韓国コンテンツのプロが語る、いま見るべき3本 ~TSUTAYAの韓流ドラマMDが語る、韓流の今とこれから~
約10年以上も韓国コンテンツに携わってきた、TSUTAYAの韓流ドラマのマーチャンダイザー(以下、MD)を務める落合麻葉。仕事としてはもちろんのこと、韓国エンタメを愛して止まずプライベートでもたびたび韓国を訪れるほどです。そんな落合から、韓国ドラマの潮流から、いま見るべき韓国作品を紹介させていただきます。
■株式会社蔦屋書店 商品企画本部 TSUTAYAアジアTVドラマMD 落合麻葉
TSUTAYAのMDとして、韓流、華流ドラマのマーケティングを担当。パク・ボゴム主演『雲が描いた月明り』や、ソン・ジュンギ、ソン・ヘギョ主演『太陽の末裔 Love Under The Sun』、『トキメキ☆成均館スキャンダル』をはじめ、長年韓流ブームの盛り上げに寄与してきた。現在も、新聞・雑誌、ラジオなどメディアへの出演や、講演会や韓流イベントでのMCなど、最新情報をレコメンドしている。
韓国コンテンツの黎明期は2000年頃
入社時から韓国コンテンツを担当していたわけではなく、入社当時は人事で新卒採用を担当していました。その後、2000年頃に映像作品の調達担当に異動し、初めて韓国のコンテンツに触れるきっかけとなったのが映画『シュリ』という作品でした。その頃はまだ、韓国コンテンツは一般的にほとんど浸透していない時期だったのですが、本当に大ヒットしました。振り返ると、ちょうど韓流ブームの“夜明け前”の時期だったかなと。ちょうど、日韓共催のワールドカップが開催される前です。
同じ頃、韓国映画『ラブストーリー』『JSA』『猟奇的な彼女』『チング』など数々の韓国映画がヒットしました。このヒットがあって、韓国コンテンツブームが起こり、日本において韓国コンテンツブーム “芽吹き”の時期であり、日本人が初めて触れた大きな作品は映画だろうと思われます。韓国映画におけるエンタテインメントのクオリティの高さが一気に認知された時期です。その中でも、日本人が度肝を抜かれた韓国映画に最初に触れた作品というのであれば間違いなく『シュリ』になると思います。
2000年に第一次ブームを迎え、その後、ブームが2004年頃に一気に再燃します。皆さんご存知のドラマ『冬のソナタ』がBSで放送され、翌年NHKで放送されたことで、一気にこのブームを牽引しました。『冬のソナタ』以外にも、『ブラザーフッド』『王の男』『私の頭の中の消しゴム』『グエムル -漢江の怪物-』『殺人の追憶』などの今も語り継がれる韓国の映画の名作がこの時期にはヒットしました。その後、『秋の童話』『夏の香り』等のドラマ作品もヒットして、TSUTAYAには2004年頃に「アジアテレビドラマ」という大ジャンルができ、いよいよ韓国コンテンツが“メジャー”になってきました。これは上記数々の作品のヒットが起因しています。
その後、一度私は調達を離れました。「TSUTAYA DISCAS」の立ち上げや、「ツタヤオンライン」という子会社で社長秘書などを経験しましたが、2009年に調達に戻り韓国ドラマを再度担当することになりました。その後は、調達からMDに2011年に着任し今に至ります。
その時期ヒットしたドラマの代表作としては、『美男<イケメン>ですね』、『花より男子~Boys Over Flowers~』、『イタズラなKiss~Playful Kiss』がありますね。この時は、主演の俳優が来日してドラマイベントが開催されたり、オリジナル・サウンド・トラック(OST)のコンサートが開かれたりと、作品のヒットを後押しするような盛り上げがあったのを記憶しています。2010年にリリースされた『美男<イケメン>ですね』は、当時入れられなかった音源を入れたり、カットされた部分を追加したデラックス版が2011年にリリースされたのですが、こちらも本当に大ヒットしましたし、2時間程度でみられる劇場版も制作し、実際、映画館で期間限定上映したりもしました。すごい時代でした。
