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日本発のグローバル企業を支えるガバナンス ~武田薬品の従業員が大切にしていること~

著者: 武田薬品工業株式会社


今や多くの企業が取り組みを発表するようになったESG(環境・社会・ガバナンス)。非財務情報に焦点を当てたESG投資という言葉も一般的になり、投資家はもちろん一般消費者やビジネスパーソンからも、企業のESGに対する考え方や行動が注目されるようになりました。


ESGの構成要素、ガバナンスの意味

ESGのGを表すガバナンスは、「企業統治」ともいわれ、ESGの重要な構成要素と認識されつつあります。その一方、環境(E)や社会分野(S)に比べると、具体的に何を指しているか分かりづらい、という声もあるようです。上場企業の指針となっている東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードでは、「コーポレートガバナンスとは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する」とされています。


日本に本社を置き、世界80の国と地域で事業を展開するタケダは、研究開発型のグローバル・バイオ医薬品企業としての存在意義(パーパス)を「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」としています。そして、このパーパスを実現するために必要な要素として、最高水準のガバナンス体制の構築を掲げています。


この方針のもと、経営や実務の現場では、具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか。タケダのガバナンス体制を支える経営企画部のメンバー2名に話を聞きます。


グローバル企業に求められるガバナンスとは


武田薬品工業株式会社 経営企画部 BSCオフィス&コーポレートガバナンスマネジメント 石野 誠悟


――石野さん、グローバルで事業を展開するタケダに求められるガバナンス体制とはどのようなものでしょうか?


石野:大きく3つのポイントが挙げられると思います。

一つ目は、実効性の高いガバナンス体制を構築すること、二つ目は、経営陣による迅速な意思決定を可能にすること、三つ目は、グローバルガバナンスを支える取り組みを推進することです。また、タケダは東京証券取引所(今年4月にプライム市場へ移行)に加えて、2018年からはニューヨーク証券取引所に上場しており、海外投資家の当社株式の保有比率も高くなってきていることから、グローバルスタンダードのわかりやすく、透明性の高いガバナンスの仕組みづくりにも注力しています。


タケダでは取締役会と経営会議体、すなわち監督と執行を適切に機能させることで効率的な意思決定を実現しています。機関設計としては監査等委員会設置会社を選択し、取締役の過半を独立社外取締役が務め、監督機能を高めています。また、取締役会から社内取締役への権限委譲を行うことにより、取締役会は経営戦略や特に重要度の高い課題の議論により多くの時間を充てることのできる体制となっています。一方、執行側としては、取締役会からの委譲を受けた社内取締役を中心としたタケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)が、3つの経営会議体を運営して意思決定を行っています。


3つの経営会議体:

  • ビジネス&サステナビリティ・コミッティー(BSC)

一般的な経営案件や事業開発案件およびサステナビリティに関連する案件の意思決定

  • ポートフォリオ・レビュー・コミッティー(PRC)

研究開発やパイプライン・製品に関連する案件に関する意思決定

  • リスク・エシックス&コンプライアンス・コミッティー(RECC)

リスク管理、企業倫理、コンプライアンス案件に関する意思決定


日本発のグローバル企業としての成長のために不可欠だった規定の見直し


―― このガバナンス体制を支えるために石野さんが関わったプロジェクトには、どのようなものがありますか?


石野:タケダがグローバル化を進めるにつれて必要になった日本国内の社内規則(規定)の最適化プロジェクトが挙げられます。グローバル化を進める中で、タケダの各国で共通して適用される規定としてグローバルポリシーが整備されてきています。その一方で、日本中心の従来規定もまた、変化をする必要が出てきました。本社機能を有する日本のタケダに適した規定体系とは何か? という視点も持ちながら、多様な人材が働くタケダにふさわしい規定体系へと改革する必要があり、2019年にプロジェクトが立ち上がりました。

―― 最もハードルが高く、難しかった規定の簡素化は何でしたか?

石野:このプロジェクトは日本に存在する規定を対象としていましたので、本社機能を有する日本で保有していたコーポレートガバナンスに関連する規定も簡素化の対象として検討を進めました。タケダには、意思決定システムとオペレーション上の重要ルールで、グローバルで広く浸透している「タケダグループの経営管理方針(T-MAP:Takeda Group’s Management Policy)」が存在していたのですが、一方で経営会議体ごとの運営ルールも別の規定文書として存在していました。


この重複を解消するための簡素化とはいえ、重要な経営会議体の運営ルールですので、その必要性についてはかなり議論しました。結果として、法定の意思決定会議体である取締役会の運営ルールは規定として維持し、その他の経営会議体の運営ルールはT-MAPに一本化するといった思いきった変革を行いました。また、コーポレートガバナンスに関連する規定を日本だけではなくグローバルで共有できる文書とするべく、規定体系も大きく見直しました。最終的には192あった規定を38に整理しました。

―― 困難を乗り越えてプロジェクトを成功に導いた秘訣を教えてください


石野:経営企画部と日本法務がタッグを組み、チームとして一丸となって成功に向けて進めていこうという信念を持っていたこと、また、さまざまな方々の協力を得ながら誠実にプロジェクトを進めたことです。コーポレートガバナンスに関連する規定の簡素化や規定体系の変更を達成するためには取締役会の承認を得る必要があります。対象の規定文書を廃止するにあたっての良い点・悪い点の整理や他社状況も照らし合わせた上でのロジック立て、規定体系を変更する際の課題の解決、さらには体系変更についてどのようにグローバルのタケダ全体へ周知・浸透させていくかなど、さまざまな意見や考えをぶつけ合いながら、チームで多くの苦労を重ねたことを今でも思い出します。これらの変革は、タケダのコーポレートガバナンスに関する規定の透明性を向上させるとともに、グローバルで実効的かつ迅速な意思決定を進めるための基盤として必須の選択だったと思っています。



―― ガバナンスの透明性を向上させる実務とはどのようなものがありますか?


