迫る物流危機へ、システムと対話の力で共同輸送に挑む。自社の基幹事業を活用し生まれた、「TranOpt」の開発秘話。
今、物流が深刻な危機に直面しています。とりわけトラックドライバーの不足は深刻で、2024年度には14%(14万人相当)、2030年には34%(34万人相当)が不足するという予測も。物流が寸断されてしまうリスクは、多くの企業の事業や私たちの日常生活に直接影響する問題です。
危機感を共有する物流業界では、同じトラックを複数の企業でシェアして運行する「共同輸送」への関心が高まっています。日本のトラックの積載率は40%未満とみられるという政府調査のデータが示すように、改善の余地が大きくあるからです。
日本パレットレンタル(JPR)は、共同輸送マッチングシステム“TranOpt(トランオプト)”を開発し、「システム」と「対話」の力でお客さまとともに共同輸送を実現に挑んでいます。本ストーリーではTranOptを担当する輸送マッチング推進グループの渡邉安彦が、共同輸送実現に向けた活動をお伝えします。
JPR輸送マッチング推進グループの渡邉(前列中央)お客さまとともに
企業と企業をつなぐパレットレンタル事業が、「TranOpt」開発のきっかけに。
共同輸送への関心が高まる一方で、物流業界は壁にぶつかっています。共同輸送を始めようとするとき、まず直面するのは「パートナー探しの難しさ」です。一般にパートナー探しの第一歩は、今お付き合いのある運送会社のツテを辿る、あるいはWebで検索するといった方法をとることが多いものの、具体的なルートが合致するパートナーを見つけることは容易ではありません。
そのような背景の中、JPRはTranOptを開発する前から、”共同輸送のパートナーを紹介してほしい”という要望を多くいただいていました。幅広い地域や業種の企業をつなぐJPRならば、条件の一致する企業を紹介できる可能性が高いからです。実際に、TranOpt開発以前にも、企業と企業をお引き合わせして、共同輸送のきっかけを創る仕事をしていました。
私たちJPRは、パレットという道具を企業から企業へとリレーして使えるように供給から回収までの循環のしくみを運営することを基幹事業としています。企業と企業をつなぐというレンタルパレット事業の特性が共同輸送に取り組むきっかけになりました。
企業と企業をつなぐレンタルパレット
ルートマッチングに求められた莫大な計算量。産学の連携で、コアエンジンを開発
共同輸送のパートナー探しをシステムで解決するためには、膨大なデータから素早く最適解を導き出す技術が必要になります。実務の世界では、例えば東京と大阪の2点間を往復するようなシンプルなルートだけでなく、東京、名古屋、大阪といった3点間を結ぶルートをマッチングすることで、共同輸送実現の可能性が高まります。
ただ、仮に1万件のルートから三角形を描くマッチングを求めるためには、およそ1億回もの計算が必要。そこで、JPRは国立大学法人群馬大学と共同研究を行い、独自の共同輸送マッチング技術を開発しました。この技術がTranOptのコアエンジンとなっています。
物流業界で求められる、様々な条件をクリアするために。実際に役に立つ開発を実現。
次の課題は、物流ならではの具体的な条件です。お客さまお話を伺うと、発地・着地は一致しているのに、物流量の季節波動、運行しているトラックの車種、製品の性質(例えば香りの強い製品との混載ができない製品)などで共同輸送が成立しないケースが多くあることがわかりました。
せっかくマッチング候補が提示されても具体的条件が合わないケースが続くと、運行を開始するまでのスピードが上がりませんし、ご担当者のモチベーションも下がってしまいます。
そこで、私たちは数理的なアプローチとともに、物流現場の実際のニーズを汲んだ“気の利いた”機能を実装することを目指しました。開発段階でのヒアリングはもちろん、プロトタイプ版のTranOptにパイロットユーザーを募り、実際の声を聞き取りながら、実務に即した条件設定ができるよう追求しました。その成果もあって実際にいくつかのお客さまでは、TranOptが提案した第一候補の企業と共同輸送を開始しています。
TranOptの画面イメージ
再認識した対話の重要性。マッチングして終わりではない。
TranOptを開発し、普及を進めながら再認識したことは、リアルな対話の重要性です。例えば、TranOptでパートナー候補企業に出会ったとします。その後、当事者で具体的な確認や調整に入っていくのですが、実はこの段階に大きなハードルがありました。
共同輸送を始めるためには、積み込みから納品の運用手順や、どちらの会社のトラックを使うか、さらには運賃の決定に至るまで多くの調整事項が発生します。TranOptをご採用いただいたお客さまからお話を伺うと、ここで話が中断してしまうことが多いことがわかりました。コミュニケーションの問題は、共同輸送の隠れたハードルとなっていたのです。
JPRはレンタルパレットの提案を進めるにあたって、荷主、届け先、物流事業者の間での対話のつなぎ役を日常的に行っています。TranOptチームでも同じような動きをしていましたが、これがお客さまの高いご評価につながっていたのです。
コミュニティで共同輸送を促進する
この取り組みを発展させたのは、TranOptを使って共同輸送を検討しているお客さま企業同士が対話する場である「コミュニティ」です。一例として「家具家電共同輸送コミュニティ」があります。家具や家電、住設機器関連は、荷物の大きさや形状がさまざまで、一般的な消費財よりも共同輸送へのハードルは高いのですが、直接対話をすることでお互いの企業の課題や要望を交換でき、すでに実際の運行が実現しています。
コミュニティに対するお客さまの評価として、その場で細かい調整を行えるためスピード感をもって検討を進められることや、会話の中から偶然生まれるアイデアに価値を感じているといった声を頂戴しています。
私たちはこれからも、システムと対話の力で、お客さまとともに共同輸送の拡大に努めていきます。
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