また、『トキメキ☆成均館スキャンダル』という作品もこの頃リリースされましたが、これが地上波で放送されたこともあり、プロモーションとして、その局のバラエティ番組に出演させて頂いたこともいい思い出です。当時大ヒットした作品のひとつであり、韓国ブームが起きていたことがうかがえますね。
若年層にも広がっている韓国ブーム
全体の作品の傾向で分析すると、上記の表のような大きな傾向があると思います。2004年頃は出生の秘密を抱えていたり、登場人物が病気にかかったり、記憶喪失になる傾向の作品が多くありました。
韓国では脚本をとにかく重要視していることもあり、ストーリーの設定や、ファンタジー性、ドロドロ等、あまり一般的には起こらないような事象が多く登場したり、とても振り切っている部分が多かったりして、非日常的な部分も多いのですが、脚本が面白いのでついつい見てしまうという方も多いのではないでしょうか。
2010年頃は、“ド・ラブコメ”という設定や、夕方の地上波での放送により10代後半-30代に広がりました。少女時代やKARAなどのK-POPブームの走りもそれに拍車をかけたと思います。その影響で韓国に旅行に行く若者が増え韓国ブームが訪れました。また、アーティストがドラマに進出し、垣根がなくなり始めたのもこの時期からです。もともと、韓国では映画には映画俳優、ドラマにはドラマ俳優が出演するという文化が多く見られましたが、その境がなくなった時期はこの頃だったのではないかと思います。色々なジャンルの作品に自分の好きな俳優・アーティストが出演したり、OSTを歌い始めたりしたので、映画しか観なかった人でもドラマを観るようになったり、ドラマの影響でアーティストを好きになってライブに行くようになるなど、別々だった観る層の広がりを見せるようになりました。
最近の傾向に関しては、SNS、YouTubeの登場が多大に影響を及ぼしているなと感じます。まず1点目はいわゆる“ラブコメ”ジャンルが少なくなりました。日本でも同じ現象ですが、若年層がYouTubeや、SNSに流れるようになったので、それまでテレビを観ていた世代がテレビ離れを起こしているからです。それを受け、観る世代に合わせたサスペンスや医療モノなど重厚感のあるコンテンツが増えてきています。2点目として、SNSやYouTubeの広がりにより、韓国のコンテンツ力の高さが世界に認知されたことが挙げられると思います。韓国は以前から積極的にエンタメコンテンツをSNS上で発信しています。そのおかげで世界中の人が、韓国のアーティストに興味を持ったり、映画・ドラマ等のコンテンツに興味を持ったりしています。その成果は、BTSの成功や、『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞受賞等に結びついていることからもお分かりになると思います。
後は、いわゆる“プチプラ”の火付け役である韓国の安いコスメなどが若年層にYouTubeやSNSを通して爆発的に広がったり、最近では動画配信からそれまで韓国ドラマを見てこなかった方々が見るようになり、芸能人や多くのインフルエンサーがそれを話題にしたり、バラエティ番組で韓国コンテンツが取り扱われたりするのを見ると、徐々に大衆化してきているように感じます。少し前までは本当に考えられなかったことで驚いています。先日、道を歩いた際にすれ違った小学生くらいの子が鼻歌でK-POPを歌っていて本当にびっくりしました。
韓国の作品はコンテンツ力がすごい
私が韓国コンテンツにハマったのは、最初の衝撃が大きかったからだと思います。元々そんなに映画を見るほうでは無かったのですが、映画を観はじめた当初は韓国ではなく『花様年華』などで知られるウォン・カーウァイ監督などに代表される香港作品が好きでした。仕事がきっかけで韓国の作品に出合い、「アジアでこんな映画がつくれるんだ!」という驚きがすごかったんですよね。それまでは香港に旅行に行くことが多かったのですが、あっさりと韓国に乗り換えました(笑)。ハマりはじめてからは、月に数回も韓国に行くほどになりましたね。韓国に行って映画を観たり、ミュージカルを観たり、ライブを観たりしていました。3週連続で韓国へ行ったときには、何か怪しいものを密輸しているのではないかと思われたようで税関の人に止められたこともあります(笑)。
