【第15話】『ハッピーエンドを探して』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
歩いていたら工事のおじさんが、七倉荘を教えてくれた話をした。
「一期一会」
僕がこの旅で大切にしていること。
どんなにお世話になっても、深入りはしない。
これからも続く関係になってしまったら、
今伝えるべきことも後回しになってしまう気がするから。
たとえもう会えないとしても、その時の出逢いを大切に。
じいさんは、まさにそんなような人だった。
毎日違う客が訪れる。
毎日新しい出逢いがある。
そして、出逢いがまた新しい出逢いを連れてくる。
今の僕のように。
出逢いを大切にしていれば、きっとまた良い出逢いが訪れる。
見ず知らずの旅人に勧めたくなるような旅館。
それはきっと、じいさんが日々出逢いを大切にしてきたからだ。
ナイスなキャラのじいさん。
このじいさんと話してると、
50年も続いている理由が少し分かった気がした。
僕もいつか旅館やペンションをやりたいな。
「お世話になります!」
鍵を受け取り、2階の部屋へ続く階段を上がった。
壁には、北アルプスや黒部ダム、
四季折々の草花の美しい写真が飾られてあった。
ここ、大町市は、黒部ダムへの入り口らしい。
じいさんも黒部ダムをオススメしていた。
一番オススメしていたのは、
女将が始めたという北アルプスが望める屋上ガーデンだったけど。笑
黒部ダムには行けない。
でも、明日の朝、屋上ガーデンには行ってみよう。
七倉荘は、お風呂、トイレ、洗面台、給湯室も共同で、
廊下に灰皿も置いてあったり、昔ながらの旅館だった。
だからといって古びている訳ではなく、
歴史を感じることの出来るどこか懐かしい雰囲気だった。
僕は部屋に入った。
少し小さめのベッドがあり、テーブルにテレビ。
友達の部屋に来たかのように落ち着く部屋。
「ん?」
「んん????」
ピアノがある…。
これ客室だよね?
小さめのベッドにピアノ…
「これ絶対子ども部屋だったでしょ!!!」
じいさん!僕にユニークな青年なんて言ってる場合じゃないよ!
この部屋の方がよっぽどユニークだよ!!!
この部屋を客室として使っているあなたの方がユニークだよ!!!!
本当に子ども部屋だったかは分からないが、そう思った。
僕は、思わず一人で笑ってしまった。
僕の物語…
部屋で少しゆっくりして、お風呂に向かった。
お世辞でも、大きいとは言えないお風呂。
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