【第九話】『旅の洗礼』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
休んでる時間なんてない。
身体の痛みと、容赦なく打ち付ける雨に何度も心が折れそうになった。
でも、絶対に諦めなかった。
辛い思いをするために旅をしているのだから。
大きな道に出た。
勝沼大橋。
勝沼バイパスに入る手前のとても大きく、キレイに舗装された道だった。
今まで、狭い歩道を歩いてきたため、久しぶりの広い道に開放感があった。
相変わらず、誰一人として歩いている人はいない。
雨が降っているため、車は窓を閉め切っている。
僕は歌った。
全力で歌った。
疲労と寒さで、身体はもう限界に近かった。
声を出さないと、心が折れそうだった。
歩いても歩いてもゴールに辿り着かない状況に、
今にも泣き出しそうだった。
耳につけたイヤホンから、RADWIMPSの有心論が流れた。
「今日も生きて、今日も生きて、そして今のままでいてと…」
僕は生きている。
そして、今日も生きて終わる。
僕は、生きてゴールに行くんだ。
そんな当たり前のことに気付かされた気がした。
「今日も生き抜いてやる!」
やることはただ一つ。
歩くだけだ。
前へ進むだけだ。
勝沼バイパスに向かう大きな一本道をひたすら歩く。
「??????」
バイパス?
今までずっと歩いてきた国道20号線が、そのままバイパスになる。
※バイパスとは…自動車両専用の道路である。
人歩けないじゃーん…。
道は繋がってるんじゃないのかよ…。
何だよこの地図…。
思い出して欲しい。
僕が買ったのは、バイクのツーリング用の地図だ。
地図のせいには出来ない。
しかし、この地図を勧めたあの店員の責任だ。
いや、すべては僕の無知が引き起こした問題だ。
僕の責任だ…。
何とか、通れる道は無いかと、行けそうな道を歩いたが、
事件が起きるんじゃないかってくらい真っ暗で、
真っ直ぐな道ではなく、細かい曲がり角や、
下っては上っての繰り返しだった。
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