フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 27話

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すると母は、少し安心したようにコーヒーに口をつけた。



「亡くなったおじさんね、昔、隣に住んでたのよ。

   あなたが7歳くらいの時、東京へ引越しされたんだけど

   うち、お父さんと別れてから生活安定するまで  大変だったでしょ

    その頃お母さんが仕事見つかるまで

    お隣の一家が よくあなたの面倒見てくれたのよ」



「へえ」




「特に亡くなったおじさんは、あなたのことよく可愛がってくれた。

   桃ちゃんはベッピンさんになるぞとか、本当に頭のいい子だとかね」



覚えてる?と母が言うので


私は首を振った。




「あんた小さかったもんね」



母は微かに笑って言った。




そのおじさん夫婦は若い頃、赤ん坊だった娘を亡くしたそうだ。




だから、幼い私を可愛いと思ってくれたんだろうか…




私は幼少期に確かに、優しい笑顔の男の人の記憶が微かにあった。



大きなゴツゴツした手に慣れていない私は、ちょっと怯えながらも


だんだん、その人が好きになって、その人にまとわりついたりしていた。


夢なのか現実なのか分からないが…


ずっと出て行った父親の記憶だと思っていたけど




もしかすると、そのおじさんだったのかもしれない…









その日は母が行きたいと言うので、東京の新名所を訪れ


夜、母の好きな和食の店に入った。



久しぶりに地元の話をひと通り聞き想い出に浸った。




駅ビルができたとか、近所の犬が死んだとか

幼なじみが赤ん坊を産んだ話にはビックリした。



母は、珍しくビールを飲んでいた。




「みんな、桃子ちゃんはすごいって、いい大学に進んで

   これから楽しみだって言ってるよ」


母はたったグラス半分で真っ赤な顔をしている。



笑うと顔中のシワがクシャッとなって



実年齢よりずいぶん上に見える。



歳を取ったなあと思う。


人の何倍も苦労を背負った顔は

それでも誇らしげで嬉しそうだった。




急に胸が痛んだ。



私はこの人を裏切っている…




母が、身を粉にして働き守ってくれた私の人生を




母の夢を。




私は今…壊そうとしていたのだ。


私の意思で…




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