【第2話】〜生きようと決めて1年間闘い続けたら、過去がすべて今に繋がっていた話〜

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著者: 坂内 秀洋

その好意を裏切るようなことは絶対にしたくなかった。


バイトは、心理学の学校が終わる4月までは続けると約束していたからなおさら。


でも、そんなことを言っていられる状態ではなかった。


いや、違うかもしれない。


このままいてもミスばかりで、迷惑を掛け続ける。


今思えば、「僕は居ない方がいいんだ。」と勝手に辞めることを正当化していたのだと思う。


僕は、川ちゃんに思いを打ち明けた。


「もう働けないっぽい…。」


「せっかく働かせてくれたのに、本当ごめん…。」


「ごめん…。」


これしか言えなかった。


「ごめん…。」


しか感情は出て来なかった。


そして川ちゃんは、こう言った。


「そっか、無理か。」


「残念だな。」


「バイトは全然大丈夫だから気にすんな!」


「またひーくんと働けて楽しかったよ!」


そう言ってくれた。


それでも僕は、


「ごめん…。」


しか言えなかった。


最後に川ちゃんはこう言った。


「俺は、ひーくんが元気なら何でもいい!!」


ハッとした。


僕は大きな勘違いをしていた。


川ちゃんは、バイト先の社員じゃない!


僕と川ちゃんは、社員とバイトの関係じゃない!


そんなことの前に、僕を理解してくれる大切な友達なんだ!


僕は、こんな当たり前なことを忘れてしまっていたようだった。


「ありがとう…」


この時、確か僕は泣いた。


関内の喫茶店で。


「俺が泣かしてるみたいだから泣くなよ!」


って言われたけど、僕は泣いた。


今度は


「ごめん…」


と一緒に、


「ありがとう」


の気持ちで。




僕は本当に友達に恵まれていると思う。


うつ病になって疎遠になった人は数え切れない程いるけど、

それでも一緒にいてくれた友達は、


「ひーくんはうつ病じゃないよ!」


「全然大丈夫だよ!」


と言ってくれた。


僕は内心、


「いや僕はうつ病だよ…」


と思っていたが、


そう言われると、僕はうつ病じゃない気もする。


仕事は出来ないけど、家族がいて、友達がいて…

いつも一緒にいる人たちは、昔も今も変わらない。


みんな社会人になって会う機会もめっきり減ってしまったけど、

会えば学生時代の頃のように、くだらないことを話し出す。


昔から何も変わっていなかった。



川ちゃんの助けも借り、僕はバイトを辞めた。


続けられたのは、たった2ヶ月間だった。


初めての社会復帰の挑戦は、失敗に終わった。


バイトを辞めたのを機に、実家から少し離れたところに住む一番上の姉の家で母と姉、犬と一緒に暮らすことになった。


僕は犬アレルギーだし、一緒に暮らしたくなかった。


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