癌で胃袋を失い生きる希望を失いかけた男が、一夜にして元気を取り戻した物語

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「小さくなっていますね。」



(え! 小さくなっている・・・)


(つまり、まだあるってことか・・・)




(まけたか・・・)


(腹切るしかないな・・・)




「先生、癌は消えることないって言ってましたよね」


思わず減らず口をたたいてしまった。




「良性の部分が無くなったのでしょう・・・」



でも、


でも、


自分の中で何かがこみ上げてきた。


癌は消えてはいなかった。


しかし、小さくなっていた。


それは、それでよかったじゃないか。





私は、


心の中で小さなガッツポーズを作っていた。


何度も、何度も作っていた。








2011年12月13日


手術室に入った。


麻酔科の先生が待っていた。


アラフォーちょっと前だろうか、


美しさの中に知性と優しさがチラチラと見え隠れしている素敵な女医さんだった。


話し方に安心感があった。




「次に目が覚めた時には、手術は終わっています。」


「麻酔を打つとすぐに効いてきますから、何も心配いらないですよ。」





麻酔を打たれた。


これからお腹にメスが入ることを考えると、注射の痛みは感じなかった。


そんなこと、考えている間もなく、意識がなくなっていった。








薄暗い部屋だった。


ベッドの上で、数本のチューブにつながれていた。


事前に用意していた自分のパジャマを着ていた。


痛みは無かった。





ただ、なんとなく、長いトンネルを抜けたような気がしていた・・・


生まれ変わったようなさわやかさがあった。


しかし、それは短いトンネルの出口に過ぎなかった。


本当の長いトンネルがこれから始まろうとしていた・・・









2012年5月


手術後、半年が過ぎていた。




次第に暖かくなる日々、


新緑が街全体を明るくしていくさまとは裏腹に、

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