癌で胃袋を失い生きる希望を失いかけた男が、一夜にして元気を取り戻した物語
次第に疲れが身体を支配するようになってきた。
仕事が終わり、駅へと歩いた。
弥生台駅から、湘南台へと向かう。
湘南台駅に着いた。
ホームから建物4階分ほどの階段がある。
エレベーターは付いているが、
手術前は、トレーニングを兼ねて、ダッシュをしていた。
手術後は、もちろんエレベーターだ。
小田急江ノ島線に乗り換える。
改札からホームへも長い上り階段だ。
帰りに便利な方の階段には、エレベーターもない。
一歩一歩踏みしめるように登る。
半分を過ぎたあたりから、足が動かなくなる。
心臓がバクバク鳴っている。
ようやくホームまでたどり着き、電車を待つ。
電車が来た。
扉が開く。
即座に空席を探す。
幸い、夜の10時頃、
湘南台から藤沢方面への電車は、余裕がある。
「ふ~・・・」息をついて、座る。
10分で、藤沢駅に着く。
太腿に疲れを感じながら、やっと立ち上がる。
改札を出る。
北口へ出る地下通路へ向かう。
地下通路の出口のわずか10段ほどの階段。
最後の5段前で、力が尽きている。
やっと登りきっても、
太腿が張っていて、もはや歩くのが辛い。
(だんだん疲れやすくなっているじゃないか・・・)
(いつになったら、良くなっていくのかな・・・)
2012年8月
猛暑だった。
毎日が猛暑日。
記録を更新していた。
もはや、身体のダルさは限界を超えていた。
階段を登るのがつらい、歩くのがつらい、
さらに、動くのがつらい状態へと移っていた。
家族の前では、できるだけ平気な顔をしていた。
「だるい」という言葉は、口にしなかった。
しかし、心の中では、
絶望と諦めと悔しさが複雑に絡まり合っていた。
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