フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第25話
私は、どうもと言って男からヒールをむしり取った。
「ねえねえ、奢ってあげるからちょっと付き合ってよ〜〜」
先ほどの転倒で折れたヒールのせいで左右のバランスがチグハグになり
私はヨロヨロと歩を進める。
その隣で男はしつこく誘ってくる。
うるさいな…ハエみたいな男
いつものように追い払う元気がない。
それにこのまま帰って1人でジメジメ泣いたり
悶々とするよりは、この男と一緒にいた方がマシかもしれない。
私は男をチラと横目で見た。
年の頃
20代半ば
説明するまでもない、どこにでもいる
チャラそうなナンパ男だ。
「ちょっとならいいけど」
私が言うと男は
「マジで!?超ラッキーじゃん!!」
そう言うと馴れ馴れしく私の肩を抱いて
「どこ行こっかあ?!」
と言った。
私は、その腕をどけながら言った。
「どこでもいいよ。お酒 飲めるとこなら」
数分後
私は安っぽく不潔な居酒屋のカウンターで
チャラ男と並んで飲んでいた。
「いや、マジで今夜はついてるよ。
君みたいなマブいコと飲めるなんてさ。
俺さ、東京出てきて、ずっと客引きやってんだけど」
マブいって…死語じゃん。
この男、若づくりしてて意外とバブル世代なのかも。
ボンヤリとした頭でそう考えていた。
男の話は薄っぺらかった。
話なんて5分も聞けば
その人間の大きさが分かるものだ。
私は五杯目のビールを飲み干すと
チャラ男は嬉しそうに私を見た。
「おねーさん、飲むねえ…なになに、嫌ことでもあった?」
「別にい」
私は、すでに呂律が回らなくなっていた。
「いいねえ、その飲みっぷりに惚れたわ、オレ。
もっとガンガン飲んじゃおうぜ」
何が惚れただよ
下心しかないくせに。
注文した新しいビールを飲んでいると隣で何やらゴソゴソやっていた男が
「あ、やべ〜」と言った。
「おねーさん、俺さ、カネどっかに落としてきたみてーだわ」
マジでやべーよ。スられたかな?
男は下手な芝居を続けている。
「いいよ。私払うから」
これ以上ヘタクソな小芝居に付き合いたくない。
「え!?いいの?!いや、マジでアンタいい女だね!」
チャラ男は早速ビールを注文した。
ホント最低な男。
でもこんな奴でも、少しは気が紛れた。
私は1時間足らずの間でワインとビールを計7杯も
胃に流し込んだ。
味なんてしなかった。
でも、気分は良かったはずだった。
吐き気をもよおしたのは、その直後だ。
「う、気持ち悪…」
ガタっと立ち上がったのはいいけど、
地に足がついているのかすら分からなくなっていた。
「ちょっと、ちょっとお、おねーさん。だいぶフラついてるけど大丈夫?」
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