【第15話】『ハッピーエンドを探して』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
それでも十分だった。
正直、最初はちょっと高いと思ったよ。
もっと安い宿があるんじゃないかと思ったよ。
それでも、工事のおじさんとの出逢いを大切にしようと、
七倉荘にした。
そして、じいさんに出逢った。
それだけで十分だった。
この出逢いで、もう十分過ぎるほど元は取れていた。
台風の影響が出ると思っていた今日、
ルートインのお姉さんの優しさに出逢い、
親切に道を教えてくれたおじいさん、
快く休ませてくれた信屋商店のおじさん、
大声で声をかけてくれた工事のおじさん、
そして、七倉荘のじいさんに出逢った。
てるてる坊主の町のおかげで、
大自然を感じることが出来た。
自然の音を聴きたいと思わなければ、
イヤホンをしたままで、
工事のおじさんの声には気が付かなかったかもしれない。
そもそも、この道を選ばなければ、出逢うことは絶対になかった。
小さな小さな偶然が、まるで奇跡のような出逢いを運んできてくれた。
僕の小さな小さな行動が、素晴らしい結果を生み出した。
「僕の選択は間違っていない。」
そう思えてきた。
むしろ、
「僕の選択は、必ずいい結果をもたらす。」
と思えた。
道を間違えても、必ず何かの発見があるし、
宿が満室でも、違う宿で素敵な出逢いがあるし、
どんなに疲れていても、手を差し伸べてくれる人はいるし、
いつもと違うことをしたら、初めての感動があるし、
何をしても、奇跡のような素晴らしい出来事が待っていた。
うつ病にならなかったら、こんな経験は出来ていない。
「死にたい」と思わなかったら、この場所にはいない。
こうやって過去を辿ってみると、すべてが繋がっていたことに気が付いた。
一つの物語のように。
旅に出る前までは、
僕の人生の最後のページは最悪だった。
でも、次のページをめくったら、素晴らしい場面が待っていた。
最悪のページは、今のページに辿り着くまでの途中に過ぎなかった。
僕はずっと、最悪のページが最後のページだと思っていた。
いや、最後のページにしようとしていた。
でも、本当はまだまだ続きがあった。
信じられないほどの素晴らしい物語が先に待っているというのに、
僕はページをめくるのを勝手にやめようとしていただけだった。
次のページはどんなことが待っているのか分からない。
それでも、めくり続ける。
今のページがどんなに辛い場面だとしても、
決して自分の物語をそこで終わりにはしない。
物語は、いつだって最後が一番幸せなんだ。
辛いことがあったからこそ、最後は幸せになれるんだ。
僕が死に場所を探しに旅に出たのだって、
最後に美しい景色を見たかったから。
最後に、せめて幸せだと思える場所で終わりにしたかったからだ。
どんなに「死にたい」と思っていても、
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