【第九話】『旅の洗礼』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜

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全身ビッチョビチョのまま店内に入った。


一応、入る前に水滴は払ったつもり。



店員さん達は、


「とんでもない奴が来た…。」


みたいな表情だった。


えぇ、そうですとも。


台風の日に傘もささずに住宅地で迷子になったとんでもない奴ですとも。



「石和温泉までどうやったら行けますか?」



店員さんの思っていることは確信に変わった。



「えぇ!?石和温泉!?」


「こっから結構あるよ?」



ガビーン…。



だった。



僕の脳内地図では、あと2キロくらいだと思っていた。

しかし、現実は遥か遠くだった…。



「じゃぁ、この辺で泊まれるところないですか?」



住宅地にあるコンビニで、こんなことを聞く奴は恐らく一人もいないだろう。



しかし、ここに一人いた。



店員さんは少し考えたあと、もう一人の店員さんを呼んだ。



「ルートインなら行けるんじゃない?」



「石和温泉行くよりは近いよ!」



僕は、石和温泉まで行って、この冷え切った身体を温めたかったが、

この際そんなことは行っていられない。


さすがにもう身体が限界だ。



「ルートインってどうやって行けばいいですか?」



すると、



「この前の道を真っ直ぐ。」

「ずーっと真っ直ぐ行くと、ドリームがあるから、その先だよ!」



「ありがとうございます!」



何も買わなかったが、しっかりとお礼を言ってコンビニを出た。



これで僕は休むことが出来る。

やっと今日の寝床確保だ。


しかも、ちょうど目の前の道を真っ直ぐだという。


このコンビニで道を聞かなかったら、僕は彷徨い続けていただろう。



ラッキー過ぎるぜ僕。

やっぱり持ってるぜ僕。



少し元気が出た。


そしてまた歩き出す。



ドリーム、ドリーム、ドリーム…。



ドリーム?ドリーム?ドリーム?



ドリームって何だー???



僕は、店員さんがおばちゃんだったこともあり、

スーパーか何かの名前だと思っていた。



しかし、いくら進んでもドリームというスーパーは無い。


もしかしたら、閉店時間を過ぎて電気が付いてない店なのかもしれない。


そもそもスーパーじゃないのかもしれない。



僕は必死にドリームを探した。



一つ一つ看板に気を付けながら、ドリームを探した。



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