【第15話】『ハッピーエンドを探して』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
「何とか荘か。あとで調べてみよう!」
そう思いつつ、僕はまた歩き出した。
少し歩くと、また後ろの方で大きな声が聞こえた。
「ななくら荘だー!思い出した!ななくら荘だー!!」
またおじさんが話し掛けてくれた。
「あと2、3kmだから、頑張れよー!!」
「ありがとうございます!!!」
僕は、持っていたストックを上に突き上げ、精一杯の感謝を体全身で表現した。
「おじさん!ありがとう!!!」
元気が出た!!!
あんなに大きな声を出したのは久しぶりだった。
一瞬にして頭がスッとなった。
そして何より、今日のゴールが決まった。
「ななくら荘」
しかもあと2、3㎞。
僕は、少し歩いたところにあった公園の芝生に腰を下ろし、
スマホで「ななくら荘」を検索した。
「あっ!あった!」
「七倉荘!」
正直、思っていたほど安くはなかった。
素泊まり4700円。
今見ると安いのだが、
これまでの道中で、
見る見るうちにお金が無くなっていった僕にとっては、
泊まるだけで約5000円は高く感じた。
お金は恐ろしい。
少なくなると、心まで貧しくなる。
しかし、せっかくおじさんが僕のために思い出してくれたんだ。
もしも、いつかどこかで出逢ったら、
「教えてくれた七倉荘行きましたよー!」
と言いたい。
そのためにも、七倉荘に泊まることが、
親切なおじさんへの恩返しになるんじゃないかと思った。
「よし!七倉荘へ行こう!」
辺りはだんだんと薄暗くなってきた。
確実に日が短くなってきている。
あと3㎞。
歩こう。
そして僕はまた歩き出した。
あと3㎞に余裕をぶっこいた僕は、
田んぼの畦道を歩くことにした。
まだまだ自然を感じていたかった。
しかし、これが大きな間違いだった…。
田んぼの畦道は一見、碁盤目状になっているように見える。
しかし、実際はそんなに規則正しくなっていない。
曲がれるだろうと思うところで曲がり角は無いし、
行けるだろうと思うところが行けなかったりする。
目線の高さで見ても、先がどうなっているのか分からない。
どうやったら行きたいところに行けるのか分からない。
もはや迷路なのだ…。
そして僕はこの有様…。
田んぼで迷子…。
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