【第九話】『旅の洗礼』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
前に進むのに効率が悪すぎる。
この時、18時を回っていた。
予定では遅くても19時には到着していたかったのだが、
100%不可能だ。
どこかで道を確認しなくては…。
雨が激しくなって来たため、屋根のある休めるところを探した。
しかし、ここはバイパス。
周囲にそんなところは無い。
しばらく歩くと、閉店したお店らしき建物があった。
屋根ではないが、入り口なら少し雨はしのげそうだった。
腰を下ろし、スマホを取り出す。
googlemapを開くが、手が濡れていて画面が反応しない。
手を拭いても、頭から流れてくる雨粒が画面に落ち、
全然操作が出来ない。
雨の日のスマホは全然スマートじゃない。
それでも何とか現在地を確認することが出来、
石和温泉までの道のりを探した。
すると、ちょうどたまたま休憩した場所の交差点を曲がった道を行けば
辿り着くことが出来ると分かった。
超ラッキーだった。
やはり僕は持っている。
そして、休憩しているほんの10分くらいの間に、
母親から電話があった。
「台風大丈夫なの??」
「危ないから早く避難して!!」
母親はめちゃくちゃ心配していた。
そりゃそうだ。
日本海まで行くって言って、台風の夜にも連絡が来ないんだから。
きっと、どっかで死んでいるかも…
と思っていたに違いない。
僕はそんなことより、道も電話も、ナイスなタイミングだな!
と感動していた。
国道20号線を離れ、住宅地に入る。
歩いている最中は、スマホは見れない。
googlemapの記憶を頼りに前へ進む。
見馴れた街ならどうってことないが、
知らない街の住宅地は、大きい道と違い、何の目印も無く、どの道のどの辺を歩いているのかさえも分からない。
地図では、道なりに真っ直ぐだったが、
三角路など、中途半端な曲がり角はどちらに進んでいいのか全く分からない。
何となく、「こっちだろう」と思う方向に進んでいった。
雨はどんどん強くなる。
排水溝から水が溢れ、靴はグチョグチョ。
雨が顔に当たり、前を見て歩くことも出来ない。
いつまで経っても着かない。
疲労はピークに達していた。
一刻も早く休みたい。
しかし、完全に迷子になった…。
僕は、住宅地で迷子になった。
そんな時、交差点の向かいにセブンイレブンを発見。
こうなりゃ現地人に聞くしかない。
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