「人生って意外と 捨てたもんじゃないよ。」
そんな生活にも限界が来て
同棲?いや同居していたアパートを出て実家に帰った。
やっとエッチから解放され落ち着いた生活が出来ると思っていた矢先に
大事件が起こった。
妊娠しちゃってた・・・
信じられなかったけど変えようのない事実。
母親に妊娠していると打ち明け、
オレとオレの両親、男と男の両親の6人で話し合いが行われた。
男と男の両親は一斉に土下座し
「中絶して下さい。お金はこちらで払います。お願いします」
って行って来やがった。
この光景を目の当たりにして怒り以外
何の感情も浮かんで来なかったから
話し合いの場から席を外した。
オレのお腹の中には小さい命がある。
これが母性ってやつなのか?
心が男とかこのときはホントどうでもよくて、一人の親としてお腹の命を守りたいって心から思った。
一人で産んで育てて行けるくらいのチカラがあったら産んであげたかった。
でも無理だった・・・
ごめん。
マジごめん。
こんな情けない奴でホントごめん。
謝っても謝りきれない。
③中絶手術
少しだけ気分が落ち着いた頃、近くの産婦人科に行った。
エコーに映し出されてのはまだ数ミリしかないけど確かに一つの命が宿っていた。
中絶したい旨を伝え、数日後に手術の予約をして帰宅した。
帰宅してからずっと病院でもらったエコーの画像を見つめていた。
この命を絶ってしまっていいのか?
いや絶ちたくない。
でもどうにも出来ない・・・
多分この時は自分が男であるとかどうとかの感情なんてどうでもよくて、
確実に親としての感情のみになっていた気がする。
数日後、中絶手術の日がやってきてしまった。
病室に案内され点滴を開始される。
ベットにずっと横になるなんて事はできるはずもなく、
看護師さんの目を盗んでは屋外へタバコを吸いに抜け出した。
あの時何を考えてたんだろう?
今はもう思い出す事すら出来ない。
数時間後、手術室に入った。
全身麻酔をされ次に目が覚めたのは病室のベットの上。
男と男の両親の姿があった。
「帰れ」そう言って3人を追い出した。
奴らはどんな気持ちだったんだろう?
ホッとしたのか?悲しかったのか?嬉しかったのか?
部屋に一人になったら情けないけど涙が止まらなかった。
「オレは殺人者だ」
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