこと考え、自分を守っていたのだ。
「限界は自分が決めている。」
本当はもっと出来るはずなのに、傷付くのが嫌で、いつも自分を守っていた。
テニスの子どもたちも、走っても追いつけないボールは取りに行かなかった。
自分で「無理だ」と決め付けて、動かなかった。
でも、あの子たちが強くなったのは、どんなに辛くても、
「絶対に打ち返してやる!」
と思った時だった。
体と心の限界に達した時だった。
強くなるためには、自分の思い込みで固めた殻を破らないといけない。
自分を守っていた殻を、ぶち壊さなきゃいけない。
その殻をぶち壊す力は、限界に達した時じゃないと出てこない。
「限界に挑戦しよう。」
自分の殻を破るために。
「限界を見に行こう。」
自分が、どこまでやれるのか。
自分には、どんな力があるのか。
今の自分は、本当は何を望んでいるのか。
「確かめにいこう。」
そう決めた。
勝負はキツくなってから…
限界に達した時、
極限の状態になった時、
死に直面した時、
「生きたい」
と思うのか、
それとも、
「やっと死ねる」
と思うのか。
「逃げたい」
と思うのか、
「絶対に諦めない」
と思うのか、
自分の本当の気持ちを…
自分の本当の強さを…
自分の手で、自分の足で、自分の身体で確かめに行こう。
そう決めた。
弱い自分に勝つために。
強くなるために。
前へ進むために。
つづく…
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