月に200エピソードもの韓国作品を観ます
MDの仕事は全国にあるTSUTAYA店舗などに仕入れる作品の本数を決定し、その後、販促ツールを制作したり、どのように店舗で展開するか等を提案する仕事です。また、それに伴うキャンペーン施策の考案、『アジアマガジン』『アジアブック』などの販促物の制作、『きらきらキャンペーン』という売上施策キャンペーンを実施したり、俳優を招いてのイベントの開催などの仕事があります。つまりは、作品の仕入れ、作品のレンタル数などの数字計画、それらの数字をのばすための施策全般を担当する仕事がMDの仕事です。現在はそのほか、韓流エンタテインメント全般における独占コンテンツの企画なども進めています。
そのような仕事の性質上、かなりの本数の作品を観てきています。韓国ドラマ、映画はもちろん、最近は中国ドラマもとても人気があることもあって、見なければならない本数が多くかなり大変な作業です。字幕がついていないものもありますが、医療物や政治用語等はまだまだ難しいものもあるのですが、普通のものは日本語字幕がなくても理解できるようになりました。
毎日夜中まで作品を観ていても観る時間が足りないくらいたくさんの作品が手元に届きます。なるべく全話分きちんとみて、お客様に少しでも良質なコンテンツを届けられるように時間を惜しまず努力しています。
韓国エンタメコンテンツのプロが選ぶ、いま見るべき3本
そんな多くの韓国コンテンツを見てきた私が「いま見るべき3本」をご紹介させていただきます。
1)『皇后の品格』
2010年に『宮(クン)~Love in Palace~』という作品があり、その大人版と言ってもよいかと思うのがこの『皇后の品格』という作品です。「もし韓国に王室があったら」という設定なんですが・・。ひょんなことから、舞台役者が急に王と結婚することになり、華やかな宮廷に嫁いだものの、“王室”が絡んでくると、家系争いがあったり、裏で工作して殺人があったり、不倫していたり……様々な出来事が入り乱れます。ドロドロな面もあれば、キュンもある絶望に浸ることなく楽しめる作品になっています。
2)『王になった男』
2012年にイ・ビョンホン主演で作られた映画をリメイクしたドラマです。朝鮮時代の華やかな王宮を描いた話です。時代劇ドラマの中でも朝鮮時代は華やかなこともあって、特に人気があります。道化師が主人公で、王と顔がそっくりだということからその道化師を王の替え玉にしてしまうというストーリー。派閥争いが起きぬように、王の具合が悪いことを替え玉によって隠そうとします。映画と異なる設定なのが、ドラマでは王女との禁断の愛が描かれているところです。王女はすり替わっていることを知らず、突然優しくなった王に疑問を感じつつも、どんどん好きになっていきます。そのあたりの恋模様は映画では描かれなかった部分なので、見どころのひとつですね。王役のヨ・ジングは、子役出身ですでに長いキャリアがありますので、韓国ドラマを見たことがある方なら1度は見たことがあると思います。成長して大人になっても演技力にますます磨きがかかり、本当に素晴らしい演技をしていますのでご注目下さい。
シン・ソンロクという、『皇后の品格』の王子役(悪役)が主人公の“ラブコメ”作品です。シン・ソンロクは初めてラブコメに挑戦したのですが、やはり演技が上手な方はどんな役柄を演じても本当に素晴らしいなぁと感じます。悪役の方が見慣れている方も多いと思いますが、そんな彼がラブコメをどんな風に演じているのか、そこがこの作品の見どころですね。
内容としては、ヒロインがある魔法の香水を手に入れます。それをかけると17年前の美しかった自分になれるという設定で、ずっとやりたかったモデルに挑戦します。実はヒロインの娘も一緒にモデルに挑戦するのですが、娘はこの人が母親とは知る由もなく仲良くなり切磋琢磨しながら成長していきます。そんな中で、デザイナーや、売れっ子俳優と出会い三角関係に陥るのですが・・・?香水の秘密がある中、どんなストーリーが展開するのか・・是非ご覧ください。
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