石野:ガバナンスに関するルールの透明性を向上させることは重要な取り組みだと考えています。先の規定の最適化プロジェクトの取り組みでは、ガバナンスに関するルールをタケダのグローバルでの適用とする変化を起こし、社内におけるルールの透明性を向上させました。一方、これらのルールを社外に向けて開示することは、タケダがどのようなプロセスで意思決定しているのかを示すことに繋がり、株主・投資家の関心に応え得るものと考えます。そのため、プロジェクトでは、次の課題として、定款、取締役会規程、監査等委員会規程、指名委員会規程、報酬委員会規程といったコーポレートガバナンスに関するルールの開示に取り組みました。その実現には、取締役会が開示を承認する必要がありますので、開示に当たってのルールの更なる見直しや開示すべき背景など、チームで検討を重ねて提案資料をまとめ、取締役会に付議する、という実務が発生しました。無事に取締役会で承認を得た後に、2021年11月に会社ホームページ上で開示しましたが、この開示は日本において規制で求められる以上の対応であり、タケダのコーポレートガバナンスの透明性をさらに向上させることに繋がったと考えています。


意思決定マネジメントに情熱を注ぐ


武田薬品工業株式会社 経営企画部 BSCオフィス&コーポレートガバナンスマネジメント 農澤 翔平


―― 農澤さんが関わっている「意思決定マネジメント」について教えてください


農澤:私は3つの経営会議体のうち、経営や事業開発案件およびサステナビリティに関連する案件を主に所管するビジネス&サステナビリティ・コミッティー(BSC)の事務局メンバーとして意思決定をサポートしています。具体的には、社内の各部門から提案としてBSCに持ち込まれる案件を、タケダグループの決裁権限が規定されている「タケダグループの経営管理方針(T-MAP)」に照らし合わせて、BSCで議論・承認すべきものかなどを確認し、会議アジェンダの調整を行います。BSCの限られた会議時間の中で、有意義な議論に基づいた意思決定へと導くため、各案件の影響範囲や会議での論点も想定しながら、追加検討や関係部門との事前調整を求めるなど、提案内容の質を高めて、意思決定を資料作成の面からもサポートしています。


他にもBSCと並列する他の会議体との共有も欠かせません。研究開発やパイプラインについて意思決定を行うポートフォリオ・レビュー・コミッティー(PRC)事務局と、リスクや企業倫理、コンプライアンスに関して意思決定を行うリスク・エシックス&コンプライアンス・コミッティー(RECC)事務局と一緒に、運営上での良かった事例を共有したり、関連するトピックの承認状況を確認し合あったりするなど、重要な経営会議体がスムーズに進むように協力し合っています。


――日常業務ではどのようなチャレンジがありますか。

農澤:BSCに提案される案件を迅速に実施へと進めてもらえるよう、スムーズに承認まで持っていきたいと思う一方、確実に十分な検討がなされることも大切で、このバランスが難しいです。BSCには多くの案件が掲題されますが、どの案件も関与したメンバーたちが情熱をもって取り組んできたものです。したがってBSCに辿り着くまでに提案部門がどれだけのステップを踏み、時間をかけているかを想像しつつ、丁寧にヒアリングをして事前準備をサポートすることで想いに向き合い、プロジェクトに伴走する意識で取り組んでいます。



――コーポレートガバナンスにおいて、タケダの強みはどのあたりにあるのでしょう。

農澤:ガバナンスの仕組みが整っているのはもちろん、それが個人・チーム単位でも機能していることが強みだと感じています。

そして、経営陣の議論の中でもよく耳にします。そのたびに私は、この意思決定のプロセスはスローガンとして掲げられているだけのものではなく、従業員に浸透しているのだなと感じています。タケダの従業員が皆で同じ目線で動いている。私がすぐに周りと連携できたのも、価値観や行動指針を従業員全員が共有していて、自分もそれを理解し体現しようとしているからだと思います。


製薬業界は大きな変化の途中にあると言われます。目まぐるしく変わる環境に適応していくために、タケダの意思決定の進め方もより迅速に、高いレベルを目指す必要があります。お話しを聞いた経営企画部のメンバー2名は、今後もガバナンス体制の充実と透明性の確保、意思決定プロセスに関わる課題の改善に力を注ぎ、経営陣による迅速な意思決定を引き続きサポートしていきたいと語ります。


タケダでは、経営企画部の取り組みの詳細や、経営陣と専門家の対談などをまとめて、ガバナンス特設サイトとして公開中です。「世界に尽くせ、タケダ。」の「パーパス経営とガバナンス」でぜひご覧ください。


規定の整備を通して見えた私の信念

https://www.240.takeda.com/takeda_interview/04/


意思決定マネジメントに情熱を注ぐ

https://www.240.takeda.com/takeda_interview/03/





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