【第1話】〜生きようと決めて1年間闘い続けたら、過去がすべて今に繋がっていた話〜
会社に僕の居場所なんて、もうとっくに無いということだろう。
それでも、ちゃんとケジメはつけたい。
僕は、お世話になった上司や先輩、後輩に電話を掛け、退職することを伝えた。
みんな口を揃えて、
「残念だ。」
と言ってくれた。
「一日だけでも戻って来て!」
と言ってくれる人もいた。
でも僕は、もう戻れない。
というか、戻らない。
温かい言葉をかけてくれたのは心から嬉しかったが、
人格を変えてしまう程の出来事を経験した僕は、
同じ場所に戻ってはいけない気がしていた。
どうしても、会社に戻ってまた同じ仕事をしている自分が想像出来なかったし、
上手く言葉に出来ないが、僕には何かもっと違った大切なことをやるべきだと思った。
仕事をしていた時、担当していたお客さんにこんなことを言われたことがある。
「あなたは、もっと大きなことをやる人間よ。」
「初めて会った時に、あなたは何かが違うと思ったの。」
「人のために生きなさい。」
「そのために今はたくさん勉強するの。」
「この仕事に留まっていたらダメよ。」
こんなことを言ってくれた。
その方は、僕が担当していた400名以上のお客さんの中で、
恐らく一番実績を残している方で、業界でもトップクラスの人だった。
忙しい方だったので、直接お会いしたのは数回程しかなかったが、
驚く程、僕を絶賛してくれた。
もの凄く嬉しかった。
めちゃくちゃ稼いでるのに、本人は、
「前は自分のためにたくさんお金を稼いでたけど、私が使うお金はそんなに必要じゃないの。」
「今は、誰かのためにお金を稼いでる感じかな。」
と僕には信じられない金額の募金をしたりしていた。
僕が出逢ってきた人とは、明らかに違った考えを持っている人だった。
この方は、旦那さんが末期のガンだということも話してくれた。
それなのにも関わらず、
「そういう運命なんだから、ちゃんと受け止めないとね!」
と笑顔で言っていたのが今でも印象に残っている。
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