フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第25話

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パテオに来ればいつでも会えたのに


もういないなんて

信じられなかった。




なぜ突然いなくなったのか…




なぜ、カナなのか…







「あなたが泣くのはおかしいんじゃない?」




私は、涙で濡れた顔を覆いながら鏡越しに


戸口にもたれかかってこちらを見ている玲子を見た。




「本来アキちゃんの失踪を嘆くのは私だと思うけど?」


私は顔を伏せて涙を拭った。

何言ってんの?

この女、売上以外のことはどうでもいい強欲冷血漢のくせに。

私は声を振り絞った。


「アキさんがいなくなったくらいで

   なんともないでしょ。あなたは」



玲子は、腕を組んだままアハハと宙をを仰いで笑った。


「入店してもうすぐ一年経っても

   あなたって、根っから素直な子なのよね」


ガラス越しの玲子は皮肉っぽい苦笑いをして顔を歪めた。


「でも、それじゃ3位止まりよ。永久に」




私は充血した目で玲子をにらんだ。




「男の1人や2人、利用するならともかく

   こんなことで勝負の場で泣きじゃくってるんじゃ

   お話にならないわね」



「ほっといてください。あなたには関係ないこと

  なんだから」


早く出て行ってほしかった。ほっといてほしかった。


「教えてあげる。何を言われたか知らないけど

  佐々木は正真正銘の女たらしよ。

  この店のほとんどの子が一度は口説かれてる。

  ちょっと可愛い子と、もれなく手を出される。

  私だって元々は佐々木に誘われたのよ。ボスの女にだろうが

  平気で口説く、それが佐々木よ。そして一度寝たらほとんどの子は

  ほっとかれる。私は立場上無碍にはできなかったのね」


玲子の声は、私を追い詰めるだけ追い詰めた。

私は、佐々木から愛を囁かれたことすらない。

ただ窮地を救ってもらい、優しくされたに過ぎない。

私の一方的な恋だったのかもしれないのだ。

誰にも恋したことがなかった私の勝手な思い違いだ。


私は何を期待していたのだろう。

1番、愚か者で滑稽なのは、私なんじゃないか?



「もう帰りなさい」


玲子が静かに言った。


「その精神状態じゃ無理よ。

   指名のお客さんには私から謝っとくから」


玲子はそう言い捨てると姿を消した。




私は着替える気力もなく


着替え途中のキャミソールのような格好で店を後にした。


自分が惨めだった。

とにかく何も考えたくなくて

一刻も早く店を出たかったのに

家で1人になるのが辛かった。


途中、溝にヒールが引っかかって派手に転んだ。

折れたヒールを探していると

すぐ後ろにいた見ず知らずの男が声をかけてきた。


「おいおい、ねーちゃん、大丈夫?どこの店?」


男は私の赤いヒールをつまんで見せてきた。



ひと目で私は夜の女と分かったようだ。

それはそうだ。

派手な化粧に、露出度の高い派手な服。


夜の匂いプンプンだ。


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